天体観測に興味があるけど・・・「どうやって星を見たらいいの?」と、興味はあってもなかなか一歩を踏み出せない人はいるハズ!?。
そんな場合、おすすめしたいのが「メシエ天体」の観測です。
メシエ天体は、初心者でも地球から遥かに遠い場所にある星団や銀河、星雲を観測することが出来ます。
天体観測をやってみたいと思っている方。まずはメシエ天体の事を知って、星空の下に繰り出してみてみてはいかがでしょうか?
メシエ天体って何?
そもそも天文に詳しくない初心者の方に「メシエ天体がおすすめ!」と言っても何のことかわからないと思います。メシエ天体の”メシエ”とは、17世紀後半から18世紀前半にかけて活動していたフランスの天文学者シャルル・メシエの事であり、当時、彗星の探索にチカラを入れていた彼が、彗星と見間違えやすい星団や銀河等の天体を分別するために番号を付けて天体を管理した事に始まり、のちに星雲・星団・銀河を一覧形式にまとめた「メシエカタログ」として刊行されるようになりました。
メシエ天体は全部で110個。全ての天体をメシエの頭文字”M”を付け、通し番号で管理しカタログ化しています。
初心者にメシエ天体観測をおすすめする理由とは?
ところで、初心者が天体観測をするのにメシエ天体をおすすめする理由。それは、これらの天体が番号付けされているので、見つけやすいことと、何より、メシエカタログに掲載されている天体が、初心者にも扱いやすい口径5センチ以上の天体望遠鏡でも観測しやすい明るい天体である事にあり、さらに、明るいが故に双眼鏡でも見ることが出来ることが出来るメシエ天体も含まれている事がおすすめする理由でもあります。
初心者の方には、はじめて手にした天体望遠鏡で月のクレーターや火星、木星、土星の環などを観測して欲しいですが、やはり地球から遥かに遠い場所にあるメシエ天体たちをリアルな目で見ていただき天体観測の魅力を知ってもらえれば嬉しく思います。
というワケで、ここからは季節毎に観測出来るメシエ天体をご紹介して行きます。
春に観測が楽しめるメシエ天体
春に見えるメシエ天体はそれほどメジャーな天体がなく、今一つモチベーションが上がらないかも知れませんが、それでも低倍率な天体望遠鏡や双眼鏡でも十分に星団や星雲等を観測出来ます。おおぐま座の渦巻銀河
メシエ番号:M81の「おおぐま座」にある渦巻銀河。地球から約1,200万光年も彼方にある銀河ですが、その巨大さ故に双眼鏡でも観測することが出来、M82銀河も並んで見ることが出来ます。
「Image Credit:国立天文台」
【観測方法】
・天体望遠鏡:口径10cm,60倍~M81とM82を同一視野で観測可能。
口径20cm,100倍~銀河内の光斑まで観測可能。
・双眼鏡:7×50
・見つけ方:ひしゃく型の北斗七星のひしゃくの先端と北極星を結んだ点を起点に探すとわかりやすい。
「Image Credit:Wikipedia」
おおぐま座のソンブレロ銀河
メシエ番号M104。こちらは「おとめ座」に位置する銀河。地球から約5,000万光年の距離にある銀河。
大きな銀河バルジが特徴的な天体です。
「Image Credit:国立天文台」
【観測方法】
・天体望遠鏡:口径10cm,40倍~M銀河の光斑が観察可能。
口径20cm,100倍~上図に近い画像で観測可能。
・双眼鏡:7×50~銀河の光斑が観察可能。
・見つけ方:南空、おとめ座の1等星スピカを起点にすると見つけやすい。
「Image Credit:Wikipedia」
夏に観測が楽しめるメシエ天体
夏は夜が過ごしやすく天体観測に最適の季節です。そんな夏の天体観測は、星空が綺麗な山や海のキャンプ地で見ると素晴らしい星たちが見えるでしょう。
さそり座に散らばる星団・星雲
夏の星座の代表格・さそり座。さそり座付近にある小口径の望遠鏡でも綺麗の見えるM6,M7(散開星団),M8(散光星雲)がおすすめで、M6,M7,M8のいずれも近くの空に見えますので一気に観測することも可能です。
「Image Credit:国立天文台」
【観測方法】
・天体望遠鏡:口径10cm,60倍~見かけ視界80°以上のアイピースを使うと良い。
口径20cm,100倍~微光の星々が美しく見える。
・双眼鏡:7×50
・見つけ方:さそり座の尻尾付近に3つの天体があるので見つけやすい。
「Image Credit:Wikipedia」
こと座の環状星雲
リング状に見えることで有名なM57環状星雲。そのためリング星雲、ドーナツ星雲などとも呼ばれています。リング状の天体を眺めるには、残念ながら双眼鏡では難しく天体望遠鏡を使った方が良いかと思います。
「Image Credit:国立天文台」
【観測方法】
・天体望遠鏡:口径10cm,60倍~小さなリング状の天体が見える。
口径20cm,100倍~美しいリング状の星雲がハッキリと見える。
・双眼鏡:×
・見つけ方:夏の大三角の一角・ベガ(織姫星)のすぐ近くに見えます。
「Image Credit:Wikipedia」
<秋に観測が楽しめるメシエ天体
秋のメシエ天体の目玉は何と言っても有名なアンドロメダ銀河(メシエ番号M31)。一度はリアルなアンドロメダを見てみたい!と思っている人は多いのではないでしょうか?
