誰でも一度はブラックホールという天体の名前を耳にした事はあると思います。
一般的にブラックホールと聞いてイメージするのが「何でも吸い込む”黒い穴”~恐ろしい天体」的な、漠然としたものなのかも?!
そういったイメージで、本当のブラックホールとはどんなモノなのか?良くわからない人は相当数はいるのではないでしょうか。
ここでは、そんな良くわからないブラックホールについて、大きさや重力等、図解や動画を交えてわかりやすく解説したいと思います。
ブラックホールとはどんな天体??
ブラックホールとは、理論上存在するとされる天体で、実のところこの天体を見た人は誰もいません。しかし、その理論は正しい事が証明されており、現在において理論に合った天体~ブラックホールはいくつも発見されています。
でも、ここで多くの人は疑問に思ったのでは?
誰も見た事がないのに”発見”とはどういう事なのか?
それは厳密に言うと”発見”ではなく”候補”であり、つまりそれは理論的に考えておそらくブラックホールだろうという事なのです。
では、その理論で言うところのブラックホールとはどういう天体なのか?
ブラックホールは全宇宙の中でも究極の天体と呼べるモノで、巨大な重力を持つ天体の重力を一点に収縮させると空間は無限に歪んで落ち込んで行き、光ですら脱出出来ないとてつもない強重力の塊になってしまいます。
「Image Credit:重力が1点に集中し落ち込むイメージ図(YouTubeより)」
これがブラックホールで、アインシュタイン博士が一般相対性理論で提唱し、ドイツの物理学者シュヴァルツシルト博士が発見。これにより、ブラックホールは理論上実在する天体であると導き出しそして証明されているのです。
実際に撮影されたブラックホール
2019年、画期的な観測結果が発表されました。それは「ブラックホールが実在する」事を証明する確固たる証拠。つまりそれは実際のブラックホールの撮影に成功したのでした。
撮影に成功したのは、地球から「おとめ座」方向約55,000万光年彼方にある、M87と呼ばれる楕円銀河の中心に存在する太陽質量の65億倍もある超大質量ブラックホール「おとめ座A (Virgo A)」。
「Image Credit:超大質量ブラックホール「おとめ座A (Virgo A)」の画像(Wikipediaより)」
そしてもうひとつが2022年に発表された、私たちの太陽系がある天の川銀河の中心に存在する太陽質量の約400万倍の大質量ブラックホール「いて座A*(Sgr A*)」。
「Image Credit:大質量ブラックホール「いて座A*(Sgr A*)」の画像(Wikipediaより)」
この2つのブラックホールは質量こそ桁違いですが、共通するのが真ん中の黒い部分がブラックホールの本体である「事象の地平線」。いわゆるブラックホール・シャドウがハッキリと確認出来、その周りを高速で回転する数億度にも達すると考えられるガスや塵といった物質「降着円盤」も確認出来ます。
ブラックホールどのようにしてつくられるのか?
ブラックホールはとてつもない高密度と強重力の塊。よって、ブラックホールがつくられるにはとてつもない重力を持つ天体が必要になります。ブラックホールをつくられるのに必要になる天体は、太陽の30倍以上もの質量を持つ恒星だと考えられています。
通常、太陽のような恒星は、中心部で熱核融合反応が起こり、その核融合によって生じる膨張しようというチカラと、逆に恒星そのものが持つ重力で収縮しようとするチカラがつり合う事で星(恒星)のカタチを保っています。
「Image Credit:YouTubeより」
しかし、核融合反応も無限に続くワケではなく、いつかは核融合の燃料が尽き恒星は一生を終えてしまい、核融合の燃料が無くなると膨張するチカラも無くなります。
そのような状態になった場合、自重による重力で一気に星の中心に向かって行く急激な収縮が始まります。
そして、その反動で凄まじい衝撃波が発生する恒星の巨大な爆発である超新星爆発が起こってしまい、これまで恒星を構成していたガスの表面が吹き飛ばされてしまいます。
「Image Credit:超新星爆発・ショックブレイクアウトのイメージ図(iStockより)」
ちなみに、超新星爆発の初期現象である凄まじい衝撃波の爆発の事をショックブレイクアウトと呼び、このときに放出されるエネルギーは太陽が放出するエネルギーの数千倍~数百万倍以上とされ、この爆発エネルギーで半径数十光年以内の星々は甚大な被害を受けると考えられています。
超新星爆発で恒星の表面が吹き飛ばされた後、太陽質量の30倍以上という圧倒的な重力により、後に残るのは限りなく収縮してしまい物質が「シュワルツシルト半径」を超えてしまった高密度で強重力の天体~これがブラックホールです。
「Image Credit:ブラックホールのイメージ図(NASA / Alain Riazueloより)」
ブラックホールの大きさってどのくらい?
想像を遥かに超えた究極の天体ともいえるブラックホール。超新星爆発の末、限りなく収縮して出来るとされるこの天体の大きさってどのくらいなのでしょうか?
