地球外生命探査にアツい注目が注がれている土星の第2衛星「エンケラドゥス」。
この衛星に生命が居る可能性が高いと話題になってからだいぶ月日が経ちますが、未だ具体的な「エンケラドゥスの生命探査計画」は実施されていません。
地球から遠く離れた天体ですので、そう簡単に探査は出来ないのはわかりますが、それでも早くエンケラドゥスの本格的な探査を始めてほしいと思っている天文ファンは多いハズ!?
ですが、エンケラドゥスに対する探査計画は進行中との情報もありますので今後に期待はしたいのですが、具体的には”いつ”、”どんな”計画が行われるのでしょうか?
エンケラドゥスが注目される理由とは?
地球から平均で約16億キロも離れた土星。その土星の第2衛星「エンケラドゥス」は今、最も注目を集めている天体のひとつです。「Image Credit:Wikipedia」
上↑↑画像は、土星探査機「カッシーニ」が捉えたエンケラドゥスですが、直径わずか500キロ程のこの天体は太陽系の中でも最も白く、表面全体を氷で覆われた「氷の衛星」としても知れれています。
この衛星に2006年、探査機「カッシーニ」が接近したところ氷の裂け目から噴出する水蒸気や氷状の粒子と見られる間欠泉を観測。
「Image Credit:Wikipedia」
さらには、この間欠泉で形成されたと思われる水蒸気が主成分の薄い大気を確認。
通常、エンケラドゥスのような小さな天体は重力が弱いため大気を保持する事が難しいとされている事もあり、間欠泉によって衛星内部から最大で毎秒200キロもの水蒸気が供給される事で大気が形成されているモノと考えられています。
またエンケラドゥスの表面には、所々トラ縞模様のようなひび割れが生じている箇所もあり、主にここから間欠泉が噴出しており、これは土星の強力な潮汐力によりエンケラドゥスの表面がわずかに引き伸ばされた現象によるモノだと推測され、これによりエンケラドゥスの内部では地殻活動が活発化し、地下では氷が溶けて海が形成されているのではないかと考えられています。
「Image Credit:エンケラドゥスにあるトラ縞模様のひび割れ(NASA/JPL-Caltech/Space Science Instituteより)」
地球外生命への期待が高まるエンケラドゥス
地殻活動が活発で厚い氷の下に溶けた水が存在し海が形成されているのであれば、そこには生命が居る可能性があるとして注目されているのがエンケラドゥスです。私たち「水の惑星・地球」に住む生物にとって、生命を育むためには液体である水の存在が不可欠です。
ただ地球は太陽から程良い距離にあって水が液体のまま「海」として存在出来ており、太陽に近過ぎる水星や金星では水は蒸発し、太陽から遠い火星や木星では寒すぎて水は凍結して氷になってしまい、それは土星も同じであり、従って太陽系内のハビタブルゾーン(生命誕生に適した環境)は地球だけというのが長い間当たり前の事として信じられて来ました。
しかし、太陽の光や熱が届かない極寒の星であったとしても星の内部が活発に活動し、氷の奥底から熱水が噴き出すような環境があればそこで生命が存続できる可能性がある。正にそれがエンケラドゥスであり、生命存在への期待度が高くなっている理由であります。
「Image Credit:エンケラドゥス内部構造の想像図(phys.orgより)」
そんな中、土星探査機「カッシーニ」が採取したデータによってエンケラドゥスに新たな発見があり、天文学界を大いに沸かせる事になります。
それはエンケラドゥスから、地球上で誕生した生命の基礎物質でもある「アミノ酸」の構成する有機高分子が検出された事でした。
つまりこれで、より一層エンケラドゥスに生命が存在する可能性が高まった事になるのです。
エンケラドゥスの生命探査はいつどのようにして行われるのか?
有機高分子が検出された事で「地球外生命を探すならエンケラドゥス」と言われるほど注目が集まるようになったエンケラドゥス。今後行われるであろう生命探査が楽しみなところですが、今のところ(2022年現在)この衛星への探査は検討段階で計画の実施に至るところまでは進んでいないのが現状のようです。その理由は、地球から土星の衛星・エンケラドゥスで遠いという事ももちろんですが、何より生命が実在するかどうかを調べるには数キロにも及ぶとされる厚い氷の下を探査する必要が出て来ます。
では、どうやって氷の下を調べるのか?これについてはいくつもの技術コンセプトが出されており、その中で有力な探査方法として挙げられているのが「Sensing With Independent Micro-Swimmers(SWIM)」という探査ロボットを使った方法です。
「Image Credit:NASA」
この方法は、上図↑↑にもあるように、同じく厚い氷の下に生命が居る可能性がある木星の衛星・エウロパの探査でも考えられているのですが、星の表面に着地した探査機から「Probe」と呼ばれる細長い装置が氷の層を溶かしながら地下にある海まで到達します。
「Image Credit:NASA」
地下の海に到達した「Probe」から探査ロボットが放出され、移動しながら探査を行うというモノです。
この方法はあくまでもコンセプトのひとつに過ぎず、実現出来るかどうかについては今のところ不明ではありますが、実際のところエンケラドゥスやエウロパの地下がどうなっているかわかっていないため、実現しても失敗に終わる可能性もありリスクも大きいと言います。
現時点ではエンケラドゥスの生命探査がいつ行われるのか不明ですが、一部では2030年代に行われるとの情報もありますが不確かです。
ただ、これだけエンケラドゥスには生命が居る可能性が高いとされていますので、十分な準備をした上で探査は確実に行われるでしょうし、探査結果次第では生命が居るのは地球だけではないというのが明らかになる事は期待出来るかも知れません。