これまで人類は、主に太陽系天体の探査を目的に様々な探査機を宇宙に向けて送り出して来ました。
その中には、いるか?どうかもわからない地球外知的生命体に向けたメッセージを携えた探査機もいくつかありますが、今度はちょっと目的を変え未来の人類に向けた、所謂タイムカプセル的な探査機がNASAによって打ち上げられます。
未来の人類に向けたメッセージを携えた探査機とは?いったい何の目的で計画されたのでしょうか?
未来の人類に向けたタイムカプセルを携えた外惑星探査機
未来の人類はまだ宇宙探査、もしくは開拓をやっているのか?もし人類の宇宙開拓が飛躍的に進歩しているのなら宇宙探査初期の今の情報を未来の人類に伝えたい!という願いから、今度木星に向けて打ち上げる外惑星探査機に現代の人類からのメッセージ。言わば、タイムカプセル的なプレートが積み込まれています。その探査機の名は「ルーシー」。
「Image Credit:探査機ルーシーのイメージ図(Wikipediaより)」
「ルーシー」は2021年末に木星へ向けて打ち上げられます。
木星のトロヤ群を探査する「ルーシー」
「ルーシー」が向かうのは正確には木星ではなく木星のトロヤ群です。木星のトロヤ群とは、木星と太陽の重力が均衡する地点(ラグランジュ点)の事で、この地点では重力の均衡が取れているため多くの小天体が集まっており、「ルーシー」を木星のトロヤ群にある小惑星を探査するために打ち上げられます。
「Image Credit:Astronomical Institute of CAS/Petr Scheirich (used with permission)」
トロヤ群は上動画でおわかりのように、木星の公転軌道上の太陽方向からみて惑星の60度前方の小惑星帯がL4トロヤ群。60度後方がL5トロヤ群と呼ばれており、木星トロヤ群を探査する「ルーシー」はこのL4、L5両方にある小惑星の探査を行う事になっています。
特殊な飛行コースで木星のトロヤ群を探査する「ルーシー」
木星のL4、L5トロヤ群は木星を挟んで距離が離れていますが、ルーシーはこの両方の小惑星帯を探査するミッションを背負って地球を出発するのです。2021年末に地球を出発した「ルーシー」は2027年に木星L4トロヤ群に到達します。
L4トロヤ群には現在までに3,000個近い小惑星が発見されており、そのうち4つの小惑星(ユーリバテス、ポリメレ、リュークス、オラス)をフライバイして探査します。
これらの小惑星の探査を終えた「ルーシー」は、この後、L5トロヤ群に向かうための重力アシストを受けるため地球近傍軌道まで戻ります。
そして、火星と木星の間にある小惑星帯のドナルドヨハンソと呼ばれる小惑星をフライバイしたのち、今度はL5トロヤ群でパトロクロスとその衛星メノイティオス、そして小惑星ユーリバテスを探査するミッションに挑戦します。
「Image Credit:ルーシーが探査予定の小惑星 (NASA’s Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab)」
ちなみに「ルーシー」がこのような複雑なコースを飛び探査を行う理由は、低コストで効率よく太陽系内を探査することを目指した「ディスカバリー・プログラム」の一環であり、その目的はトロヤ群小惑星が太陽系初期の歴史を保存する「惑星形成の化石」と予想される事から、このようなミッションが組まれているとの事のようです。
探査機ルーシーに積まれた未来人類に向けたメッセージ
木星トロヤ群小惑星探査機「ルーシー」は、その複雑な飛行ルートのため、ミッション終了後も地球近傍と木星のトロヤ群の間の宇宙空間を往復するような軌道を、数十万年間に渡り飛び続けるといいます。そんなこれまでの探査機とは違った運命を辿る「ルーシー」。
これを利用して?「ルーシー」には、未来の人類に向けたメッセージを記したプレート「Lucy Plaque」が取り付けられています。
「Image Credit:ルーシーに搭載されたメッセージプレート「Lucy Plaque」 (Southwest Research Institute)」
このメッセージプレートには全部で20人の著名人(アインシュタイン、ルーサー・キング・ジュニア、カール・セーガン等)、また有名なミュージシャンたち(ビートルズメンバー、クイーンのブライアン・メイ、オノ・ヨーコ)のメッセージも記載されているとの事です。
このようなメッセージを乗せた探査機ルーシー。
いつの日か未来の人類によって回収され、太陽系探査黎明期の人類の遺物として、その後の人類の歴史に刻まれる事を願っているとの事です。