2022年は人類が初めて太陽系外惑星を発見してから30年になるそうです。
そんな区切りのイイ年に、既知の太陽系外惑星数が5000個を突破!それを記念してNASAはこれまで30年間の観測の歴史をまとめた動画を制作&公開しています。
今回はその動画をご紹介した上で、この太陽系外惑星の探査にどんな意味があるのか?
そして、5000個の中で地球に似た惑星はどれくらいあり、その中で生命が居る可能性のある惑星は存在するのか?等について調べてみたいと思います。
NASAが公開した『太陽系外惑星5000個突破記念動画』
人類が太陽系外に未知の惑星を探そうと試み、それが実を結び始めて発見されたのが1992年で、人類の長い宇宙観測の歴史において太陽系外惑星が発見されたのはつい最近の事です。そこから一気に発見に加速され、30年間で太陽系外惑星として確認された数は5,005個(2022年3月まで)にもなるそうです。
NASAはその30年間に見つかった系外惑星を全てを動画で紹介。
とは言っても、5005個の惑星を1つずつ紹介しているワケではなく、天球上における位置等を時系列準に凝縮して示す80秒程の長さの動画です。
とにかく、まずはその動画をご覧ください。
5,000個もの系外惑星をわずか80秒程の長さの動画で紹介しているワケですから、詳細な情報など全くわかるハズもありません。
そこで、この動画の見方を簡単に説明しますと。
- 背景~地球から見た天の川銀河
天の川銀河の中心方向に据えた全天の星空画像 - 次々と表示される点~太陽系外惑星の位置
地球から見た全天での太陽系外惑星の位置を1つずつ表示 - 大きさが違う点から広がる円(輪)~太陽系外惑星の公転軌道
相対的な太陽系外惑星の公転軌道の大きさ - 円(輪)の色~観測手法
どんな観測手法で発見したかを色で表示 - 音~公転周期の長さ
音が高い⇒高くなる程公転周期が長い
音が低い⇒低くなる程公転周期が短い
観測手法の進化で加速度的に発見される系外惑星
動画の見方の中で観測手法が色分けされて表示されていますが、これは発見される年代によって大きく変化しています。以下、時系列で系外惑星を発見した主な観測手法について解説します。
恒星の残骸で観測する「パルサータイミング法」
観測開始当初において、太陽系外惑星の探査はさほど確立されておらず観測精度も低いモノでした。そのため、1992年に史上初めて発見された系外惑星は、非常に強い電波を出すパルサー(中性子星の一種)「PSR B1257+12」で2つの惑星を発見し、さらに1994年にも同じパルサーで3個目を発見。
「Image Credit:パルサー「PSR B1257+12」(左上)を公転する系外惑星の想像図(NASA/JPL-Caltechより)」
この系外惑星を発見した手法は、パルサーによる電磁波のズレを利用して観測する「パルサータイミング法」という手法を用いており、なお、パルサーのような中性子星は重い恒星が超新星爆発を起こした跡に形成される言わば星の残骸のような天体です。
つまり、パルサーで発見された3つの惑星で生命が宿っている可能性は限りなくゼロに近いと言えます。
恒星の揺らぎで観測する「ドップラー分光法」
続いて使われた観測手法は「ドップラー分光法」。この手法を使う事によって、恒星の残骸ではなく”生きた恒星”での系外惑星の発見がされるようになります。
このドップラー分光法で初めて発見されたのが1995年。
地球からペガスス座方向約50光年先にあるペガスス座51番星bです。
「Image Credit:ペガスス座51番星bの想像図(ESO/M. Kornmesser/Nick Risinger (skysurvey.org)より)」
ドップラー分光法とは、公転する惑星の重力によって主星である恒星がわずかに揺さぶられる運動を捉えて、そこに惑星がある事を検出する方法です。
「Image Credit:惑星の重力で恒星が揺れ動くドップラー分光法のイメージ(Wikipediaより)」
ドップラー分光法によって系外惑星の発見が加速したのですが、この手法はあくまでも間接的に惑星を検出するモノであって、検出出来ても惑星の最小質量や公転周期等といった最低限の情報しかわからないといった欠点があります。
系外惑星の詳しいデータが取れる「トランジット法」
主に2010年以降に使われるようになったのが「トランジット法」という観測手法です。トランジット法は、主星(恒星)の手前を横切る惑星の影響で、恒星の光度が変化する光度曲線を観測する事で系外惑星を検出する方法です。
「Image Credit:トランジット法のイメージ(Wikipediaより)」
トランジット法を使う事によって系外惑星の質量や公転周期はもとより、惑星の大きさや大気の有無等といったより詳しいデータを得る事が可能になりました。
しかし、トランジット法にも欠点があり、惑星が主星(恒星)の手前を横切らないと検出出来ないという事と、光度の変化を観測するには、惑星が主星に近い距離を公転していないと検出が難しいという事があります。
よって、この観測手法は恒星と惑星の距離が近い、質量や小さい恒星(赤色矮星等)で主に使われるようです。
「Image Credit:赤色矮星に見つかった系外惑星のイメージ(Wikipediaより)」
発見された5000個の系外惑星の中に生命が宿る星はあるのか?
太陽系外惑星を探査する中で、最重要事項とも言えるのが系外惑星で地球のような惑星は存在するのか?ではないでしょうか。これまでの系外惑星探査30年の中で地球に似た大きさや質量、そして水が液体の状態で維持出来るハビタブルゾーンに位置する惑星は数十個ほど確認されています。
「Image Credit:高校資格.com」
上図↑のように、太陽系では唯一地球がハビタブルゾーンに位置しており、このおかげで生命溢れる惑星として繁栄しています。
地球と同じようにハビタブルゾーンに位置する系外惑星は見つかっても、現時点ではそこに生命が居るかどうかはわかっておらず、ハビタブルゾーンの惑星であったとしても必ずしも生命が居るとは限りません。
それは、惑星に生命が宿るには様々な厳しい条件があり、また人類のような知的生命体が存在する条件もさらに厳しくなって来ます。
5,000個以上見つかった系外惑星ですが今後は詳しい調査が行われ、そう遠くない将来、新たな情報が私たちのもとに届く事でしょう。
さらに加速する太陽系外惑星探査に期待大!
これまで地上からの観測やハッブル宇宙望遠鏡、ケプラー宇宙望遠鏡等といった観測機器で系外惑星探査が行われ、5,000個以上の天体が見つかって来ました。また現在も系外惑星を専門に行う宇宙望遠鏡「TESS」も運用中です。
「Image Credit:NASA」
TESSは全天を網羅した観測を行っており次々に新しい系外惑星を発見してくれており、さらに、NASAが100億ドル(約1兆1,500億円)相当を費用をつぎ込み、天文学に革命を起こすかもと大きな期待を背負っている超高性能なジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)。
「Image Credit:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(NASAより)」
JWSTには系外惑星の詳細な分析が期待されていて、これも近いうちにセンセーショナルな発見をもたらしてくれる事でしょう。
そして今後も新たな系外惑星探査が計画されており、2027年には最新の宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン」が打ち上げられる予定です。
「Image Credit:NASA」
ナンシー・グレース・ローマンは、重力マイクロレンジングと呼ばれる観測手法を使い、高い精度でより広い全天の星々を観測し系外惑星を探査する予定になっています。
他にも、今後次々と新たな観測技術が用いられ宇宙に目が向けられて行き、これらの観測でもしかしたら数十年後、いや数年後には系外惑星探査に画期的な成果が見られる可能性は大きいかも知れません。