日本が誇るJAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」。
小惑星・リュウグウへの2度目のタッチダウン(着陸)にも成功し、貴重なサンプルの採取にも成功した事は大きな話題になりました。
そんな大偉業を成し遂げた「はやぶさ2」は、これまでどんなミッションに取り組んだのか?
そして今後のミッション・スケジュールが気になるところです。

ミッションを成し遂げた「はやぶさ2」はこれからどうするのか?また、最後の大きなミッションとも言える地球帰還予定はいつになるのか?
今回は、この辺りを中心に「はやぶさ2」について語ってみたいと思います。

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世界初のミッションに成功した「はやぶさ2」

2019年7月11日。
JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」に、記念すべき世界初のミッション実行命令が下されました。
そしてミッションは無事に成功。しかも100点満点中1,000点と絶賛されるほど見事に遂行されたそうです。

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そんな「はやぶさ2」が成功した世界初のミッションを簡単に言うと、太陽系初期の情報が眠っていると考えられている小惑星から、貴重なサンプルを採取し地球に持ち帰るといういわゆるサンプル・リターンミッションです。

「Image Credit:JAXA宇宙科学研究所HPより」
通常の無人探査機は調査対象の天体に向かい、そこで様々な観測を行い地球にデータを送り、任務が終了すると破棄されるという言わば”片道切符の”探査になるのですが、「はやぶさ2」の場合、観測調査したデータを地球に持ち帰らなくてはならないという非常に難しい任務を課せられています。
それ故に、今回の小惑星着陸ミッション成功は世界初ではありますが、まだ任務は終わってはおらず、ある意味これからが最大の難関で本当のミッションと言えるのかも知れません。
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「はやぶさ2」のこれまでのミッションを振り返る

2014年12月3日。

太陽系、そして生命の起源が眠っていると予想される小惑星「リュウグウ」に向け、JAXAの探査機「はやぶさ2」が飛び立ちました。

「Image Credit:種子島宇宙センターからHⅡAロケットによって打ち上げられる「はやぶさ2」(ファン!ファン!JAXAより)」
その後、軌道変更と加速のため地球の重力を利用したスイングバイを実施したのち、
2018年6月27日。
3年半で約32億キロの飛行をした末、地球から約3億キロ離れたリュウグウに到着しました。
※ 小惑星リュウグウは地球近傍小惑星と呼ばれる地球に接近する軌道を持つ天体です。
「はやぶさ2」がリュウグウに到着した時の地球とリュウグウの距離は約3億キロ離れていましたが、そもそもリュウグウは地球の公転軌道と交差する軌道を持っており、もし、地球とリュウグウが最接近した場合、その距離は約14万キロまで接近し、場合によっては地球に衝突する危険性も持っている潜在的に危険な小惑星にも分類されている天体でもあります。

「Image Credit:はやぶさ2が上空から撮影したリュウグウの表面(JAXA宇宙科学研究所HPより)」

2018年9月21日。
「はやぶさ2」搭載の探査ローバー「ミネルバ-II1」をリュウグウの地表に向けて投下。
「ミネルバ-II1」はリュウグウへの着地には成功し、表面の画像や動画を地球に送信してくれています。

「Image Credit:2台の小型探査ローバー「ミネルバ-II」(JAXAより)」

2018年10月9日。
こちらも「はやぶさ2」に搭載されたドイツ・フランスの着陸機「MASCOT」が投下。
着地に成功し、約17時間の表面での科学観測を行っています。

「Image Credit:小型着陸機「MASCOT」(JAXAより)」

2018年11月5日。
「はやぶさ2」がリュウグウへのタッチダウン(着地)の目印となるターゲットマーカーを投下。

「Image Credit:「はやぶさ2」下部に取り付けられた5つのターゲットマーカー(左)と拡大図(右)(JAXAより)」
この際、ターゲットマーカー周辺、及びリュウグウ地表には、「はやぶさ2」がタッチダウンしやすい砂地の地形が存在しない事が判明。
これにより、タッチダウン地点を絞り込む調査が発生し、ミッションが大きく遅れる事になります。

2019年2月22日。
詳細な調査を行った結果、「はやぶさ2」が着陸可能なわずかな空間を発見。
その場所に着陸するため、綿密な計算と時間をかけた機体の降下・姿勢調整を行った末、記念すべき1回目のタッチダウンに見事成功。
この快挙により、小惑星リュウグウ表面のサンプル採取に成功したとみられています。

