数年~十数年に1度実施されると言われる宇宙飛行士募集。
最近ではその熱も高まり、アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士候補生の募集に応募が殺到しているほどの人気だと言います。
日本でもまた、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が募集する宇宙飛行士の公募もかなり人気だとか?
しかし、いくら人気でもそう簡単に宇宙飛行士になれるワケではないようです。
ここではどうすれば宇宙飛行士になれるのか?資格や条件等について少し調べてみました。
※ 補足事項:JAXAの宇宙飛行士募集については、2021年に大幅改正し、かなり緩和されるようになりました。
宇宙飛行士応募が増えた理由
NASAが実施する宇宙飛行士公募は、約5年に一回とされていましたが、前回の2008年以降は募集がなく、ようやく13年ぶりの2021年に募集が開始されました。ただ、宇宙飛行士になるにはかなり狭き門をくぐる必要があります。にも関わらず「宇宙飛行士になりたい!」と希望する人は増え続けていると言います。
でも何故、宇宙飛行士になりたいという人が増えたのか?そのひとつは、宇宙を舞台にしたSF映画やアニメ等に影響を受けた人が多いという事もあるかも知れません。
ですが、実際に宇宙に行くには、学歴や専門知識、語学力等、高度な能力を持つ限られた人物しか許されなかったという事もあり、また命を懸けた危険な職業というイメージもあったため、宇宙飛行士になりたい!という夢はあっても、諦めざるを得なかったという背景もあったように思えます。
例えば、危険な職業というイメージの一因になっているのが、スペースシャトルが運用されていた時代が記憶に新しいかと思います。
スペースシャトル時代は、主に地球の低衛星軌道上でのミッションで、月や外宇宙に行くミッションがありませんでした。
また、スペースシャトルは事故やトラブルも多かったため、宇宙飛行士になりたいと思っていても、不安感で応募することを躊躇していた人が多かったという見方もあります。
「Image Credit:Wikipedia」
しかし、シャトル計画の教訓から安全性が見直され、より安全な宇宙船をNASAが開発中ということもあり、宇宙へ飛び出すことの安心感が高まったと言う事も、応募が急増した一因なっていることも考えられ、また、今後予定されている人類が再び月面に立つ月面基地計画や、2030年代の実現に向けて動き出している有人火星探査等は、これからの人類の本格的な宇宙進出に期待を寄せている人達の心を揺さぶる要因となって、宇宙飛行士になりたい!という応募者が増えたという事ももうひとつの要因ではないかとも考えられます。
「Image Credit:21世紀の有人月面探査・アルテミス計画のコンセプトアート(NASAより)」
宇宙が身近になりつあるのも宇宙飛行士応募が増えた要因
20世紀後半のアポロ計画やシャトル計画時代は、宇宙飛行士なんて危険で選ばれし限られた人間しかなれない時代でした。しかし21世紀に入り、これまで国家事業だった宇宙開発が、民間企業がビジネス目的で次々と参入して来た事で大きく様変わりして来ました。
これにより、ロケットや宇宙船の開発も加速し、旧世紀では信じられないくらいに技術が進歩して来た事で、宇宙に行く事が夢ではなくなりつつある時代背景もあるようです。
◆ 民間会社「SPACE X」による宇宙開発のアピール動画
JAXAの宇宙飛行士応募も漫画効果で増加?
