これまでの常識として、太陽系には地球以外に生命は存在しないとされて来ました。
しかし、近年の宇宙探査においてその常識が覆ろうとしていています。
それは、木星の衛星・エウロパや土星の衛星・エンケラドゥスに生命存在を期待させる痕跡が見つかった事と、更には土星の衛星・タイタンにも地球と似た環境が見つかった事などと、今後はこれらの天体を詳しく探査する事で本当に地球外生命体が見つかる可能性が高まって来ています。
ただ、詳しい探査と言え、生命発見、もしくは痕跡の発見には技術的に大きな壁が立ち塞がっています。

Sponsored Link

最も生命存在が期待される氷の星

これまでの宇宙探査で、最も生命存在の可能性が高いとされている星が2つあり、それが木星のガリレオ衛星のひとつ・エウロパと、土星の衛星・エンケラドゥスで、この2つの星は、いずれも表面を厚い氷で覆われた超極寒の世界を持つ天体です。

「Image Credit:エウロパ(左)エンケラドゥス(右)(Wikipediaより)」
太陽から何億キロも遠く離れたこの2つの天体。
そのため、普通に考えれば到底生命の存在など期待できないのですが、この2天体の幸運?は、木星と土星という巨大な重力を持つガス惑星の近くを周る衛星だった事にあり、表面は氷に覆われた世界であっても、巨大惑星の強力な潮汐力から発生する摩擦によって内部に熱源を持つ天体になっていると考えられ、これにより、厚い氷の下は熱で氷が溶けた広大な海が広がっている可能性があるとされているのです。
更に、エンケラドゥスにおいては塩の存在も確認されており、その地下には地球と似た塩水の海が広がっているのでは?と推測もされています。

「Image Credit:エンケラドゥスの内部(地下)想像図(Wikipediaより)」
つまり、地下に水の海があれば、そこには地球のような海洋生物もしくは原始生命体がいるのではないか?と期待が高まっているのです。

生命期待大~しかし発見は困難?

エウロパやエンケラドゥスに生命体の可能性があるとしても、その生命が生息するであろうとされる場所は数千メートルもの厚い氷の下です。

今後、人類がこれらの天体で地球外生命の調査をするとした場合、それを実際に行うには厚い氷を掘削し、海があるであろう場所まで潜らなくてはならない事になります。
しかし残念ながら、現在の人類には厚い氷を掘削する技術はありません。
ただ、厚い氷の下に潜って生きた生物を探すのは困難でも痕跡を探す方法はあるようです。
例えばそれは、NASAが計画しているエウロパ探査ミッション「エウロパ・クリッパー」。

「Image Credit:エウロパ・クリッパーの想像図(NASA/JPL-Caltechより)」
この探査計画は、エウロパを低高度で周回し、氷の下をレーダー探知しようとする計画です。
この探査計画の予定は2024年とされており、アメリカ航空宇宙局 (NASA) が主導して実施する事となっています。
Sponsored Link

もっと早く生命が見つかるかも知れないタイタンに注目!

前記もしましたが、エウロパやエンケラドゥスに生命がいる可能性があるのは、数千メートルもの厚い氷の下だと考えられています。
しかし、氷を掘削しなくても地表で生物が見つかるかも知れないとして注目を集めているのが土星の衛星タイタンです。

「Image Credit:土星第6衛星・タイタン(NASA/JPL-Caltechより)」
タイタンには地球の1.5倍もの大気が存在しますが、その成分の大半は窒素で生命の源となる酸素は殆ど含まれておらず、また、地表温度もマイナス180度以下と、おおよそ生物など生存できないと思われる過酷な環境であることも判明しています。

そんな生命生存は絶望的と思われるタイタンですが、実はこの天体は地球と似た気象現象を持っていることが確認されており、タイタンの大気中には雲が湧き、雨が降り、川が流れ、海(湖)が出来ているという事が驚きを持って紹介されています。

ただ、残念ながらマイナス180度以下の世界では水は液体の状態を留めている事は出来ず、タイタンで流れる水の代わりになっているのが、マイナス180度以下でも液体を維持できる炭化水素のメタンやエタンで、タイタンで降る雨は水ではなく炭化水素で、炭化水素の雨が降り、炭化水素の川が流れ、炭化水素の海が形成されている事になります。

「Image Credit:タイタンの地表を流れる川と湖(Wikipediaより)」
気象現象は地球と似ていてもその環境はまったく異なるタイタン。
このような環境では生命などいないと考えるのが普通ですが、そのような考え方は地球環境を基準とした考えであって、「宇宙には、地球とは全く違った環境で育つ生命がいてもおかしくない。」と考える科学者たちも多く、その考えが正しければ、エウロパやエンケラドスで氷を掘削して生命を探すより、タイタンの海で生命を探す方がより早いのでは?という考えのもと、タイタン海洋探査ミッションの計画が進行しているようです。

タイタンの海を探査するミッションとは?

成分や構造こそ違っても、地球以外で初めて海洋の存在が確認されたタイタン。
NASAはこの海の探査を行う計画を発表しており、探査目的はタイタンの海の分析と生命の源となる有機化合物の観測で、まずは、タイタンの表層海を観測し、その後は海中に潜る潜水艦をタイタンに送り込む計画をしていると言います。

この計画の名前は「タイタン・サターン・システム・ミッション(略称:TSSM)」と呼び、表層海の探査については2020年代後半を目指しているとの事です。

タイタンの海を探査するミッション

2020年代後半を目標に行われるタイタン観測ミッションは、合計で4年間行われる予定になっています。
ミッション概要は、タイタンで最大級の広さを誇る北極付近にあるリゲイア海(もしくはクラーケン海)に探査機を着水させ、海の成分分析や有機物の採集を行う予定だと言います。

「Image Credit:衛星タイタンのリゲリア海とタイタンの海に浮かぶ探査機想像図(Wikipediaより)」

タイタンの海に潜る潜水艦も開発中!

タイタンの海(表層)探査の後は海に潜る潜水探査も計画しているらしく、実際に探査で使用する潜水艦の開発を行っていると言います。
この計画は順調に開発が進めば、2030年代半ばに打ち上げる予定でクラーケン海に着水させ、約1トンのロボット潜水艦を海に潜らせて、更なる詳細な探査を行うとされています。

「Copyright ©:NASA Glenn Research Center All rights reserved.」
このように、かなる大掛かりな探査計画が進行中の衛星タイタンですが、いずれにせよタイタンは、地球以外で唯一濃い大気に包まれ気象現象も似ている環境を持っている事で、生命存在の期待も出てきて当然の事かも知れません。
しかしながら、常識的(地球の)に考えればやはり生命が生息するにはあまりにも過酷過ぎる環境です。
もし、そこに生物が居たとしたら地球上の生物とは全く異なる生物かも知れません。
そして、エウロパやエンケラドゥスで生きているかも知れない生物はどんな形態をして、どんな進化を続けているのでしょうか?
それが判明する日は、それほど遠くない未来なのなのではないでしょうか?
Sponsored Link