全天で光輝く恒星の中で、太陽を除いて肉眼で見える最も明るい天体「シリウス」。
シリウスは最も明るく見える星というだけあって、天文に詳しくない人でも比較的容易に見つける事が出来、シリウスは冬の夜空を見上げれば燦然と輝いています。
そんな目立つ天体シリウスを見て「いったいどんな星なんだろう?」と思った人も少なからずいるのではないでしょうか?
ここでは恒星・シリウスについて、ウィキペディアには載っていない情報も書き加えてお伝えしたいと思います。

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恒星・シリウスの基本情報

恒星・シリウスについてウィキペディアに記載されている内容と重複しますが、少し基本的な情報から解説します。

シリウスという天体は、「おおいぬ座」にある一等星で主に冬を中心に秋から春にかけて観測出来る星で、「オリオン座」のベテルギウス・「こいぬ座」のプロキオンともに冬の大三角を形成しているとても有名な星の一つです。
そんなシリウスの見つけ方はとても簡単で、時間や時期によっても異なりますが、冬の夜空を見上げ北東から南東方向にかけてオリオン座の左下にひと際明るく輝く星が見えます。
それが「おおいぬ座」の一等星・シリウスです。

「Image Credit:Yahoo!JAPAN きっず図鑑」
シリウス明るさは視等級でマイナス1.46等級あり、太陽を除いて全天で最も明るく輝く恒星です。
この星が大きく明るく見える理由は、太陽の約1.68倍の大きさを持つ表面温度が摂氏約1万度のA型主系列星(スペクトル型)である事と、何よりこれだけ大きな恒星が太陽系に非常に近い距離(地球からの距離約8.6光年)の位置にあるからです。

「Image Credit:Wikipedia」
ちなみに、太陽のスペクトル型はG型に分類される主系列星で表面温度は摂氏6,000度ほどの宇宙では一般的な恒星という事のようです。

見えているシリウスは連星の片割れだった!

実はシリウスは「シリウスa」と「シリウスb」の2つの連星を形成しており、私たちが夜空を眺めて見えているのは「シリウスa」の方であり「シリウスb」は肉眼で見ることはできません。

では何故、地球からほぼ同じ距離にある「シリウスb」を肉眼で見る事が出来ないのでしょうか?
それは「シリウスb」が既に恒星としての寿命を終えてしまった伴星の白色矮星であるからです。
白色矮星とは、太陽のようなサイズの恒星(太陽質量の8倍以下)が、一生を終えてしまった後に残る核融合での熱源が無くなった言わば”燃えカス”なった天体の事です。
ただ、熱源の無い”燃えカス”と言っても大きさは地球サイズほどあり、極めて高密度で高温かつ強重力な天体が白色矮星です。

「Image Credit:Wikipedia」
なお、連星を成す「シリウスa」と「シリウスb」の距離は約5億キロ~20億キロ離れており、「シリウスb」は大きな楕円軌道を描いて「シリウスa」を約6年の周期で公転しています。

シリウスに惑星系はあるのか?

主星である「シリウスa」と伴星の「シリウスb」。
連星を形成しているこの恒星系には、現在のところ惑星は見つかっていません。
ただ、現時点で見つかっていないだけであり、必ずしも惑星が存在しないというワケではなく今後の探査で発見される可能性は十分にありますが、惑星があったとしても、寿命を終えるときに赤色巨星になった「シリウスa」の潮汐力で惑星系が崩壊してしまった可能性もあり、また「シリウスa」も年齢が非常に若い2~3億歳程度のため、まだ惑星が形成されていない事も考えられます。

いずれにせよ、変動の激しい恒星系・シリウスに惑星が存在していたとしても、カルトで話題になっているような”シリウス人”はおろか生命が宿るような惑星は存在しないモノと考えられます。
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太陽系の近くにある巨大な星シリウスは地球に影響はないのか?

太陽系から約8.6光年の距離にある巨大な恒星シリウス。
8.6光年は秒速30万キロで進む光の速さで8年半以上もかかる距離のためとてつもなく遠い印象がありますが、宇宙の距離感覚でいうとこの距離は非常に近く、言わば太陽とシリウスはお隣り同士と言っても良い距離関係にあります。
さらに、シリウスは太陽に近づきつつあり今後はもっと隣接する距離関係になるとされています。

そんな太陽と隣接する距離にある巨大な恒星・シリウスですが、今後において最接近した際など太陽系に影響を及ぼす危険性は無いのでしょうか?

「Image Credit:tHs-Acid
・・・と若干気になったりもしますが、その心配は全くありません。
シリウスが太陽に近づきつつあるとはいっても太陽系に影響を及ぼすほど接近するワケではなく、今から約6万年後に最接近しますがその後は徐々に離れて行きます。
また、シリウスは巨大で明るい恒星とは言っても宇宙では珍しくない標準サイズの恒星である事もあり、巨大な恒星からやって来る恒星風等危険な宇宙線もシリウスのサイズからすると影響は無いと考えられます。

ただ、6万年後、最接近時のシリウスは今より遥かに大きく輝いて見えるかも知れません。

「Image Credit:Wikipedia」

シリウスが超新星爆発を起こすって本当?

一部のネット情報に「シリウスが超新星爆発を起こす。」などといった物騒な事を言っている人がいますが、これは明かに間違った情報です。
超新星爆発とは、質量の大きな恒星は内部で起こる核融合反応のスピードが速いため、数百万年~数億年という速さで核融合の燃料が尽きてしまい、重力崩壊という暴走をを起こし大爆発をするといった天文現象です。

この超新星爆発での影響は半径数十光年先まで壊滅的な被害が及ぶと考えられており、もし仮に太陽に隣接するシリウスaの寿命が尽き超新星爆発を起こしたとした場合、おそらくは地球はおろか太陽系も無事では済まず、爆発による凄まじい衝撃波で地球の生物は絶滅の危機に瀕するか?最悪の場合、地球の大気はまるごと剥がされてしまう可能性さえあると言われています。

「Image Credit:galaxyclub
確かに今は正常に核融合反応が起きている主系列星の「シリウスa」は、太陽と比べると巨大で星の内部で起きている核融合のスピードは速く、そのため太陽よりもずっと早く寿命が尽きてしまい、太陽の寿命が後50億年ほどだとすると「シリウスa」の寿命は残り10億年ほどだと考えられています。

しかし、これがシリウスの超新星爆発に繋がるワケではなく、現在の天文物理学の常識では超新星爆発を起こす恒星は太陽質量の8倍以上だとされており、いくら「シリウスa」が大きいといっても質量は太陽の2.5倍にしか過ぎないため、太陽質量の8倍には遠く及ばない大きさの「シリウスa」が超新星爆発を起こす事はないのです。

シリウスが寿命を尽きるとどうなる?

あと数億年と考えられる「シリウスa」の寿命ですが、超新星爆発を起こさないのであればいったいどうなるのでしょうか?
推測では「シリウスa」の晩年の運命は「シリウスb」と同様に赤色巨星になると考えられます。

「Image Credit:NASA」
巨大に膨張し直径数億キロにも及ぶ赤色巨星に成長した「シリウスa」は、やがて表層を覆っていたガスが宇宙空間に四散し中心部に残った”芯”だけの白色矮星になります。

また、地球には赤色巨星となった「シリウスa」の影響は無いと考えられますが、ただ、巨大に膨張した赤色巨星が肉眼でハッキリと見えるかも知れません。
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