2020年に発生したコロナショックにより世界中が経済的大打撃を受ける中、2024年に再び有人月面着陸を目指すNASAの「アルテミス計画」も計画延長のウワサも流れていましたが、どうやら計画は順調に進んでいるようです。
そんな中NASAは、民間企業がプレゼンした月着陸船のモデルを3社に選定。
前回の有人月面着陸から50年。月に行く最新の宇宙船はスゴイことになっているようです。

Sponsored Link

まずはおさらいしておこう!50年前の月着陸船

アメリカが1960年代から70年代前半にかけて実施した有人月面着陸計画「アポロ計画」ですが、当初の計画でのアポロ計画では、有人の宇宙船を月まで飛ばし月軌道を周回させる事が目的でした。
しかし、当時アメリカは旧ソ連と冷戦状態で、大国同士のライバル関係が熾烈を極めており、そのライバルでもある旧ソ連がアメリカより宇宙進出を一歩リードしていた事もあり、これを危惧したアメリカ政府は1961年のケネディ大統領(当時)の演説で10年以内に人間を月に着陸させ、安全に地球に帰還させる。と宣言した事から計画が大きく変更する事になります。
それは、月軌道を周回するだけではなく月面に有人宇宙船着陸を成功させるという、当時の技術力ではとてつもなく困難計画へと移行する事になりました。

そこで急遽開発が行われる事になった月着陸船。

「Image Credit:アポロ16号の月着陸船・オリオン(Wikipediaより)」
グラマン社製のアポロ月着陸船の乗員は2名で総重量は14,696キロ、最大高は約7メートル。
上昇段と下降段の2段構造となっており、月面に着陸する時は下降段のロケット噴射でゆっくりと下降しながら着陸。月面を離脱する時は下降段を発射台にし、上昇段のロケット噴射で司令船の待つ軌道まで上昇しドッキングするという性能を持っていましたが、当時の状況が状況だっただけに開発はかなり遅れアポロ計画の進行に支障を来しましたが、それでも性能は高く計画に影響を与えるようなトラブルも無く、信頼性の高い機体だったようです。

【月面から離脱するアポロ17号】


「Copyright ©:Smithsonian National Air and Space Museum All rights reserved.」
また、アポロ15~17号まで使用された月着陸船では大幅な改造が行われ、下降用エンジンのパワーアップと燃料タンクの増量に加え、月面車(Lunar rover)も搭載できる仕様になり、さらには月面に最大3日間滞在出来るようになり見事にその役目を果しています。

「Image Credit:アポロ月着陸船に積み込まれ活動した月面車(NASAより)」
これだけの技術を必要とする月着陸船には、精密なコンピュータ制御を必要とするハズですが、しかしこの時代、最高水準のコンピュータは今の家庭用ゲーム機程度の性能しかありませんでした。
そのような技術しかない時代に38万キロも離れた月に行き、無事に着陸を成功させ地球に戻って来られたというのは、まさに命がけの挑戦ですし奇跡だったのかも知れません。
Sponsored Link

NASAが選んだ民間3社の月着陸船

前回の月面着陸から半世紀以上の月日が流れ技術も相当進歩しており、そんな中で行われるNASAの有人月面探査「アルテミス計画」。
この計画で用いられるのが「有人着陸システム(HLS:Human Landing System)」です。
そこでNASAが月着陸船の開発を選定したのが民間企業(スペースX・ブルー・オリジン・ダイネティクス)の3社でした。

これらの3社が提案している月着陸船は、いずれもNASAが開発している宇宙船・オリオンと月軌道上に建造される予定になっている宇宙ステーション「月軌道プラットフォームゲートウェイ」の双方にドッキング出来るよう設計されるとの事で汎用性の高い着陸船になる事が予想されます。

「Image Credit:オリオン宇宙船想像図(NASA Mars Exploration)」

スペースX社の有人月着陸船「スターシップ」

まず1社目のスペースX社。
スペースXは、世界で最も知られた民間宇宙ベンチャーといっても過言ではない会社であり、創始者のイーロン・マスク氏も世界的に有名な起業家でもあります。
またスペースXが開発した再利用可能なロケットや宇宙船は他社を一歩リードしており、月面だけではなく火星有人飛行までも視野に入れた計画も独自で進行しています。
そんなスペースXが提案している月着陸船が「スターシップ」。

「Image Credit:月着陸船スターシップの想像図(SpaceXより)」
上図は打ち上げ後単独で月面に着陸できるスターシップの想像図ですが、NASAに提案している着陸船はオリオン宇宙船にドッキングするタイプのスターシップですので、実際はアポロ月着陸船に近い形状になるのでは?とされており、宇宙飛行士が滞在するキャビンや貨物搭載量を増加させ、今後の月面基地にも対応できる運用を目的する着陸船を計画しているとの事です。

ブルー・オリジン社の統合型着陸機(ILV)

2社目がロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、ドレイパーの3社と協力してブルー・オリジンが開発を手掛ける「ILV(Integrated Lander Vehicle、統合型着陸機)」。
ILVは50年前の月着陸船の構造と似ており、上昇モジュールと下降モジュールに加え、この2つのモジュールを着陸に備えた軌道に乗せるための「トランスファーモジュール」の3つのモジュールで構成されており、また、この着陸船は既に運用されている国際宇宙ステーション(ISS)の補給船をベースに開発され低コスト化も目指して提案されています。

「Image Credit:ILV(統合型着陸機)の想像図(Blue Originより)」

ダイネティクスの月着陸船「Dynetics HLS」

最後の1社はダイネティクス。
ダイネティクスは宇宙ビジネスを展開する企業25社以上が参加する大規模なチーム。
ダイネティクスが提案する月着陸船の名前は「Dynetics HLS」。
この着陸船は単体で月面に着陸出来、公開されているコンセプト動画によると、使い捨てのドロップタンクを最初から装着した状態で一度に打ち上げることが出来るようになっており、また構造はエンジンがクルーキャビンの左右に配置されているため月面との高低差が低く、乗り降りの負担が少ないことも特徴となっています。
さらには、今後における燃料補給のために再使用も出来るよう設計されるとの事です。

「Image Credit:ダイネティクス主導で開発中の「Dynetics HLS」の想像図(Dyneticsより)」

月着陸船開発を含む今後の計画

民間宇宙ベンチャーが競合する有人着陸システム(HLS:Human Landing System)は、次世代宇宙探査技術パートナーシップ:Next Space Technologies for Exploration Partnerships (NextSTEP-2) の下で授与され契約総額は9億6,700万ドル。
選ばれた3社は2021年2月までにコンセプトを練り上げ発表するとの事。
この中からNASAは初期の実証ミッションをさせるかを評価し着陸船の採用を決定する予定との事です。
そしてギリシャ神話の女神・アルテミスの名前にあるように、女性宇宙飛行士も含めたクルーを2024年までに月面に送るミッションを遂行する計画で進めているといいます。
Sponsored Link