2014年暮れ、H-IIAロケットで打ち上げられ無事地球から旅立ったJAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」
途中、軌道修正と加速を行うため地球の引力を利用したスイングバイも無事成功し、小惑星「リュウグウ」に無事到着しミッションを行いました。
そんな「はやぶさ2」に搭載されたのが、初号機「はやぶさ」で世界初の実用化に成功したイオンエンジンです。
今回はこのイオンエンジンについて、その原理や仕組み、そしてどれだけの推進力を生み出すエンジンなのか?気になりましたので少し調べてみました。
※ 追記:小惑星探査機「はやぶさ2」は2020年12月に無事地球に帰還しました。

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イオンエンジンとは?

イオンエンジンは、はやぶさ計画の初号機「はやぶさ」にも搭載されていた電気推進方式を使った宇宙ロケットエンジンです。
原理はキセノンという気体をプラズマ化し、電気的に加速させ噴射し推進力を得るモノ。
このエンジンの実用化に世界で初めて成功したのが日本で、2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」に搭載されたことは有名ですが、その前にもNASAなどが実験的にいくつかの衛星や探査機に搭載されていましたが、日本でメインの推進エンジンとして本格的の運用されたのは「はやぶさ」が初めてでした。
イオンエンジンの特徴は、これまでの化学燃料を使ったエンジンとは異なり10倍ほどの燃費効率が良く、さらに長寿命な事に大きなメリットがあります。
これは、長い時間航行が必要となる惑星探査機などには画期的なエンジンで、今後も広く利用される可能性があります。

「Image Credit:JAXAクラブ

イオンエンジンの推進力とは?

イオンエンジンは小型で低燃費、そして長寿命。まさに夢のエンジンとも言えるのですが、大きな欠点もあります。
それは非常に出力が弱いということ。搭載される探査機の重量にもよりますが「はやぶさ2」の場合は重量が600キロにもなります。
イオンエンジン1基あたり、この600キロの重量の期待を推進させるのに1時間で時速6センチにしかなりません。
つまり、このエンジンは人が息を吹いているような非常に弱い推力しかないとも言えます。
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ただ、宇宙空間では地上のような空気抵抗もありませんので、エンジンを推進し続ければ続けるほど加速し、時間はかかりますが十分な加速が得られるようになります。
このように弱い推力のエンジンのため、現時点では重量の重い有人宇宙船などには利用出来ないモノでもあります。

「Image Credit:Wikipedia」

物語を演出した「はやぶさ」のイオンエンジン

初号機「はやぶさ」には4基のイオンエンジンが搭載されていましたが、帰還途中で4基中3基のエンジンが故障してほぼ航行不能に陥ってしまいました。
原因は、航行中にイオンエンジン以外の姿勢制御エンジンが故障し、代わりにイオンエンジンを酷使したことでこちらにも支障をきたし作動しなくなったという事。
しかし、ある技術者が万が一の事を考え、4つのエンジンを繋ぐ回路(クロス回路)を造っておいたお陰で、残った1基のエンジンから他のエンジンに回路を繋げて推進力を得ることが出来たため、はやぶさは何とか無事に地球に帰還する事が出来たという奇跡的な逸話が残っていて映画化もされました。

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「はやぶさ2」に搭載された改良型イオンエンジン

初号機「はやぶさ」の教訓を活かし、弐号機の「はやぶさ2」には改良された新型のイオンエンジンが搭載されています。
このエンジンはより長時間の運転に耐えられるよう設計されており、「はやぶさ2」で運転されたエンジンの稼働時間は約800時間以上で、これは初号機「はやぶさ」の時よりも2倍も長い時間運転出来ると言います。

「Image Credit:はやぶさ2に搭載された新型イオンエンジン(DLRより)」
「はやぶさ2」のイオンエンジン運転は、目的地である小惑星「リュウグウ」の軌道に乗せ、リュウグウに追いつかせるための加速のために大きく貢献しました。
前回の「はやぶさ」ミッションの時は、小惑星「イトカワ」に向かう途中に4基中2基のイオンエンジンが故障しましたが、「はやぶさ2」では4基全てのエンジンが順調に動いているとの事です。
ですが、加速には3基のイオンエンジンを使っているようですが、この3基のエンジンで約1年半の長期連続運転になったとの事です。
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