誰も実際には見た事がないブラックホール。
もし、この謎の天体を肉眼で見る事が出来たらどのように見えるのでしょうか?
そんな疑問をNASAが解決してくれました。
とはいってもNASA自体も実際にブラックホールを見た事がありませんので、科学的な分析のもと、おそらくはこんな感じで見えるだろうというリアルな想像図として動画で視覚化してくれています。
今回は、NASAが作成したリアル・ブラックホール動画から、ブラックホールはどんな天体なのか?を改めて探ってみたいと思います。

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まずは本物のブラックホール画像を検証してみよう!

冒頭で「誰も見た事がないブラックホール」と表現しましたが、2019年4月。本物のブラックホールの姿を捉えた画像が公開され、世界中で大きく報道されましたので知っている方も多いのではないでしょうか?
そう!この画像です↓↓

「Image Credit:人類史上初。撮影に成功した本物のブラックホール画像(Wikipediaより)」
これは地球から「おとめ座」方向に、約5,500万光年も離れた位置にある「M87」という楕円銀河の中心にあるブラックホールで、実に太陽65億個分の質量を持っている想像を絶する巨大な天体で、ブラックホールの本体である事象の地平面(真ん中の黒い部分)の大きさは約400億キロもあり太陽系など余裕でスッポリ入ってしまうほどの大きさです。
(参考までに、太陽から一番外側を周る冥王星までを太陽系の直径にすると概ね120億キロになります。)

では、NASAが視覚化したブラックホール動画を観る前に、簡単にブラックホールの構造について解説してみたいと思います。
まず、中心部分にある黒い丸の部分がブラックホールの本体に当たる「事象の地平面」で、ここが天体でいうところの実質上の表面と言え、事象の地平面が黒く見える理由は、この領域に入ると光さえも脱出出来ないため一切の光を放たなくなる事で黒く見えるワケです。

では、事象の地平面の内側はどうなっているのでしょうか?
残念ながらこの領域については謎に包まれており、現時点では、自身(天体)の重力によって押し潰された事で天体自体の質量が一点に集中し過ぎ、事象の地平面を境に無限に小さくなってしまった天体としか言えず、そのため、事象の地平面から内側については簡単な解説になってしまいます。

「Image Credit:Wikipedia」
ブラックホールの中心が「特異点」と呼ばれ、重力場が無限大となるような場所で重力の特異点とも呼びます。
つまり、特異点に向かって物質は無限に落ち込んでいくか、もしくは潰されて跡形もなく消滅していくモノと思われています。

次は「シュバルツシルト半径」について。
これは文字通り、中心の特異点からブラックホール表面(事象の地平面)を表す半径の事で、M87銀河にある超大質量ブラックホールのシュバルツシルト半径は200億キロという事になります。
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M87ブラックホールは正面から見た画像ではない!

世界初の直接画像として捉えられたブラックホール。
画像を見ると、M87ブラックホールは事象の地平面の周りが明るく輝いているのがわかります。
これは「降着円盤」と呼ばれるブラックホールや中性星等、高密度天体の周りにガスや塵で形成される高速で回転する円盤の事。

「Image Credit:ブラックホールを取り巻く降着円盤(nasa.govより)」
この降着円盤の威力は凄まじく回転する速度は事象の地平面に近づくほどに高温、そして高速で回転し、温度は数千万~数億度まで達し回転は光速に近い速度まで達していると考えられています。
となると、画像として捉えられたM87ブラックホールは下側の方が黄色く明るく輝いていますので、下側が温度が高いのか?と思ってしまいがちか?と思いますが、実際はそうではなく、この画像はブラックホールを正面から捉えた画像ではなく斜め下側から見ているためこのように見えているのです。
つまり、M87ブラックホールの下側の方がより地球に近いため明るく見えており、上側の方が離れているため少し暗く見えているという事になるのです。

NASAが公開したブラックホール・シュミレーション動画

アメリカ航空宇宙局(NASA)がこのほど、実際にブラックホールの近くまで行った場合、視覚的にどう見えるのか?という課題のもとに作成したシュミレーション動画が話題になっています。

それがコチラ↓↓

「Copyright ©:VideoFromSpace All rights reserved.」
この動画を少し解説してみると。
まず、真ん中にある黒くて環のようにも見えるブラックホールの本体「事象の地平面」である事がおわかりか?と思います。
そしてその周りを取り巻き、反時計回りで回転しているオレンジの部分が「降着円盤」であり、このブラックホールで見えているのは、高速で回転し超高温に熱せらオレンジ色に輝く降着円盤のガスや塵といった物質になります。

「Image Credit:YouTUBE」
さらに注目していただきたいのがこの画像↓↓。

「Image Credit:YouTUBE」
これはブラックホールを真横から見たモノではなく、少し斜め上から見た場合のモノ。
動画を観ると、反時計回りに回転している降着円盤のガスが上から前方に流れ込んできているように見えますが、実際はそうではなく、右側からブラックホールの後ろ側に回り込んだ降着円盤が、あまりにも強力な重力のため光が歪められ後ろ側にある降着円盤のガスが上から前へ回り込んでいるように見えています。
とは言え、このシュミレーション動画が正しいのか?どうなのかは、誰にもわかるワケではなく、科学的に分析した結果でこのように見えるのでは?という想像に過ぎません。

しかし、直接近くまで行って見る事は出来ないにしても、日々進化を続けている人類の観測技術をもってすれば、いつかは、あらゆる角度からブラックホールの姿を捉える事が出来るようになり、シュミレーション動画ではなく、リアルな実際の動画を観られる日がやって来るかも知れません。
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