宇宙ビジネス創世記とも言える2010年代。民間が次々に宇宙事業に参入し新しいアイデアや設備技術も続々登場しています。
ここでご紹介するのは、そんな民間組織である宇宙ベンチャー企業がビジネスの一環で生み出した画期的な設備「宇宙ホテル」構想。
これに伴い、先日、宇宙ホテルの試験機が打ち上げられ国際宇宙ステーション(ISS)に設置され話題を呼んでいます。
一般人も滞在出来る「宇宙ホテル」とは?
2000年代になってから、堀江貴文氏ら日本の起業家も参入して来る宇宙ビジネス。宇宙ビジネスはこれまで国家レベルでしか入り込めなかった領域でしたが、近年では次々に宇宙ベンチャーが立ち上がり宇宙に進出しようとしています。
そんな宇宙ベンチャーの1つであるアメリカの「ビゲロー・エアロスペース社」が世界で初めて開発に成功し、実用化目前にしているのが通称「宇宙ホテル」とも呼ばれる「ビゲロー膨張式活動モジュール(略称:BEAM)」。
「Image Credit:sorae.jp」
このBEAMは膨張式になっており、宇宙空間で中に空気を入れることで大きく膨らみ、人が入って活動出来る空間を作り出すという画期的なモノです。
従来の宇宙ステーションなどの建造物は部品を何段階かに分けて打ち上げ宇宙空間で組み立てるという方式を使っていましたが、 BEAMの場合は打ち上げ時は縮んでいるので輸送回数を圧倒的に減らすことが可能となります。
このように膨らますことで、これまで以上に広い宇宙での居住空間を作り出すことも出来るようになり、これを応用すれば民間人を滞在させる「宇宙ホテル」の実現も可能になり、ビゲロー社もそれを目指しているようです。
宇宙ホテルの強度や安全性は?
BEAMは言わば宇宙で膨らます風船のようなモノで、気圧の無い宇宙では少し空気を注入するだけで簡単に膨張し大きく膨らませることが出来るようになります。ただ気になるのは膨らませることによって強度は保持出来るのか?
また宇宙空間での強烈な温度差や放射線などの対策、そして宇宙デブリなどの衝突に耐えられるのか?についてですが、設計ではそのようなことを想定して、耐熱、放射線防御、強度維持の素材を使って造られており万全との事です。
もちろん、まだ試作段階なのでこれからの実験で強度や安全性が試されて行きますが、これが完成し運用されるようになれば人類の宇宙開発は大きく前進することは間違いないでしょう。
無重力での居住空間は意外に広かった
将来的にはホテルとして活用する構想があるBEAM。そうなると、大人数を収容する大空間の設備が必要となります。そんな空間を作るとなると、例えば、国際宇宙ステーション(ISS)のように、いくつものモジュールを連結して居住空間を広げる方法もあり、BEAMも連結して空間を広げる方法を採用するかと思います。
「Image Credit:ZAPZAP!」
しかし、一見するといくら連結してもホテルとしてはいささか窮屈な気もしますが、そこは場所が無重力空間(微重力空間)であり、重力が無いと地上のように上下の感覚が無くなるワケで、床も天井も壁も無く全てが同じ空間で、四方が自由に活用出来ることになり狭い場所でも地上と比べれば4倍空間を広くを活用出来ることになるのです。
とは言っても、やはり閉鎖された空間ではありますので、もし民間人が宇宙に滞在出来る時代が実現した場合、閉鎖空間でのストレスを極力感じない快適性を、お客様にどう提供するのかが今後の課題になりそうです。