金星は地球に最も近い惑星です。
しかし、近いとは言えその実態はあまり判明しておらず、金星には近くても遠い星という印象があるのではないでしょうか。
そんな金星の謎を解明しようと、日本のJAXAは探査機を送り調査を行っており、スーパーローテーションといった地球とはあまりにも異なる金星の気象現象の観測を試みています。
そこで判明した新たな発見。金星とはいったいどんな惑星なのでしょうか?

Sponsored Link

何故、金星は近いのに調査が進まないのか?

地球に最も近い惑星・金星。その距離は最短で約4,000万キロほどで、明けの明星や宵の明星(最大光輝:-4.7等級)で知られるほど、肉眼でも大きくハッキリ見える天体です。
ですが近いにも関わらず、人類の探査はあまり進んでおらず実態解明はまだまだな状況なのも金星の実態でもあります。

「Image Credit:Wikipedia」
何故、金星探査は進んでいないのでしょうか?
その理由の1つは、金星が内惑星であるということにあります。
内惑星とは、地球より太陽に近い軌道を公転する惑星のことで、水星と金星がそれに該当し地球より太陽から遠い軌道を公転する惑星を「外惑星」と呼びます。

「Image Credit:Wikipedia」
内惑星に向けて探査機を送る場合、太陽の重力の影響を受けて探査機の速度が加速して行き、例えて言うなら探査機は重力という坂道を転がり落ちるような状態になり、目的地である惑星の軌道に投入するとなると、加速した速度を減速しなくてはなりません。
つまり、その減速が非常に難しく、手段として地球など惑星の重力を利用するフライバイという緻密な軌道計算が必要な技術を使って、探査機を減速させ目的の惑星の軌道に投入させています。
◆参考動画:フライバイとは?

「Copyright ©:Mashable All rights reserved.」
また、金星の調査が進まない理由として、この惑星が探査がしにくい非常に過酷な環境にあることも1つです。

地球と姉妹星なのに地球とはまるで違う金星の環境

金星は地球から近いだけではなく、その大きさや密度が地球と似ているため地球と姉妹惑星と呼ばれています。

「Image Credit:Wikipedia」
金星の大気は厚く外からではその地表を伺い知ることは出来ず、大気の主成分は二酸化炭素で大気圧は地球の海の水深900メートルに相当する90気圧もあり、もし人間が金星の地表に降り立ったとしたらその強烈な気圧で押し潰されてしまいます。
それくらい厚い大気に覆われた金星のため、温室効果も非常に高く地表温度は摂氏約500度近くもあります。

この厚い大気に邪魔をされる事で金星探査はなかなか進まず、それでも人類は金星の地表に探査機を着陸させる試みをしてきましたが、着陸には成功したもののすぐに壊れ、現在のところあまり大きな成果は残せていません。
Sponsored Link

興味深い金星の大気を探査

金星の地表を調べることもこの惑星の謎解明に役立ちますが、それ以上に謎が多いとされるのが金星の大気です。

この金星の大気の謎を解明するため、探査機を飛ばしたのが日本のJAXA。
2010年に探査機「あかつき」を金星に向けて打ち上げ、約5年かけて軌道投入に成功しています。

「あかつき」の目的は金星の大気を調べる事で、赤外線を使った探査方法で、主に金星の大気を調べ他地表の様子も調べています。

「Image Credit:金星を探査する「あかつき」イメージ図(Wikipediaより)」
「あかつき」の金星探査最大のミッションは、「スーパーローテーション」と呼ばれる謎の気象現象。
このスーパーローテーションは金星特有のジェット気流で、風速はなんと!秒速100メートルにも達する強烈なモノ。
当然ながら、地球ではこのようなジェット気流は存在していません。

ス-パーローテーションの謎

金星が地球と違う点はいくつもあり自転もそのひとつです。
地球を含む太陽系の惑星の自転は東から日が昇り西へ沈んでいますが、金星の場合は逆で西から日が昇り東へ沈んで行きます。
さらに、自転スピードも遅く、地球の自転周期が24時間なのに対し金星は243日もかかっています。

地球の常識で考えると、大気の流動は自転スピードより遅いのが当たり前なのに、金星ではス-パーローテーションという自転スピードより遥かに速い気流の流れがあるのは、想像がつかない大きな謎だというのです。

「Image Credit:金星を巡るジェット気流「スーパーローテーション」(金星探査機「あかつき」プロジェクトサイトより)」

金星探査機「あかつき」が発見したスーパーローテーションを上回る謎

これまでの「あかつき」の観測で、金星上空に吹く気流の流れを調べてきましたが、高度40キロ以下を調査したところ、赤道付近では強風が吹いており、赤道から離れると風が弱くなるという現象が新たに発見されています。

JAXAでは、発見された新たな気流を「赤道ジェット」と名付けこの赤道ジェットは力学の常識だとあり得ないことだと言います。
つまり、「あかつき」の観測では、金星の大気の謎がまた増えたワケで、謎の解明に向け、今後は更なる詳細なデータ収集が必要になったと言います。

金星探査を行う意味とは?

探査が難しい内惑星。そして金星探査。
そもそも、金星は地球と姉妹星とは言え、あまりにも過酷な環境故、将来人類がこの惑星に移住するなどとても考えられません。
そんな意味でも単純に考えると、あまりメリットが無いと思える金星に、JAXAをはじめ、人類は莫大な費用をかけて探査機する必要があるのでしょうか?

その理由を調べたところ。
金星探査の意味は、『地球という奇跡的に恵まれた惑星の事をより深く理解するため』だと言います。
ちょっと漠然とした理由にも思えますが、地球と金星。
惑星の構成が似た、この2つの星の明暗が別れた原因を金星探査を通して調べていると言います。

また、「あかつき」のように金星の大気を調べる事で、地球の気象をはじめとした、太陽系の惑星が持つ気象の原理・法則が理解できる可能性があると言います。
さらには、人間の手によって環境破壊が進んで行く地球の将来。
このまま何も対策をしないでいると、もしかしたら地球もいずれ金星のようになってしまうのではないか?という、非常に恐ろしい危惧も含まれているのかも知れません。
Sponsored Link