前回、「宇宙で最も美しい銀河」として個人的に選んでご紹介しましたが、今回は「宇宙で美しい星雲」をいくつか選んでご紹介したいと思います。
星雲は銀河に負けず劣らず美しく、尚且つ幻想的にも見え、中には市販の天体望遠鏡でも観測出来ますので、是非、参考にしてみてはいかがでしょうか。
星雲は宇宙空間に漂うガスや塵で出来た塊
前回の「銀河編」でも解説しましたが、星雲は宇宙空間にガスや塵といった物質が大量に集まった密度の高い場所(塊)をひとつの天体として呼び、大きさも数光年~数十光年と様々です。また、星雲も銀河と同じようにいくつかの種類があり、それらは星雲が形成される過程や地球からの見え方で分類されています。
◆ 星雲の種類
- 散光星雲:不規則な形状をしているのが特徴で、その中では誕生した星々が輝いて見えるとても美しい星雲です。
- 暗黒星雲:星(恒星)は誕生する前に重力収縮をして密度が高くなった事により、光を遮ってしまい暗黒のように見える星雲です。
- 惑星状星雲:恒星が進化の最終段階を迎え、惑星のように見える星雲です。
- 輝線星雲:大質量の天体による電離ガスが光を放つ(HII領域)星雲です。
以上、この事を踏まえて個人的に厳選した神秘的で美しい星雲をご紹介します。
なお、ご紹介する星雲の中には肉眼、または市販の双眼鏡や天体望遠鏡で見える天体もありますので合わせてご紹介します。
巨大な天使をイメージ?「イータ・カリーナ星雲(ミスティック・マウンテン)」
まず最初にご紹介するのが散光星雲として分類される「イータ・カリーナ星雲」です。イータ・カリーナ星雲は、地球から「りゅうこつ座」方向約6,500光年先に位置しており、非常に明るく肉眼でも観測出来る星雲です。しかしながらイータ・カリーナ星雲がある「りゅうこつ座」は南天の空で見られる星座のため北半球の日本では見る事が出来ません。
また、イータ・カリーナ星雲の一角には「ミスティック・マウンテン」と呼ばれる有名な領域が存在しています。
「Image Credit:「イータ・カリーナ星雲」(Wikipediaより)」
ミスティック・マウンテンの大きさ(ガスや塵で出来た柱の長さ)は約3光年に達すると見られ、この中では誕生したばかりの原始恒星が存在し、柱から伸びる筋のようなモノは原始恒星から放出されているジェットだと考えられています。
「Image Credit:「ミスティック・マウンテン」(ubble,NASA,ESAより)」
なお、この星雲の一角には「イータ・カリーナ星」という晩年を迎えた太陽質量の100倍以上の大質量星同士の連星が存在しており、この星はそう遠くない将来超新星爆発を起こすとされ、爆発を起こした後はブラックホールになると考えられています。
そそり立つ壮麗な「創造の柱」を有する「わし星雲」
「わし星雲」は地球から「へびつかい座」方向約6,500光年先にある散開星団と散光星雲が複合した天体です。「Image Credit:Wikipedia」
わし星雲はそれほど有名な天体ではないのですが、この星雲の中にある分子雲で出来た領域(わし星雲の中央部分)「創造の柱」は有名で、天文ファンでなくても一度は目にした事があるのではないでしょうか?
「Image Credit:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した「創造の柱」(NASA,ESA,CSA,STScIより)」
最も有名な暗黒星雲!?「馬頭星雲」
暗黒星雲の代名詞とも言えるのが地球から約1,500光年の距離にある「馬頭星雲」ではないでしょうか?!この星雲が有名なのは”馬の頭”にも見える形状もそうですが、オリオン座という有名な星座の一角にある事かも知れません。
「Image Credit:Wikipedia」
そんな馬頭星雲の”馬の頭”部分を拡大撮影したのがコチラ↓↓
「Image Credit:NASA」
つまり、馬頭星雲はオリオン座さえ見つける事が出来れば比較的簡単に見つけられ、市販の天体望遠鏡でも観測が可能という事になります。
ちなみに、ここでは詳しくご紹介しませんが、オリオン座には肉眼でも見る事が出来る有名な「オリオン大星雲」(散光星雲)もあります。
地球から比較的近い?リング型「南のリング星雲」
「南のリング星雲」は地球から「ほ座」方向約2,000光年先にある惑星状星雲です。「Image Credit:ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した「南のリング星雲」(NASA,ESA,CSA,STScIより)」
南のリング星雲の大きさは約0.5光年ほど。中央部で輝くのが恒星が進化の最終段階を迎えたであろう赤色巨星で、この赤色巨星から放出された外層のガスがリング状に広がり宇宙空間に広がっているのがわかります。
宇宙に舞う壮麗な蝶「バタフライ星雲」
地球から「さそり座」方向約3,400光年先にある双極性の惑星状星雲「バタフライ星雲」。羽を広げた蝶に見える事からその名前が付けられたのですが、赤色巨星から白色矮星へと進化して行く過程で、中心星が放射する紫外線によってガスが電離することで双極方向へガスが放出され羽のように輝いて見えています。
「Image Credit: NASA, ESA and J. Kastner (RIT)」
地球から16万光年!大マゼラン銀河に巣くう「タランチュラ星雲」
こちらは、私たちの天の川銀河の外にある「大マゼラン銀河」の中、約16万光年も彼方に位置する「タランチュラ星雲」はHII領域の輝線星雲です。「Image Credit:NASA」
タランチュラ星雲は活発に活動する星形成領域として知られており、青白く輝く多くの星々はこの星雲で誕生した若い大質量星で、これらの大質量星の放射によってガスや塵が吹き飛ばされたことでタランチュラ星雲は形成されています。
千年前に起こった超新星爆発で生まれた「かに星雲」
最後にご紹介するのが「超新星残骸」の「かに星雲」です。「Image Credit:Wikipedia」
かに星雲は地球から「おうし座」方向約7,200光年先にある超新星爆発の残骸で出来た星雲であり、この超新星爆発は1054年に起こった事が確認されており、この時の超新星爆発は地球でも観測され、中国の文献には「客星」として1054年7月上旬に金星程の明るさで出現し、1056年7月上旬頃まで見えていたそうです。
なお、かに星雲の中心部には「かにパルサー」と呼ばれる超新星爆発によって誕生した直径20キロ程の大きさの中性子星の存在が確認されており、星雲も毎秒1,100キロの速さで四方に広がっています。