日本も宇宙飛行士を不定期で募集していますが、しかし、日本はNASAほど募集回数は多くなく前回募集が行われたのが2008年。この時宇宙飛行士に選ばれたのが、油井亀美也氏、大西卓哉氏、金井宣茂氏の3名です。
それ以降はまだ募集が行われておらず(2020年現在)。そのような意味では、日本人が宇宙飛行士に選ばれるのはNASAより狭き門かも知れません。
そんな狭き門でも、最近は特に漫画の影響もあり宇宙飛行士になりたいという人達が増えてきていると言います。
その漫画というのが、アニメ化や映画化もされた大ヒットコミック「宇宙兄弟」だと言うのです。
「宇宙兄弟」の概要は、ごく普通の中流家庭で育った兄弟が、子供の頃に夢見た宇宙飛行士になるため努力を重ね、夢を叶えて行くというサクセスストーリーです。
「Image Credit:講談社コミック・モーニング「宇宙兄弟」より」
何より宇宙兄弟では、実際のJAXAの宇宙飛行士候補生募集の試験内容や、候補生に選ばれた後のNASAでの訓練をリアルに伝えているため、宇宙飛行士になるにはどうすれば良いのか?そして宇宙飛行士になった後の厳しさもわかりやすく描かれていて、それが多くの読者を惹きつけ、そんな中から自分も宇宙飛行士になりたいと夢を抱く人も増えているとの事のようです。
実際に宇宙飛行士になるための条件(旧)
日本もNASAも、宇宙飛行士になるためには、おおまかに言うと優秀な人物である事が条件で、そして、厳しい応募条件をクリアし宇宙飛行士に選ばれるのは、数万人の応募者の中からわずか数名だと言います。そんな厳しい条件で選ばれるには、まずは書類審査でこれをパスした応募者は二次試験として、英語試験、一般教養、自然科学等の筆記試験受けた後、面接試験、精神・心理学的な検査等を行い、これらを総合的な評価によって宇宙飛行士候補者が選ばれるとの事ですが、宇宙兄弟ではその先の三次試験までありましたが、実際はどうなのかは不明です。
また応募における条件としては、
- 大卒以上(理学部、工学部、医学部、歯学部、薬学部、農学部等の自然科学系の学科卒業)
- 自然科学の分野での実務経験が3年以上
- 宇宙飛行士としての訓練を柔軟に対応できるか
- 英語力があること(ロシア語も話せた方が良いとの事も)
- 心身ともに健康
- 協調性、長期的な業務に従事できること
また、宇宙船等の閉鎖空間や高高度で活動するため、当然ながら閉所が苦手な人や高所恐怖症の人も除外させるらしいです。
多くの宇宙飛行士希望者の夢が開かれた新しい応募要項
前記したように、宇宙飛行士になるにはかなり厳しい条件が課されており、狭き門で簡単には夢が叶う職業ではありません。しかし、2021年度の宇宙飛行士選抜試験では応募資格が大幅に緩和され、本気で宇宙飛行士になりたい人なら誰でも応募できる内容になっています。
そんな新しいJAXA宇宙飛行士の基本的応募要項がコレ↓です。
- 身長:149.5~190.5㎝
- 視力:遠距離視力 両眼ともに矯正視力1.0以上
- 色覚:石原式による正常値
- 聴力:背後2mの距離で普通の会話が可能
「Image Credit:JAXA宇宙航空研究開発機構」
これにより、宇宙飛行士への道が大きく開けたワケで応募者も殺到するか?と思ったのですが、それが意外と少なく2021年度の応募総数は4,127名だそうです。
宇宙飛行士になりたい!という希望者が増えている中、何故これだけの応募数だったのか?はわかりませんが、それでも10代~60代以上まで幅広い人の応募があったそうです。
しかし、門戸は開かれたと言っても本番はこれからです。
2021年の一次試験(書類選考)合格者は4,127名のうち2,266名で、約半数が涙をのみましたが、二次試験以降の今後は、一般教養や英語等、かなり難しい試験が待ち受けているでしょう。
そして、最終的に宇宙飛行士になれるのは数名程度。
JAXAは「学問不問」という一次試験の門戸は広げましたが、結局は優秀な学力が必要な事は確かのようです。
それでも、これまで宇宙飛行士になる事を諦めていた人も応募する勇気が出たワケで、もしかしたらJAXAも「宇宙兄弟」の影響を受けてこのような応募条件を出したのかも知れませんね。