史上初!ブラックホールを直接撮影に成功したニュースは世界中で飛び交って大きな話題になっていますが、公開されたブラックホールの画像を見て、正直、想像とは違った?といった拍子抜けした反応をみせた一般の方も多かったかも知れません。
ですが、天文に詳しい専門家たちの反応は違っており、この撮影された画像は画期的で驚きに満ち溢れた重大な成功でした。
素人の私たちにはチョット理解が難しいかも知れない、今回の画像は正真正銘のブラックホールの姿なのですが、よく調べてみると本当のブラックホールとはちょっと違うようなのです。

Sponsored Link

予想とは違った?ブラックホールのリアル画像

史上初!ブラックホールのリアルな姿を撮像することが出来たというビッグニュース。
このニュースは多くのメディアで取り上げられ「いったいどんな画像なんだ!」と、一般の私たちは期待感でワクワクしたものの、実際に公開されたブラックホールの姿に少し拍子抜けした人は少なからずいたのではないでしょうか!?
何故拍子抜けしたのか?それはイメージ的には、SF映画に出て来るような迫力あるブラックホールの姿を想像したかも知れないでしょう。
しかしながら、公開された画像は何となくボヤけたこの画像↓↓でした。

「Image Credit:Wikipedia」
ですがこれは仕方のない事で、地球から5,500万光年も遠く離れた場所にある被写体を電波望遠鏡を使って撮影したのですから、可視光で私たちが肉眼で見るような姿で写る事はないのです。
しかもその電波望遠鏡による観測方法が驚きで、国際協力によって世界各所に設置された6つの電波望遠鏡を連携させる事で仮想的な地球サイズの巨大望遠鏡を構築し、これにより人間の視力のおよそ300万倍という解像度の実現に成功したのでした。

ちなみに「人間の視力のおよそ300万倍」といってもピンと来ないと思いますが、例えるならそれは、月面に落ちている1個のゴルフボールを地球から見分ける事が出来るほどの視力だと言います。
「ブラックホール撮影に使われた電波望遠鏡の配置図」

「Image Credit:ESO/O. Furtak」
そのような画期的な観測方法に挑戦した事もあり「本来見る事の出来ないブラックホールの姿を撮影出来た!」これは歴史に残る貴重な成功である事は間違いないのです。
Sponsored Link

写し出されたブラックホールのリアル画像の正体は影!?

理論的には存在するとされて来た巨大な重力を持つブラックホールですが、そもそも巨大な重力~それはどれくらいなのか?という事もなかなか想像出来ないかと思いますが、例えば、地球をブラックホール化するとした場合、パチンコ玉サイズの大きさの中に地球の全質量がスッポリ収まってしまうほどと、想像を絶するとてつもない強重力があると考えられているのがブラックホールだと言います。

これだけの重力の天体に引き込まれると光さえも脱出する事は不可能となり、撮影はおろか目で見る事も出来ない天体だと考えられて来ました。
つまり、不可能だと思われていたことが現実となり、幸運にも私たちはそれを目にする事が出来たのです。

「Copyright ©:国立天文台 All rights reserved.」
私たちにリアルな姿を公開してくれたブラックホールは「おとめ座」方向にある巨大なM87銀河の中心の天体ですが、実はこれは、ブラックホールの姿そのものではなく”影”というべきモノだそうです。

この画像の正体は、ブラックホールの巨大な重力レンズ効果で周りの光を歪めて映し出された、言わば蜃気楼のようなモノだという事で、また一見ブラックホール本体(事象の地平面)のように見える中央部の黒い部分は、ブラックホールシャドウと呼ばれる重力で歪められた影で大きさにして直径1,000億キロほどあり、実際の事象の地平面はブラックホールシャドウの後ろにあり本体は4割ほどの大きさだそうです。

「ブラックホールシャドウのイメージ図」

「Image Credit:EHT Collaboration」
さらに、黒い部分を取り囲む明るいリングは、ブラックホールによって超高温プラズマ化したガスや塵であり、これらが重力レンズ効果で写し出される事で、ハッキリと目に出来る史上初のブラックホールの輪郭が今回公開された画像です。

では、今回写し出された画像がブラックホールの影~輪郭なら、その後ろに隠れている本体を見る事は出来るのでしょうか?
実は、ブラックホールの姿を見る事が出来るのはこれが限界で、あまりにも強大な重力のため空間そのものが歪められ光や電波も役に立たないとの事で、外側からはその本体を見る事は不可能との事のようなのです。

宇宙に点在するブラックホール

私たちの常識では、遥かに理解できる範囲を超えているブラックホールを普通に考えれば、私たちが住む次元の宇宙にこんなモノが存在している!と考えれば脅威で恐怖すら覚えてしまうほどです。
そして最近の観測研究で判明した事。それは、宇宙においてブラックホールという天体は、何も特別ではなくごく普通に宇宙に存在している事がわかって来ました。

例えば、私たちの太陽系が属する銀河(天の川銀河)には、2,000億個以上の星(太陽のような恒星)があるとされています。
そんな2,000億個の中の1億~10億個ほどはブラックホールだと考えられており、銀河の中心のみならず銀河のあちこちに分布していると推測されているのです。

「Image Credit:天の川銀河内のブラックホール分布(想像)(YouTUBEより)」
しかもそれらは大小さまざまで、直径数キロサイズのブラックホールもあれば、銀河の中心にあるような太陽質量の数百万倍もあるブラックホールもあるのです。

ブラックホールは何故存在するのか?

宇宙には、何故ブラックホールのような強重力の天体が多く存在するのでしょうか?
その理由は、宇宙には太陽のような熱核融合で輝く恒星が無数に存在するからに他なません。

私たちが夜空を見上げると美しく輝く無数の星々が目に入りますが、これら肉眼で見えるほとんどの星の正体が、太陽と同等もしくはそれ以上の質量を持つ恒星たちです。

「Image Credit:信州STYLE」
そんな星たちの中で太陽の30倍以上の質量を持つ恒星も多く存在し、これらの恒星が寿命を終えると重力崩壊を起こし恒星が持っていた巨大な重力が一点に集中する事で、空間が無限に落ち込んでしまうという現象が起こってしまいます。
●参考記事:【ブラックホールの謎】
これにより、強重力で高密度・大質量になってしまった天体・ブラックホールが誕生するとされており、つまり、ブラックホールは大質量恒星の最期の姿であり、最近の研究ではブラックホール同士も互いの重力で集まり融合しながら成長して行く事もわかって来ました。

ちなみに、今回撮影されたM87や天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールは、複数のブラックホールが融合した姿ではないか?と考えられています。

このように、宇宙にたくさん存在すると考えられているブラックホールですが、幸いな事に私たちの太陽系周辺には存在していません。
何故なら、もし太陽系の近くにブラックホールのような危険な天体があったとしたら、生命に満ち溢れた地球そのものが存在していないでしょうから。
Sponsored Link