太陽系から約40光年離れた赤色矮星に、地球外生命体存在の可能性を持つハビタブル惑星を発見!というニュースがメディアでもセンセーショナルに発表され大きな話題になりましたが、そもそも系外惑星探査(観測)が始まってから、このような惑星の発見はいくつもされています。
なのに今回、何故大きく報じられることになったのでしょうか?
この惑星系は今までは発見された天体とどう違うのか?そして報道されているように、本当に地球外生命体存在の可能性はあるのか?独自の観点も交えて調べてみました。

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今回の発見は以前から注目されていた恒星だった!

2017年2月。様々なメディアで大きく報じられている新発見の系外惑星ですが、実は、この惑星を持つ恒星はその約1年前から知られていました。
それが、地球からみずがめ座方向の約40光年の距離にある「Trappist-1」(トラピスト1)という恒星で、この恒星は、非常に小さい質量を持つ赤色矮星と呼ばれる恒星に分類されており、太陽の質量のわずか8%ほどしかなく表面温度も約2,600度(太陽の表面温度は約6,000度)と低温で暗い天体でもあります、

「Image Credit:Wikipedia」
上図でもお分かりになるかも知れませんが、私たちの太陽とは比較にならない程小さい赤色矮星Trappist-1は、惑星である木星より少し大きい程度なため、地球からの距離がわずか30光年にも関わらず、観測するには小さく非常に暗いためになかなか調査が進まなかったそうです。

しかし、Trappist-1の発見から1年。詳しい分析を行ったところ、この恒星には3個の地球型惑星が存在している事を確認し今回の大きな話題への序章となったのでした。
研究者たちが当初確認していた赤色矮星Trappist-1を公転する3つの惑星はTrappist-1a,1b,1cと3つで、そのうちの1bと1cの惑星は生命生存可能公転領域・ハビタブルゾーンに位置する惑星ではないか?と注目されていました。
しかし、観測を続けるとTrappist-1b,1cは、恒星の「Trappist-1」に近過ぎるため高温でハビタブルゾーンにある惑星ではないと判明し、その後、さらにTrappist-1cの外側に新たに4つの惑星が存在することを発見。
これが、今回大きな話題となったワケです。
●参考記事:【以前「Trappist-1」について書いた記事】
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「Trappist-1」に見つかった新たな発見!

そしてここからが、メディアでもセンセーショナルに報じられた「Trappist-1」の新たな発見。
なので、多くの方はご存じかと思いますが、赤色矮星「Trappist-1」には他にも地球に似た岩石惑星が複数存在することが判明し、しかもそれは、全部で7つの惑星であるということがわかったのです。

「Image Credit:上図の緑色の領域がハビタブルゾーン(NASA/JPL-Caltech)」
生命生存には適さないと判断されたTrappist-1b,1cですが、その外側を公転するTrappist-1e,1f,1gの惑星はハビタブルゾーンを公転していることが判明し、これらの惑星は水が液体で存在出来る可能性があり、生命が生存出来る環境なのかも知れないということでNASA等の研究機関が今回の発表に至ったという事になります。

「Copyright ©:NASA Jet Propulsion Laboratory All rights reserved.」

「Trappist-1」の惑星群に生命は存在するのか?

この大発見のニュース。一部のメディアでは、まるでそこに地球外生命体がいるかのような報道がされていましたが、流石にそれを決めつけるのは気が早過ぎ、今回の発見でわかったことは、赤色矮星「Trappist-1」には7つも地球型惑星が存在していたという事と、そのうちの3つの惑星がハビタブルゾーン内に存在している事のみなのです。
また、地球型といっても、それらが地球のように大気や水が存在し生命が溢れているというワケではなく、地球サイズの岩石惑星であるというだけのことで、もしかしたら、それらの惑星には大気も無ければ水も存在しない可能性だってあるのです。
つまり、すべての調査はこれからなのです。
これからの調査で、これらの惑星の詳細な情報が得られると思うのですが、そこが本当に生命が存在する星なのか?については、いくつか厳しい見解もあるのも事実です。

恒星に近過ぎて潮汐ロックがかかっている?

「Trappist-1」の質量は太陽の8%程度しかない低温の恒星ですが、7つの惑星は恒星に非常に近い距離で公転しており、私たちの太陽系と比べると以下のような距離間隔になるとの事です。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
この近い距離を公転していることで懸念されるのが潮汐ロック。いわゆる強い重力を持つ星(恒星)の影響を受けて、自転と公転周期が同期してしまうという現象が起きている可能性があるということです。
この現象については月を見れば良くわかり、月が常に地球に同じ面を向けているのは潮汐ロックが起こっているからで、もし、「Trappist-1」を公転する惑星がこのような状態であった場合、恒星側に向いている面は高温に晒され反対側は超低温の世界である可能性があります。

このような状態であれば、いくらハビタブルゾーンに惑星があったとしても、生命生存にはかなり厳しい環境になっているのではないか?とも考えられます。

恒星が若過ぎるため生命が誕生していない?

赤色矮星は、数百億年~数兆年ととてつもない長寿命があると考えられており、Trappist-1も赤色矮星ですが、非常に若い恒星で誕生してまだ5億年程度しか経過していないと推測されています。
この事からTrappist-1に生命がいるかどうかはまだ疑問が多く、その理由は地球に生命が誕生した時期(約38億年前)に置き換えると、5億年ではまだ誕生に至っていない可能性もあると指摘されています。

とは言っても、一概に太陽と「Trappist-1」を比べることは間違いがあるかも知れませんが、このような生命誕生の歴史を辿ると、わずか5億年ではまだ生命が誕生出来る環境が整っていないのでは?とも考えることも出来るのです。

今後の「Trappist-1」の探査はどうなる?

まだ発見されたばかりで、その実態はほとんどわかっていない赤色矮星「Trappist-1」の7つの惑星たち。
それらの惑星に本当に大気や水が存在し、生命が生存出来る環境があるのか?と、非常に注目が集まっているため、今後は集中的に観測が行われるものと思われます。
しかし、地球からわずか40光年の近距離にある惑星系とは言っても、恒星である「Trappist-1」はとても暗い天体で、しかもそこに属する惑星も小さいため詳細を調べることは技術的にも困難を極めるようです。
ですが、2021年末に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡なら、詳しく観測出来るかも知れません。

「Image Credit:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(Wikipediaより)」
ちなみに、今後の詳細な観測によって「Trappist-1」の惑星系に生命が存在出来る環境があったとしても、太陽と「Trappist-1」はまったく性質の異なる恒星のため、未来における”第二の地球”として人類が移住することは環境的にも無理がある可能性があります。
つまり、今後の詳細な観測の焦点になるのは、広い宇宙で地球以外に生命が生息できる環境があるのか?それを調べることが大きな目的になるのではないでしょうか?!
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