これまでの観測研究で判明したブラックホールの大きさは、大きく分けて「大」「中」「小」の3種類に分類されます。
まず「小」の場合。ブラックホールが最初に形成されるのは、太陽の30倍以上の恒星が寿命を終えたときだとされており、これを恒星質量ブラックホールと呼びます。
ここで形成されるブラックホールの大きさは太陽質量の数倍~10数倍程度で、直径は数十キロほどだと考えられています。
また、極小サイズのブラックホールも確認されており、最も小型なのが「XTE J1650-500」というブラックホールで質量にして太陽の3~4倍。大きさはマンハッタン島程度だと考えられています。
「Image Credit:観測史上最少のブラックホール・XTE J1650-500(YouTubeより)」
次に「中」の場合。中サイズのブラックホールも様々で中質量ブラックホールと呼び、恒星質量ブラックホールが合体融合して成長して出来たモノだと考えられています。
例えば「M82 X-1」という中質量ブラックホールは、太陽の1,000倍ほどの質量があり大きさは火星ほどだと推測されています。
「Image Credit:中質量ブラックホール・M82 X-1(YouTubeより)」
そして最後が「大」のブラックホール。
この「大」サイズのブラックホールは想像絶する大きさ。正直、これほど大きなブラックホールなんて存在するのか?と疑うほど巨大です。
例えば、私たちの天の川銀河の中心にある「いて座Aスター(Sagittarius A)」と呼ばれる巨大質量ブラックホールは、太陽質量の400万倍以上というとてつもなく巨大な天体です。
「Image Credit:天の川銀河中心部に巨大質量ブラックホールが存在。(YouTubeより)」
さらには、これを遥かに上回る思わず「ありえない!」と驚嘆してしまうほどの超大質量ブラックホールも発見されており、その質量はなんと太陽質量の210億倍もあるという信じられない大きさです。
このブラックホールが存在するのは、地球から約57億光年離れた場所にあるフェニックス銀河団の中心にあるブラックホール。
「Image Credit:フェニックス銀河団中心の超大質量ブラックホール。(YouTubeより)」
上図でもおわかりのとおり、私たちの視点では広いというイメージのある太陽系すら比較にならないほどで、ひとつの銀河に匹敵するほど巨大なブラックホールです。
ブラックホールは成長する!?
ここまで大・中・小のブラックホールをご紹介して来ましたが、そもそも何故宇宙に大中小のブラックホールが存在するのか?このことは、これまで謎としてわかっていませんでしたが、最近の観測研究によりその謎が少しずつ解明して来ています。
研究でわかって来たことは、元々は大質量の恒星が寿命を終える事によって誕生する恒星質量ブラックホールと考えられており、最初に誕生したブラックホールは大きくてもせいぜい太陽質量の十数倍程度だそうです。しかし、星が密集し大質量の天体が多く存在する場所では、誕生したブラックホールも隣接し連星系を形成する状況がみられ、連星となったブラックホールは互いの重力で干渉し合い、次第に接近し衝突合体。お互いのエネルギーが融合して少しずつ大きくなり、ついには大質量ブラックホールへと成長して行く。
● 参考動画:【合体融合するブラックホールのシュミレーション動画】
しかも、このようなブラックホールの合体融合は、宇宙のあちこちで起こっているそうでブラックホールが成長を続ける限りその大きさや質量に制限は無いとの事。
ちなみに、私たちの天の川銀河中心にある巨大質量ブラックホールも今も成長を続けているそうです。
ブラックホールは決して特別な天体ではない!?
人類はこれまで数百個のブラックホールを発見しており、ですがブラックホール自体は”見えない天体”ですので、厳密に言うと発見ではなくブラックホールの候補を発見という事になります。故に”見えない天体”だけあって実際はどこにあるのか?もわかっておらず、これまでの観測研究ではブラックホールという天体は理論上、宇宙に数多く存在すると推測されています。
例えば、私たちが住む天の川銀河内だけでも約1億~10億個のブラックホールが分布していると考えられており、そのほとんどは現代の観測技術では発見が不可能だと考えられています。
「Image Credit:天の川銀河内のブラックホール分布(想像)(YouTUBEより)」
ブラックホールに吸い込まれるとどうなる?
天の川銀河の中にも数億個のブラックホールがあって、しかも目に見えないなら、もしかしたら太陽系の近くにもブラックホールがあるかも?そう考えたら思わず恐怖がこみ上げて来ますが、安心して下さい!そこは大丈夫です。
もし、ブラックホールが太陽系の近くにあったとしたならば、少なからずその強大な重力の影響を受けているでしょうし、そもそも、ブラックホールは超新星爆発が起こった後に生まれるモノで、これまでの地球史の中で、間近で超新星爆発が起こったという痕跡はありませんし、地球が超新星爆発に巻き込まれていたとしたならば今の地球そのものが存在していないでしょう。
ということで、少なくとも太陽系や地球が影響を受けるような距離にブラックホールが存在しない事は断言できるでしょう。
そしてもうひとつ気になるのが、仮にブラックホールに吸い込まれてしまったらどうなるのか?
良くSF的な話で、ブラックホールに吸い込まれたたら違う異空間に出てしまうと言っている人もいますが、前述したようにブラックホールはとてつもない重力の塊です。その重力の塊を例えて表すならば、地球を私たちも一緒に丸ごとピーナッツぐらいの大きさまで圧縮するようなモノであり、物理的にはありえない圧縮ですが、ブラックホールの中は想像を絶する圧力がかかっているそうです。
「Image Credit:YouTUBEより」
つまり、ブラックホールに吸い込まれると異空間に飛ばされるとか?押し潰されるといった次元の問題ではなく、物質そのものが原子レベルまで跡形も無く消滅してしまうという考えが妥当な考え方ではないでしょうか?!