太陽系に一番近い恒星は約4.2光年離れたプロキシマ・ケンタウリですが、過去にはそれよりも遥かに近い場所に恒星が存在したらしいのです。
それは「ショルツ星」と呼ばれる恒星で、あまり聞き馴染みのない名前の星ですが、実はこの星、今から7万年前に太陽系に異常接近したそうなんです。
太陽系の中まで入り込んで来た?!恒星・ショルツ星
ショルツ星は、太陽系から「いっかくじゅう座」の方向に約20光年離れた場所にある赤色矮星と褐色矮星から成る連星系で、大きさは2つの連星を合わせても太陽質量の15%ほどしかない小さな恒星系です。「Image Credit:連星ショルツ星のイメージ図(Michael Osadciw/University of Rochester)」
そのため肉眼で確認する事は不可能ですが、今から7万年前は肉眼でも大きくハッキリと見えたとの事で、このシュルツ星は、史上最も太陽に接近した恒星だという事が最近の研究で明らかになり、距離にして最接近時が0.8光年(約7.6兆キロ)だったと想定されています。
なお、この0.8光年という距離は、太陽系の最外縁部に存在されるとされるオールトの雲の領域に該当すると言い、つまり、ショルツ星は7万年前に太陽系の中まで入り込んで来たという事になります。
ちなみに7万年前と言えば、人類の始祖・現生人類が繁栄し出した頃で、今の人類にかなり近い原始人が生活していた頃になります。
ショルツ星接近で何が起きた?
太陽系外縁部をかすめる距離まで接近したとされるショルツ星は、太陽に比べると遥かに小さな恒星ですが、最接近時にはマイナス10等級程までに大きく明るく輝いていたとの事で、金星の最大光度がマイナス4.6等級ですので、最接近時のショルツ星は金星の倍ほど明るかったと推定されています。「Image Credit:José A. Peñas/SINC」
しかし、ショルツ星が太陽に最接近した時の距離はオールトの雲の領域で、いわゆる太陽系の中だったと考えられます。
オールトの雲は、彗星の故郷とも呼ばれており、彗星のような氷で出来た小さな小天体が数兆個単位で存在すると考えられ、小さいとは言えショルツ星のような強い重力を持った天体が侵入して来た事で、オールトの雲の中の小天体の軌道が大きく乱されてしまった可能性があるようです。
「Image Credit:国立天文台 天文情報センター」
ショルツ星によって軌道が乱されてしまった小天体の一部は、太陽の引力に引かれて太陽系の内部に落ち込んで行った可能性もあり、軌道を外れた小天体たちは彗星となり地球に飛来し、彗星の嵐が襲い地球は壊滅的なダメージを受けてしまう危険性がありますが、現時点でその事実は確認されていませんが、地球からオールトの雲までの距離は相当ありますので、事実だったとしても、その時に軌道がズレてしまった彗星が地球に到達するまでは、少なくとも数十万年以上の年月がかかると推定されていますが、もしかしたらそれよりも早い段階で彗星の嵐が地球に襲って来る可能性も否定する事は出来ないかも知れません。
次に太陽系に接近して来る恒星はある?
地球が太陽の周りを周回しているように太陽もまた銀河の中を周回し、他の恒星たちも周回しています。このように常に動いている星々は、接近及び離脱を繰り返しており、もちろん、20光年も離れてしまったショルツ星が再び太陽に接近する事はありませんが、今後は別の恒星が接近する可能性は大いにあります。
そして次に太陽に接近する可能性があると示唆されている恒星は「グリーゼ710」。
現在グリーゼ710は、へび座方向に約62光年と離れており距離からして近い将来太陽系に接近する事は考えられませんが、少しずつ太陽系に接近している事は事実で、今から135万年後には太陽から0.25光年の距離まで接近するとの予測が出ています。
しかも、グリーゼ710はショルツ星よりも遥かに大きく太陽の0.6倍程度の質量を持つK型主系列星です。
「Image Credit:Wikipedia」
こうなると、流石に太陽系が受ける影響はかなり大きい事が考えられます。
オールトの雲の小天体群の軌道が乱される事はもちろんの事。その内側にあるエッジワース・カイパーベルトの小天体群の軌道も乱され、太陽系内が混乱する事は必至?
但し、時は135万年後の遠い未来。この時に人類が存続しているかどうかは疑問が残りますし、存続していたとしても何らかの進化をしている事でしょう。