日本の小惑星探査機「はやぶさ2」。
2020年12月6日に地球帰還を果たしますが、はやぶさ2にはまだ任務が残っています。
そのミッションとは、帰還後再び地球を離れ新たな小惑星探査に向かいます。
この程、新たに探査に向かう小惑星が決定。でもチョット意外な目的地なようです。
それでも、はやぶさ2の宇宙探査の旅はまだまだ続きますので期待大です。
はやぶさ2の地球帰還運用スケジュール
2019年2月~7月にかけて、小惑星「リュウグウ」に合計2回に渡るタッチダウン・ミッションを成功させた「はやぶさ2」。史上初のミッションを見事成功させ、小惑星のサンプルを採集しました。
「Image Credit:JAXAはやぶさ2プロジェクト」
その後、同年11月に小惑星「リュウグウ」を離脱。一路、地球に向けて帰還ミッションを行っており、2020年12月6日に地球上空に到達し、高度200キロ超の上空から、採集した小惑星サンプルの入ったカプセルを地上に向けて投下します。
初号機の探査機「はやぶさ」はカプセルを投下せず、本体ごと大気圏に突入してその任務を終えましたが、「はやぶさ2」本体はまだ宇宙に”身”を置いたままです。
つまり「はやぶさ2」のミッションはまだ残っており、次の探査地に向かう事になっています。
ちなみに「はやぶさ2」から分離投下されたカプセルは、南オーストラリアの砂漠地帯・ウーメラ地区にある立ち入り制限区域にパラシュート降下で着地。その後、回収される運びとなっています。
はやぶさ2が採集したサンプルには何が入っている?
合計2回のタッチダウンにより、カプセルには2種類の小惑星サンプル(試料)が入っているハズです。1回目では、そのまま地表にタッチダウン。剥き出しになっ地表近くのサンプルが微量採集出来ている予定です。
はやぶさ2が小惑星「リュウグウ」のサンプルを採集する目的は、太陽系の起源・進化と生命の原材料物質を解明するためで、長年、太陽光と宇宙線に晒され続けて来た地表近くのサンプルでは目的である材料が破壊されている可能性が高く、十分な分析が出来ない恐れがあります。
そこで2回目では、史上初の試みである爆薬で小惑星表面に穴を開ける人工クレーター作製に挑戦。
「Image Credit:JAXA」
このミッションにも見事成功。
直径約14.5メートル、深さ約2メートルの人工クレーター(愛称:おむすびころりん)が誕生し、ここに「はやぶさ2」は再びタッチダウン。
サンプルの採集に成功(同じく微量のサンプル)しています。
つまり、2回目のタッチダウンでは、太陽光や宇宙線の悪影響を受けていないであろう地中のサンプル採集に成功したワケで、うまく分析が出来れば太陽系の起源・進化と生命の原材料解明にグッと近づける事になります。
はやぶさ2の新たなミッションは再び小惑星探査へ!
小惑星「リュウグウ」の探査ミッションを終えた「はやぶさ2」には、まだ燃料が半分ほど残っており、搭載されている観測機器も正常に動作出来る状況にあります。このまだまだ働ける状態にある「はやぶさ2」をこのまま地球に帰還させるにはあまりにも勿体ないワケで。
そこで計画されたのが新たなる小惑星探査の旅に行かせる事です。
そして選ばれたのが1998 KY26という小惑星で、2031年に到着予定です。
はやぶさ2次の探査目標は史上最少で危険な小惑星だった!?
はやぶさ2の次なる探査目標には2つの小惑星の候補がありました。それは1998 KY26と2001 AV43という小惑星。
この2つの目標が設定された理由は、はやぶさ2の現在残っている燃料で”行ける”範囲内にある小惑星という事で、リュウグウのように”行きたい”探査目標として選定されたワケではないようです。
そして残燃料の余裕、そして観測機器の耐久性を加味した上で選ばれたのが1998 KY26でした。
では、この1998 KY26という小惑星はどういう天体なのか?
特徴として最も際立つのがその大きさで、直径が30メートル前後という探査機が向かう天体としては史上最少の目標となります。
「Image Credit:直径約700mの小惑星リュウグウと比較した1998 KY26の大きさの違い(JAXAより)」
小惑星1998 KY26の反射スペクトルは「X型」。
これは主に金属質の天体に現れるスペクトル型ですが、水や炭素物質が含まれている可能性もあると言います。
そしてもうひとつの特徴が、1998 KY26は地球に衝突する可能性のある地球近傍小惑星であるという事。
1998 KY26は地球の軌道と交差する軌道を持っており、1998年には地球から約80万キロ(月までの距離の約2.1倍)という、ニアミスと言うべき距離まで接近した経緯があります。
「Image Credit:小惑星1998 KY26の軌道(AstroArtsより)」
地球と近い距離関係にある小惑星1998 KY26なのに、何故到着まで11年近くもかかるのでしょうか?
理由は、直接この小惑星に向かうのではなく、太陽の周りを約11周しつつ軌道や速度修正のフライバイを繰り返しながら、少しずつ目標の天体に接近していく方法を取っているからで、小惑星「リュウグウ」に向かう時も同じような航行法を取っていました。
また、航行途中でもうひとつの小惑星に接近する計画もあり、それはリュウグウより一回り小さい、(98943) 2001 CC21という小惑星にも2026年7月に接近し観測を行う予定とか・・・
新たな目標小惑星でどんな探査を行うのか?
2031年7月に小惑星1998 KY26到着予定の「はやぶさ2」。基本的な探査は上空から探査観測を行う予定ですが、もし可能であればリュウグウと同じように降下観測やタッチダウンも行う事を検討しているようですが、直径30メートルの大きさで自転速度が約10分という探査目標にどうやって降下するのか?リュウグウの時とは違い、非常に困難なミッションになる可能性があります。
ですが、この探査にはもう一つの意義があり、それは地球に被害を及ぼす危険性がある天体に接近して観測する事により、被害を回避する方法を研究する「プラネタリー・ディフェンス」にも役立つと考えられています。
また、はやぶさ2には小惑星1998 KY26に向かう途中では、宇宙望遠鏡としての任務も与えられており、NASAが発見した太陽系外惑星の追観測を行うと言います。
ただ、今は話題性の高い「はやぶさ2」ですが、10年という長い間で世間から忘れ去られてしまわないか?ちょっと心配でもあります。