ハワイのマウイ島に完成した世界最大の太陽望遠鏡が、その最新鋭の性能を見せつけるべく史上最高解像度の太陽表面を捉えた画像を公開して話題になっています。
公開された太陽表面はとても鮮明で、まるですぐそこに太陽があるように思える程の解像度で驚きで、と同時に、私たちの母なる太陽がいかに大きな存在である事も思い知らされる素晴らしい画像でもあります。
今回は、この最新の太陽表面画像の紹介と太陽とはどれくらい大きな存在なのか?について少し解説してみたいと思います。
世界最大の新型太陽望遠鏡が撮影した驚愕の太陽表面画像&動画
約3億5,000万ドルの巨費を投じ、ハワイ・マウイ島のハレアカラ山標高約3,000メートル地点に建設された新型の太陽観測望遠鏡「ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡」が完成。この望遠鏡は、アメリカ国立科学財団が建設したモノで太陽望遠鏡としては世界最大の規模を誇り、「ダニエル・K・イノウエ」という名前の由来はハワイ州出身で日系アメリカ人初の連邦上院議員だったダニエル・K・イノウエ氏から来ているそうです。
最新鋭のダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡は100キロ先に置かれたコインを見分ける事が出来るほどの性能を持っているといい、その高性能を活かして撮影された太陽表面の画像がこれ↓↓です。
「Image Credit:米国立太陽天文台」
この画像は太陽表面の3万6,500キロ四方の範囲(太陽表面の約38分の1)を撮影したモノで、表面をびっしりと覆う粒模様「粒状斑」の一つ一つの幅は1,000キロほどもあり、これを地球の地形に例えるならアメリカ・テキサス州に匹敵する程の大きさがあると言います。
ちなみに、全米2位の広さを誇るテキサス州の面積は日本列島の約2倍の695,700平方キロメートルありますので、この粒状斑一つに日本列島が2つスッポリ入ってしまう事になるワケです。
また粒状斑は常に対流しており、高温(約6,000度)のプラズマガスが上昇してくる部分は明るく、沈み込んでいく部分は暗く見えておりその様子がわかる動画も公開されています。
粒状班の寿命は約10分程度で、次々に新しい粒状班が現れては消えを繰り返す対流を起こしており太陽の表面全体を覆っています。
想像を絶する太陽の巨大さに驚愕!
私たちが住む太陽系において、その中心に座する太陽は絶対的で巨大な存在であり、単純にその巨大さがわかるのは私たちの頭上で燦燦と輝く太陽の大きさではないでしょうか?何故なら、太陽は地球から約1億5,000万キロも離れているのにも関わらず、あれだけ大きくそして明るく輝いているのがその巨大さを表す何よりの証拠であり、そんな太陽は直径にして約140万キロで、地球の直径の109倍にもなる大きさがあり質量に至っては約33.3万倍にもなります。
「Image Credit:Planet Comopare」
地球と比べたら太陽の大きさや質量も桁違いなのですが、もっと桁違いなのが太陽系全質量を占める太陽の割合が何と99.85%もある事であり、それはつまり、太陽は太陽系のほぼ全てを占めている事であり、地球や木星等を含む太陽系天体全ては全質量の0.15%にも満たないという事になるのです。
太陽のうんちく~その1「太陽は何故”燃えている?”」
「熱く燃えている太陽」等と燦燦と輝く太陽の例えとして良く言われたりしますが、厳密に言うと太陽が”燃えている”というのは燃焼反応ではなく、太陽中心部で起こる熱核融合反応によってエネルギー変換が行われている事で”燃えている”ように見えているのです。太陽系のほとんどを占める凄まじい質量を持つ太陽は、その自重によって中心部は超高圧(約2,500億気圧)で超高温(約1,600万度)になっていると考えられており、その超高温・高圧の状況で生じるのが水素原子が融合する熱核融合反応です。
太陽中心部では水素が核融合を起こしヘリウムを生成し、毎秒約430万トンもの重量を減らす事で生じる膨大エネルギーが熱や光等に変換されており、また、太陽が星として球状を保っている理由は、核融合によって膨張しようとする力と、自重によって収縮しようとしようとする力が絶妙に釣り合う事でバランスが保たれているのです。
「Image Credit:恒星の重力バランスのイメージ(YouTubeより)」
なお、太陽中心部で起こる核融合で造られるエネルギー量は、わずか1gの水素から20tの石炭を燃やすのと同等の莫大なエネルギー量に相当していると言います。
太陽のうんちく~その2「永い年月を経て地球に届く太陽エネルギー」
核融合によって造られる熱や光等の太陽エネルギーは直ぐに地球に届くと思われるかも知れませんが、実は地球に届くまでは気の遠くなる年月が必要となり、明確にはわかっていませんが時間にして数万年~数十万年かかるとされており、つまり、私たちが今浴びている太陽の光と熱は数万年~数十万年前の遠い昔に造られたエネルギーと言えるのです。ですが何故、太陽エネルギーが届くまでそんなに時間がかかるのでしょうか?