「Image Credit:「はやぶさ2」がリュウグウ表面に接地する瞬間(JAXAより)」

「はやぶさ2」真のミッションは内部サンプル採取

太陽系の起源と生命の謎が眠る可能性がある小惑星リュウグウ。謎を探るためには、この天体のサンプルを採取する必要があります。
そのサンプル採取のため1回目のタッチダウンが行われ、表面付近の砂や石を採取する事に成功しました。
しかし、表面の砂や石は、長年、太陽光や放射線に晒されて劣化している可能性が高く、調査研究材料とするサンプルとしては十分な結果が得られないかも知れません。
となると、放射線等の影響が少ない地下サンプルを採取する必要がある。
そこで考えられたのが、リュウグウの地表に弾丸を打ち込み、その破壊力で穴を掘る”人工クレーター”を生成しようとする試みでした。

2019年4月5日。
この人工クレーターを作るミッションが実行されます。
まず、「はやぶさ2」に搭載された弾丸を打ち込む衝突装置を目標地点上空で分離。
その後、その様子を撮影するためのカメラ(DCAM3)を分離し、「はやぶさ2」本体は爆発に巻き込まれないために安全地帯に退避します。
退避完了後、衝突装置を起動。衝突装置が起爆した反動でリュウグウの地表目掛け弾丸が打ち出され、この衝撃で地表に穴(人工クレーター)が開くというミッションです。

「Image Credit:日本経済新聞
ミッションは成功し、はやぶさ2も無事でした。

「Image Credit:リュウグウ表面に開けられた人工クレーター(JAXAより)」
そして2019年7月11日に、人工クレーターに「はやぶさ2」本体が2度目の着地成功。内部サンプル採取にも成功したのでした。

「はやぶさ2」今後のミッション・スケジュール

真の目的である小惑星リュウグウの内部サンプル採取成功した「はやぶさ2」。
これでミッション・コンプリートかと思いきや、まだ終わってはおらずしばらくの間リュウグウに留まる予定になっています。

「はやぶさ2」に与えられた残りのミッションは3つ。
  • リュウグウ上空からの調査
  • 探査ローバーのミネルバ-II2の分離運用(予定)
  • 地球帰還ミッション
「はやぶさ2」は、リュウグウに2019年末まで留まる予定です。
その間、本体は上空からリュウグウを詳しく調査し、2台目の探査ローバー「ミネルバ-II2」を投下、運用する予定ですが、不具合が生じた事もあり現時点ではミッションが円滑に運用されるか?微妙なところのようです。

「はやぶさ2」最難関ミッション?地球への帰還

「はやぶさ2」は予定では2019年末に、小惑星リュウグウの軌道を離脱し、地球へ向け帰還のミッションに入る予定になっており、約1年の航行を経て2020年末には地球を帰還します。
その際、「はやぶさ2」はm調査したデータとサンプルを載せたカプセルを切り離し、このカプセルのみが地球に帰還します。

この帰還ミッションについては、初号機の「はやぶさ」では様々なトラブルが発生し大変な経験をしています。

初号機の「はやぶさ」は小惑星からの離脱の際、エンジンの故障・燃料漏れ、そして地球との通信途絶。つまり、行方不明になったワケでこの時、地球帰還は絶望的と思われていました。
しかし、その後奇跡的に通信が回復し、残ったエンジンを使って約3年かけて地球に帰還。

「Image Credit:初号機「はやぶさ」の大気圏突入の様子(Wikipediaより)」
この奇跡的な帰還は大きな話題になり映画化までされたほどでした。
● 参考動画:映画『はやぶさ/HAYABUSA』予告編
弐号機「はやぶさ2」は、初号機での貴重な経験を参考にして開発され現在のところ順調に運用されています。
ただ、これからも非常に緊張を要するミッションとなる事は確実。
初号機での経験で得たノウハウを活かしてミッションに臨んでいるだけに、地球帰還成功の確率は格段に上がっていると関係者も自信を持っているとの事。

これが、最後まで運用され貴重なサンプルを持ち帰る事に成功すれば、世界的にも日本の技術は一歩も二歩も前進する事は間違いなく、これからもっと本格的となって来る宇宙開発のシェアは、一気に広がる可能性が高いのではないでしょうか。
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