観測技術の向上によって次々と見つかる太陽系外惑星。
その中でも特に注目を浴びるのが恒星(太陽)と惑星が適度な距離を保ち、水が蒸発も氷もせず液体の状態で存在出来るというハビタブルゾーンの範囲内で見つかる系外惑星たちです。
今回もまた、そのハビタブルゾーン内に惑星が見つかったとの事。しかも太陽系に比較的近い距離に2つも発見されたとの事です。
ハビタブルゾーン内に見つかった2つの太陽系外惑星
地球から見て「くじら座」方向約15.8光年の位置にある太陽系近傍に「GJ1002」という低質量M型矮星があります。このほど「GJ1002」を公転する惑星が2つ発見され、詳しい調査をしたところこの2つの惑星は地球と似たような質量を持ち、しかも2つともハビタブルゾーンに位置する軌道を持っている事が判明したそうです。
「Image Credit:Alejandro Suárez MascareñoおよびInés Bonet (IAC)」
この2つの惑星は、主星(太陽)に近い方が「GJ1002b」と呼ばれ、質量は地球の約1.08倍とほぼ地球と同じと言っても良いサイズの惑星です。
そしてもうひとつは「GJ1002c」と呼ばれ、質量は地球の約1.36倍と推定され少し地球より大きな天体のようです。
「Image Credit:Design: Alejandro Suárez Mascareño (IAC). Planets of the Solar System: NASA)」
上画像↑の「GJ1002b」と「GJ1002c」はもちろん想像図ですが、この2つの惑星は地球から比較的近い15.8光年の距離にある事から、惑星の反射光や熱放射を捉えることで大気の特性を分析できる可能性があるとして、今後の更なる詳しい調査が期待されています。
発見された2つの太陽系外惑星は赤色矮星を公転する惑星だった
近年は発見される太陽系外惑星の大半は、赤色矮星と呼ばれる太陽よりもかなり小さく低質量で低温の恒星系で見つかっており、今回の「GJ1002」もまた赤色矮星で太陽と比べて質量は約0.12倍・半径は約0.14倍と小さく、表面温度も摂氏約2,700度(太陽の表面温度は約6,000度)の恒星です。「Image Credit:Wikipedia」
そのため赤色矮星「GJ1002」のハビタブルゾーンは、惑星「GJ1002b」と主星「GJ1002」の距離は約0.0457天文単位(1天文単位は1億5,000万キロ)で、公転周期は約10.3465日。惑星「GJ1002c」は約0.0738天文単位で公転周期は約20.202日とかなり近い距離である事がわかっているため、今後の詳しい調査に期待はかかる一方で、いくらハビタブルゾーン圏内に地球に似た惑星が存在していても生命存在の可能性は低いとの声があるのも事実なのです。
赤色矮星を公転する惑星の2つの不安要素
惑星がハビタブルゾーン圏内にあって地球に似た質量を持っていたとしても、スグにそこに生命が居ると期待する事は早計であると言えます。その理由は、やはり主星(太陽)と惑星の距離が近過ぎるという事にあり、これが生命存在を脅かす原因となると考えられているのです。
有害な太陽フレアの影響を受けやすい?
赤色矮星は低温で低質量の恒星ですが、その多くは活動が活発であり表面では強力な爆発現象(太陽フレア)が起こりやすい事でも知られています。「Image Credit:S.Dagnello,NRAO/AUI/NSF」
つまり、近距離で太陽フレアを受けてしまう惑星は強力な爆風(太陽風)に晒されてしまい、いくらそこがハビタブルゾーン圏内にあったとしても生命が育つ環境が創られにくい可能性がると考えられているのです。
ただ、惑星が太陽フレアを防御出来る程の強力な磁場を持っていた場合は、惑星が守られ大気や水が安定的に存在し生命が育つ可能性もあり、また最近の研究によると、強力な太陽フレアは高緯度で発生する傾向があるともされており、これが事実ならフレアの影響が惑星にまで及びにくいという事にもなるかも知れません。
惑星に潮汐ロックがかかってしまう?
私たちが満月の月を眺めているとわかるように、月の模様は常に同じで変わる事はありません。つまりそれは、月はずっと同じ面を地球に向けているワケであり、その原因は一方の天体の重力が強い事による潮汐力の影響を受け、もう一方の重力の弱い天体側の重心が強い天体側に傾いてしまい、自転と公転の周期が等しくなってしまう状態になります。
「Image Credit:Wikipediaの図解を加工」
主星と惑星の距離が近ければ潮汐ロックが起こっている可能性があり、もし月と同じように惑星が熱源を持つ主星に常に同じ面を向けていたとしたならば、その面は永遠に熱せられ高温状態になり、反対側は永遠に暗闇となり極寒環境となっている可能性があります。すなわち、この状態の惑星がいくらハビタブルゾーン圏内にあったとしても生命にとっては過酷な環境となってしまう確率が高いのです。
そもそも赤色矮星ばかりに系外惑星が見つかるのか?
全てではないですが、多くの太陽系外惑星は赤色矮星の星系に見つかっています。その大きな理由は主星と惑星の距離が近い事によるモノで、つまり、近ければ惑星が主星の前を横切る確率も高くなり、近い事で惑星が主星の光を遮る光度も大きくなる事になります。
この現象を使って太陽系外惑星を観測・発見する手法をトランジット分光法と呼び、現在では主にこの手法を使って系外惑星の観測を行っている事から、おのずと赤色矮星の星系に惑星が見つかっているのです。
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ただ今回の赤色矮星「GJ1002」での惑星発見にはトランジット分光法だけでなく、「視線速度法(ドップラーシフト法)」と呼ばれる手法も使って発見されたそうです。
視線速度法(ドップラーシフト法)は、公転する惑星の重力によってわずかに主星が揺さぶられる動きを基に、間接的に惑星を検出すると言います。
それは、地球から見る時に、惑星が主星に近づいた時に青色っぽく、離れる時は赤色っぽく主星の色(波長)の変化が現れる事を観測する事で惑星の存在を検出すると言います。
この手法を使う事で、惑星の公転周期と最小質量を求める事が出来るとの事。
このように、この手法は赤色矮星の観測に適しており、太陽系のような主星と惑星の距離が離れていた場合では観測が難しくなかなか系外惑星発見は難しいと言います。