先日、NASAが「太陽系の海洋世界」に関する重大発表とした内容ですが、この事については多くの人がNASAの発表に注目し期待したことだと思います。
そんなNASAが発表した内容は、土星の衛星・エンケラドゥスに関する新情報でした。

エンケラドゥスに存在するとされる海洋世界に見つかったモノが「水素分子」だと言う事のようですが、「水素分子?何それ?」と重大発表を期待していただけに拍子抜けした人も多かったのでは?
ですがこれは、地球外生命体に繋がるかも知れない大きな発見だったようなのです。

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もそも「太陽系の海洋世界」ってどこにあるの?

NASAが世界に向け事前アナウンスした「太陽系の海洋世界」に関する新情報。
太陽系の海洋世界と言えば地球の海の他に、木星の衛星・エウロパや土星の衛星・エンケラドゥス、タイタンに海が存在する事が知られています。

地球の海はともかくとして、まずは「太陽系の海洋世界」を持つ天体について簡単に解説します。

「太陽系の海洋世界」その1~木星の衛星・エウロパ

エウロパは太陽系最大の惑星・木星の周りを周るガリレオ衛星の1つとして有名な天体です。

「Image Credit:Wikipedia」
太陽から7億キロ以上離れた場所にある衛星・エウロパ。
太陽から遠いだけあって、地表のほとんどが厚い氷に覆われた超極寒の世界で、地表のどこにも海洋の世界など見当たりませんが、エウロパの海洋世界は、厚い氷(3,000メートル以上)の下にあることが判明しています。

「Image Credit:Wikipedia」
エウロパの内部は、地熱により溶けた氷が液体として存在し”海洋”を造り出しているものと考えられ、そこには生命の存在も否定できないとされています。

「太陽系の海洋世界」その2~木星の衛星・エンケラドゥス

エンケラドゥスはリング(環)も含め、数多く衛星を持つ土星の第二衛星。
直径は約500キロ程、それほど大きくない衛星です。

「Image Credit:Wikipedia」
エンケラドゥスは、太陽系で最も白い天体と言われるだけあって、表面は厚い氷で覆われています。
そしてエンケラドゥスもまた、エウロパと同じように厚い氷の下には、地熱で温められ溶けた氷による”海洋”が広がっているモノと考えられています。

「太陽系の海洋世界」その3~木星の衛星・タイタン

タイタンは土星の第6衛星で、衛星としては太陽系最大で、惑星である水星よりも大きな衛星です。

「Image Credit:Wikipedia」
タイタンの最大の特徴は、地球と同じように厚い大気があること。
そして大気の下には、川が流れ、その先には”海洋”があることも確認されており、もしかしたら生命存在の可能性が?!
と期待されましたが、やはりそこは超極寒の世界で、海も低温でも凍結しないメタンやエタンなどの炭化水素で出来ていることが判明し、生命の存在は絶望的とされています。

なお、「太陽系の海洋世界」は他にも。
木星の衛星・ガニメデや冥王星等の氷の下にも、”海洋”がある可能性があるかも知れないと考えられています。
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NASAの重大発表「太陽系海洋世界」はエンケラドゥスだった!

ここで解説したように、太陽系には海洋世界を持つ天体がいくつか存在していますが、
この時期(2017年)に新情報として挙がって来るとしたら、土星軌道で探査している無人探査機「カッシーニ」から得たエンケラドゥスかタイタンの情報のいづれかではないか?と予想しましたが、やはり土星の衛星・エンケラドゥスに関する重大発表でした。
「カッシーニ」の探査で、エンケラドゥスの地表から噴き出す間欠泉らしきモノが発見され、それが地下で温められた海洋の熱水が、氷の裂け目から噴き出していることが明らかになり話題になっていました。
そして、この噴出物を分析した結果が、この重大発表だったのです。

「Copyright ©:NASA Jet Propulsion Laboratory All rights reserved.」
なお、この発表を前に、巷では「いよいよ地球外生命体の発見か?」と期待し色めきだっていましたが、NASAの発表を受け、何故か期待から疑問符へ変わったのは明らかでした。

NASAの発表は何が重大だったのか?

土星の衛星・エンケラドゥスに関する重大発表。
それは、探査機カッシーニが、エンケラドゥスから噴出する間欠泉の成分分析をしたところ、そこから水素分子が検出されたことにあります。

「水素分子?」それの何が重大なことなの?
事前に公表された概要が「太陽系の海洋世界について」だっただけに、「いよいよ地球外生命体の発見か?」と思いきや、水素分子の検出って・・・?!
NASAの発表内容に期待した人の多くが、そう思い拍子抜けしたのではないでしょうか?
その証拠に、発表前にこの事を報じたメディアもトーンダウン。
多くのメディアが、NASAの発表内容を大きく伝えることなくスルーしてしまいました。

水素分子検出の重要性

一般的には、エンケラドゥスの内部にある”海洋”から水素分子が検出されたことに対し、興味が薄い状況が見られましたが、専門的な分野でみると、これは大発見で大きな成果だと言えるそうです。
水素分子とは、原始的な微生物のエネルギー源。つまり餌となり得るモノ。
この餌があるということは、エンケラドゥスの海には少なくとも原始的微生物が生息している可能性がある。
さらに、その微生物を餌にする小型の生物もいて、小型生物を捕食する大型の生物もいるかも知れない。
そんな食物連鎖の環境が、エンケラドゥスの海には存在するかも知れないという期待が高まったということが、この発表の重大な意味を表しています。

エンケラドゥスに生物を発見出来る可能性

水素分子の検出により、エンケラドゥスに生命が存在する可能性が高まりましたが、実際にそこに生命がいることを確認出来るのでしょうか?
現時点で、探査機「カッシーニ」にそれを発見する能力はありませんし、ミッションも2017年に終了しています。
となれば、本格的な生命探査をする探査機をエンケラドゥスに向けて打ち上げるのか?
NASAは2020年代に土星の衛星に向け探査機を送る計画をしていますが、だからと言って、数千メートルはあるであろうエンケラドゥスの厚い氷の下に探査装置を潜らせて調べる方法など、今の科学技術では不可能だと言えます。
つまり、例えエンケラドゥスに生命がいたとしても、実際に生きた生物を見ることなど出来ないワケです。
そこでNASAが考えているのが、エンケラドゥスからの噴出物を採取し、生命の痕跡を探すこと。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
採取したサンプルに微生物の死骸など含まれていれば、人類史上初の偉大な発見となる可能性があります。

地球外生命体の発見はエウロパが先?

今回、土星の衛星・エンケラドゥスから水素分子が検出されましたが、同じように氷の下に海洋が広がっている可能性が高い、木星の衛星・エウロパを先に探査しようとNASAは計画を発表しています。
エウロパでも地表から噴出する間欠泉のような現象が観測され、この天体でも氷の下で活発な地殻活動が行われているものと推測されています。
エウロパでは、エンケラドゥスのように噴出物の調査は行われていませんが、それを確かめるためにNASAは、「エウロパ・クリッパー(Europa Clipper)計画」を進めています。

「Image Credit:エウロパ・クリッパー探査の想像図((c) NASA/JPL-Caltech))」
この計画では、エウロパを詳しく調査するための無人探査機が2020年に打ち上げられる予定。

いよいよ本格的になって来た地球外生命体探査。
エウロパでも水素分子が見つかり、エンケラドゥスより先に、生命の痕跡が発見されることを期待したいものです。
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