ブラックホールとは、大質量を持つ星(恒星)が最期を迎え超新星爆発という重力崩壊の後に誕生する、恒星の最終形態とも呼べる超高密度で超強重力を持つ究極の天体の事です。
その重力はとてつもなく、周りにあらゆる物質を吸い込み、光さえもブラックホールからは逃れられないため目には見えない、まさに「黒い穴」それがブラックホールです。
しかし、ブラックホールの中には、星の最期の姿としては物理的に説明がつかない巨大ブラックホールも存在し、それがどうやって生まれたのか謎のままでしたが、最新の観測研究により巨大ブラックホールの謎が少しずつ判明しつつあるとの事です。
これまで解明されていなかった大質量巨大ブラックホールは、いったいどうやって生まれ成長していったのか?
今回はこの巨大ブラックホールの謎について調べてみました。
ブラックホールはどうやって生まれるのか?
宇宙には、太陽よりも大きな質量を持つ天体(恒星)は星の数ほど存在しており、その中でも特に質量の大きい恒星(太陽質量の30倍以上)からブラックホールが生まれると考えられています。「Image Credit:ブラックホールの想像図(Wikipediaより)」
太陽をはじめ大きな質量を持つ恒星は、自らが持つ強大な重力により星の中心部では熱核融合反応が起きています。
しかし、熱核融合反応もいつかは燃料が尽き、恒星としての機能を失い最期を迎える事になります。
この時、太陽の8倍以上の質量がある恒星が最期を迎えると超新星爆発という大爆発を起こし、さらに20倍以上もの重い星ともなると自らの重力を支えきれずに中心核が潰れてしまい、質量が30倍以上は極限を超えて潰れ、後に残るのは凄まじい重力の塊であるブラックホールになってしまい、光さえも脱出出来ない異常重力の天体になると考えられています。
銀河系にブラックホールはいくつ存在するのか?
私たち人類が、はじめてブラックホールらしき存在を確認したのは1970年代になってからで、それまでブラックホールは理論上の天体で存在するかどうかもわからない状態でした。そんなはじめて確認されたブラックホール候補の天体は、太陽系から約6,000光年離れた銀河系内にある「はくちょう座X-1」です。
「Image Credit:はくちょう座X-1想像図(Wikipediaより)」
この「はくちょう座X-1」を皮切りに、その後もいくつかのブラックホール候補の天体は見つかっていますが、光さえも逃れることが出来ない天体のため発見は非常に困難な状態でした。
「はくちょう座X-1」がブラックホールとして検出された理由は、上画像でもおわかりのように、たまたま近くに大きな恒星があったため、その恒星からブラックホールに流れ込む超高温ガスから放出されるX線を検知することによって、ブラックホールの存在を確認する事が出来たのでした。
しかし、最近の観測研究の進歩によってブラックホールの検出が徐々にしやすくなった事もあり、ブラックホールはそれほど特別な天体ではないことが判明し、宇宙には相当数存在すると考えられるようになっています。
なお、私たちの天の川銀河内だけでも、1億~10億個ものブラックホールが存在するのでは?と現在では推測されているそうです。
太陽系に最も近いブラックホールはどこ?
銀河内に10億個ものブラックホールがあるとすると、もしかしたら地球の近くにもあるのでは?と心配になるかも知れません。ですが、現時点では地球に影響を及ぼすような近距離にあるブラックホールは見つかっていませんので、今のところそのような心配をする必要などありません。
ちなみに、現在発見されているブラックホールで最も太陽系に近い距離にあるのが「いっかくじゅう座X-1」で、距離にして地球から約4,700光年の距離にあります。
「はくちょう座X-1」もそうですが、これまで発見されたブラックホールのほとんどは、ブラックホールの周りを高速で回転するガス(降着円盤)から放出されるX線を検知した事で確認が出来ており、これらは稀なケースで、宇宙に存在する大半のブラックホールはX線すらも放出せず、まったく目に見えない状態で存在すると考えられている事もあり、太陽系にもっと近い場所にブラックホールがあったとしても、何ら不思議ではないのかも知れません。
「Image Credit:ブラックホールの構造想像図(Wikipediaより)」
巨大質量ブラックホールは何故存在するのか?
ブラックホールの誕生のメカニズムの根本となるのは星の最期であり、それにより誕生したブラックホールは太陽質量の数倍~10数倍であることが理論上判明しており、これを恒星質量ブラックホールと呼んでいます。しかし、銀河の中心には太陽質量の数百万倍から数億倍億とも考えられる大質量ブラックホールが存在しており、理論的に何故このような恒星質量を遥かに超える巨大なブラックホールが存在しているのか?謎になっていましたが、つい最近になってその謎が少しずつ解明されて来ています。
「Image Credit:天の川銀河の中心にある太陽質量の400万倍以上の超大質量ブラックホールの実際の画像(Wikipediaより)」
大質量ブラックホールの謎。
それは、ブラックホール同士が干渉し合体することによって巨大ブラックホールに成長するのではないかと考えられるようになっており、私たちの銀河に存在するブラックホールも、いくつものブラックホールが合体して出来たモノだということの推測が立つようになって来ています。
「Image Credit:ブラックホール同士の合体融合を描いた想像図(NATIONAL GEOGRAPHICより」
長年謎だった大質量ブラックホールですが、この謎を解明に向かえるようのなってきたのは重力波の観測によるもので、ブラックホール同士が合体すると強い重力波を発生させる。これを検出することによって、大質量ブラックホールに成長して行くというプロセスが確認出来るようになったという事です。
合体で成長し続ける銀河系
ブラックホール合体は宇宙のいたるところで起こっていると考えられており、それは私たちの天の川銀河も例外でなく、銀河中心のブラックホールは今も合体を繰り返し成長し続けていると言います。また、最新の観測研究によって、銀河中心付近に太陽質量の数十倍~数万倍の中質量ブラックホールがいくつもあると考えられており、これらが中心部の超巨大質量ブラックホールの周りを取り囲み、いずれは巨大ブラックホールに吸収合体するものと思われています。
「Image Credit:天の川銀河内のブラックホール分布(想像)(YouTUBEより)」
銀河中心にブラックホールが集まっている原因として推測されているのが、銀河中心付近( 銀河バルジ)にはガスや恒星が密集し、そのため頻繁に超新星爆発が起こっており、それによりブラックホールも誕生しやすい環境が整っていると考えられています。
さらに、ブラックホール成長のメカニズムは、ブラックホールが周りのガスを吸い込むことによってより巨大に成長していくものとも考えられていて、私たちの銀河は、中心部のブラックホール成長とともにもっと大きな銀河へと変貌して行く可能性も秘めているという事です。