その原因とされるのが太陽内部にかかる凄まじい重力による密度と圧力によるモノで、あまりにも高密度の太陽内部の物質と重力がエネルギー放射の障害となる事で、エネルギーは少しずつしか太陽表面に向かって進む事が出来ない事で膨大な時間を経て太陽表面に出て来ると考えられており、そしてようやく太陽表面まで到達したエネルギーのその後の伝達速度は速く、地球までの距離約1億5,000万キロは光の速さで8分20秒で到達します。
しかし、そんな太陽から地球が得られるエネルギー量は太陽が放出する全エネルギーの20億分の1程しかなく、しかも、そこから地表に届くエネルギーは50%ほどで、残りは大気に吸収されるか反射等で宇宙に放出されてしまいます。
「Image Credit:Wikipedia」
太陽のうんちく~その3「緯度によって違う自転速度」
太陽も地球と同じように自転をしており、ほぼ球体の形状をしている太陽ですが地球のような固体ではなくガスで構成された流体の天体のため、緯度によって自転速度に差異が生じてしまいます。これを差動回転(微分回転)と呼び、赤道付近の自転速度は1周約25日に対して極付近では約35日と10日も自転速度に差があります。「Image Credit:NASA」
太陽のうんちく~その4「太陽も公転している」
太陽系の中心にある太陽は、私たちから見れば宇宙の中心にある絶対的な存在のようにも思えます。しかし、銀河系(天の川銀河)の中での太陽は2,000億個以上ある星(恒星)の一つに過ぎず、さらに太陽は銀河の中を移動(公転)しており、銀河の中心から太陽までは約2万6,000光年で、時速約864,000キロ(秒速240キロ)という速度で2億年~2億5,000万年かけて一周しています。
「Image Credit:国立天文台」
つまり、恐竜が繁栄していた時代から今日までまだ銀河を1周していない事になるワケで、それだけ気の遠くなるような年月をかけて太陽は公転している事になるのです。
太陽のうんちく~その5「太陽の寿命はあと何億年?」
星の内部で水素原子核4つからヘリウム原子核1つが造られている熱核融合反応による膨張と重力による収縮と圧力が釣り合った静水圧平衡状態にあり、この安定した恒星の事を主系列星と呼び太陽は今その状態にありますが、そんな安定した状態も永遠に続くわけではなく、いずれは終わりを迎えてしまい太陽もあと50億年ほどで寿命が尽きると考えられています。現在の太陽年齢は46億歳ほどだと考えられており、全寿命の半分程を消化しているモノとみられています。
主系列星時代に水素からヘリウムに変換し、中心核付近にヘリウムを溜め込んだ太陽は、次にヘリウムが核融合反応を起こし始めます。
この時から、太陽は赤色巨星フェイズに移行し、表面温度が低下し(2,000~3,000℃)赤く巨大な星へと変貌して行きます。
赤色巨星となった太陽は半径1億キロまで膨張し、おそらくは金星の公転軌道に迫るほど巨大化すると思われますが、このとき地球はどうなるのでしょうか?
残念なながら太陽が赤色巨星フェイズに入る遥か前に、地球は生命が住める環境では無くなりおそらくは不毛の地になっている事が考えられ、諸説はありますが、赤色巨星フェイズ移行した太陽の引力は弱まり地球の公転軌道は後退し、地球が赤色巨星の太陽に飲み込まれる事は無いと思われ、同時にこれまで太陽の一部だった外層のガス等も引力の弱まりとともに宇宙へ拡散して行きます。
この状態になった太陽は惑星状星雲になりさらに中心部の圧力が低下し、ついには核融合反応が停止してしまいます。
「Image Credit:惑星状星雲(Wikipediaより)」
そして中心部には、外層部を剥ぎ取られ残った芯が白色矮星になると考えられています。
白色矮星の大きさは地球ほどですが、しかし重力は空間を歪めるほど凄まじく大きく表面温度5万~10万度の天体が形成され、さらに宇宙空間に散らばったガスは永い時間をかけてまた集まり、新たな恒星系を形成して行くものと思われ、宇宙でも生から死そしてまた生と受け継がれるサイクルが繰り返されて行きます。
太陽のうんちく~その6「太陽の最終フェイズは黒色矮星?」
太陽の末路は、赤色巨星から白色矮星へそして最終段階に進むと黒色矮星になると考えられており、黒色矮星とは簡単に言うと恒星の”燃えカス”である白色矮星が冷えてしまった天体の事で、内部での熱核融合反応が停止した状態の白色矮星には熱源が無いため少しずつ冷えて行き、熱とそれに伴う光も失って行きますので黒く変色した星が出現します。それが黒色矮星です。「Image Credit:星の進化過程(Wikipediaより)」
しかし、白色矮星が黒色矮星に変化するには数百億年もの時間がかかるとされているため、宇宙誕生から約137億年の時間経過の間にはまだ黒色矮星は存在していない事になります。
つまり、黒色矮星はまだ誰も見た事がないわけで、現段階では理論上の天体という事になります。