秋はそんなアンドロメダ銀河の美しい姿を観測するチャンスです。
「Image Credit:国立天文台」
【観測方法】
・天体望遠鏡:口径10cm,40倍~低倍率の望遠鏡の方が良く見えるため40倍程度が良い。
・双眼鏡:7×50~10×70 楕円上の見事な銀河のカタチが観測可能。但し、特徴的な渦巻きまでは見れないかも!?
・見つけ方:北東方向にアンドロメダ座が現れその中心付近に肉眼でも確認できる、ぼんやりと淡い光芒を見ることが出来ます。
「Image Credit:Wikipedia」
冬に観測が楽しめるメシエ天体
冬の夜は寒いため天体観測には不向きかも知れませんが、有名なメシエ天体がいくつも見られるため「寒い!」なんて言ってられないかも知れません。おうし座かに星雲
メシエ番号M1の「かに星雲」。”かに星雲”と呼ばれるくらいですから、かに座にあるのか?と思いがちですが冬の星座・おうし座方向に見られる天体です。
この天体は、1054年に超新星爆発を起こした恒星の残骸で、約7,000光年離れている地球からでもその爆発の様子が肉眼で観測出来たと言います。
「Image Credit:国立天文台」
【観測方法】
・天体望遠鏡:口径10cm,120倍~かなり倍率を上げないと良く見えない。
口径30cm~かに星雲の全体がハッキリと見えて来る。
・双眼鏡:×
・見つけ方:おうし座の右の角ζ星(3.0等)の西北方向に位置し、目印としてはオリオン座の上あたりを探すと良い。
「Image Credit:Wikipedia」
オリオン座大星雲
オリオン座にある大星雲はメシエ番号M42の散光星雲です。地球から約1,500光年離れたこの天体は、ぼんやりとではありますが肉眼でも確認することが出来ます。
「Image Credit:国立天文台」
【観測方法】
・天体望遠鏡:天体望遠鏡なら口径に関わらず良く見えますが、35cm以上の口径ならより大星雲としての美しい光景も観測可能。
・双眼鏡:10×50~口径の大きい方が良く見えます。
・見つけ方:オリオン座中心にある三ツ星の下に、肉眼で見えます。
「Image Credit:Wikipedia」
プレアデス星団(昴・すばる)
冬のメシエ天体の目玉はプレアデス星団かも知れません。プレアデス星団のメシエ番号はM45。
古来から昴(すばる)の名で親しまれ、肉眼でも美しく輝く姿が見れる散開星団です。
「Image Credit:国立天文台」
【観測方法】
・天体望遠鏡:口径10cm,40倍~実視界の広い(80度以上)アイピースが必要。
口径20cm,50倍~こちらもアイピースを使用することで、迫力のある姿を楽しむことが出来ます。
・双眼鏡:7×50~見事で美しい星団の姿を見ることが出来ます。
・見つけ方:オリオン座の中心にある三ツ星の延長線上に伸ばして行くと、プレアデス星団を見つけることが出来ます。
「Image Credit:Wikipedia」
ふたご座の散開星団
メシエ番号M35のふたご座散開星団。有名な天体が見れる冬のメシエ天体の中では少し影が薄い存在かも知れませんが、この天体も非常に美しく、満月ほどのダイナミックな星団として見ることが出来ます。
「Image Credit:国立天文台」
【観測方法】
・天体望遠鏡:口径10cm,30倍~微光星も明るくはっきり見える。
口径20cm,30倍~低倍率で素晴らしい姿を眺めることが出来ます。
・双眼鏡:7×50~見事で美しい星団の姿を見ることが出来ます。
・見つけ方:南の空に浮かぶふたご座。ふたごの足元付近に目をこらすとぼんやりとした星雲上の天体が見えてきます。
「Image Credit:Wikipedia」
初心者が陥る天体観測のギャップ
初心者でも観測しやすいメシエ天体をいくつかご紹介して、これで入門編として少しはお役に立てればうれしいですが、ただ、いざ!天体と覗いたとき、写真で見たような美しい天体でないことにガッカリしてしまうかも知れません。また、メシエ天体などは遠い天体のため、ぼやけて良く見えなかったりもします。
天体観測も、観測する場所と条件によって左右されますし、なかなか焦点を合わせることが出来なかったりもします。
しかし、それも天体観測の醍醐味のひとつだとして覚えていた方が良いと思います。
私たちにとっては単に趣味で星を見る行動ですが、今見ている天体が放つ光は数百年~数万年という長い時間をかけて届いた光だということに思いを馳せれば、おのずと天体観測の魅力に引き込まれて行くのではないでしょうか?