地球から最も遠い宇宙空間を飛行し続けている探査機と言えばNASAのボイジャー1号です。また、ボイジャー2号も1号に続き、暗く冷たい深宇宙を飛び続けているのですが、そんな2機のボイジャー号が今どこにいるのかって気になりませんか?
実はまだ地球と交信をし続けミッションを継続中のこの2機の状況について、NASA・JPL(ジェット推進研究所)のウェブサイト(Mission Status)でリアルタイムで知る事が出来るんです。

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半世紀近く前に地球を飛び出した2機のボイジャー探査機

1983年に地球から見て木星→土星→天王星→海王星の4つの外惑星がほぼ同じ方向に並ぶという、外惑星探査には滅多にないない好機が訪れる「惑星グランドツアー」を逃がすまいとして打ち上げられたのが「ボイジャー計画」による2機の探査機(ボイジャー1号、2号)でした。

「Image Credit:同型機のボイジャー1号(左)ボイジャー2号(右)(Wikipediaより)」
ほぼ同型機のこの2機は日にちをズラして打ち上げられ、1号は1977年9月5日に、2号は1号にトラブルが発生したため1号よりも早い1977年8日20日にケープカナベラル空軍基地からそれぞれ打ち上げられました。

「Image Credit:ボイジャー1号2号の軌道(Wikipediaより)」
2機が最初に向かったのは木星。無事に木星に最接近を成功させた2機が次に向かったのは土星。土星でも最接近を果たした後、1号は外惑星探査を終え一路太陽系の外へ向かう軌道に乗り星間空間を航行しています。
一方の2号は土星の重力を利用したフライバイで軌道を変え天王星へと進路を取り、1986年1月24に天王星へ最接近。そして2号が最後に向かった外惑星は海王星。海王星にも1989年8月25日に最接近に成功し、様々な探査を行いました。
ちなみに、後にも先にも現時点で天王星と海王星に最接近した探査機はボイジャー2号だけです。そのため今でも2号がもたらしてくれた天王星と海王星の探査データは、非常に価値が高く貴重なデータとして扱われています。
そして海王星まで到達した2号もまた外惑星探査ミッションを終え、太陽系の外へ向かう軌道に乗り現在も星間空間の飛行を続けています。
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今も稼働し地球にデータを送り続けている2機のボイジャー探査機

通常の探査機は巨大な太陽光パネルを翼のように広げ動力源を確保しますが、暗くほとんど太陽光が届かない深宇宙を飛ぶボイジャー号には太陽光パネルは搭載されておらず、代わりにの原子力電池(2号は1号より容量が大きめ)が使用されています。

「Image Credit:木星氷衛星探査機JUICE(JAXAより)」
しかし、その原子力電池にも寿命があり、運用できる期間はおよそ40年。ですが打ち上げから50年近く経過した今でも2機のボイジャー号は稼働を続けており、そこにはNASA運用スタッフの懸命な延命努力がある事は間違いないのです。

満身創痍状態で稼働を続けているボイジャー探査機

2機のボイジャー号の動力源は、プルトニウム238の崩壊熱から電力を得る放射性同位体熱電気転換器(Radioisotope Thermoelectric Generator:RTG)という原子力電池を使用しており、40年以上という長寿命で稼働を続けていますが、それでも時間の経過とともに発電量が低下していくため、航行中に不要な装置は電源を切り、地球との交信と必要な科学機器のみを稼働させ電力を維持し続けて来ました。

「Image Credit:同型機のボイジャー1号・2号(Wikipediaより)」
しかし、それでも40年以上電力を確保するには限界があり、星間空間の観測データの取得に必要な機器のみ稼働し何とか寿命を維持しています。
そんな中、ボイジャー1号に深刻なトラブルが発生。地球から約240億キロ離れた地点で、飛行データシステムの遠隔測定モジュールから送信されるデータが解読不可能になってしまい、地球の通信が出来なくなり事実上沈黙状態になってしまいました。
こんな状態となった1号機を運用スタッフたちは懸命に復旧作業を行い、2024年4月に何とか復旧に成功。現在では正常なデータが送られて来ているそうです。
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ボイジャー号の現在地がにわかるNASA公式サイト

さて、地球から遠く離れ現在も元気に?星間空間を航行中の2機のボイジャー号。

「Image Credit:ボイジャー号の現在地(Wikipediaより)」
2機ともにヘリオポーズと呼ばれる太陽風が進行する境界線を通過しており(1号は2012年、2号は2018年に通過)、1号は秒速約17キロ、2号は秒速約15.4キロという速度で地球から離れていっています。
そんな超スピードで地球から遠ざかっている2機のボイジャー号。現在はどのあたりを航行しているのでしょうか?
気になるボイジャー号の現在地。それがリアルタイムでわかるNASAの公式サイトがあるのをご存じでしょうか?
NASA・JPL(ジェット推進研究所)のウェブサイト(Mission Status)

これは、NASA・JPL(ジェット推進研究所)のウェブサイト(Mission Status)で、ボイジャー号が打ち上げからのミッション経過時間や地球からの距離、現在の速度等、私たちが知りたい最低限の情報を知る事が出来るようになっています。

「Image Credit:NASA Jet Propulsion Laboratory」
※ 項目の最初に「発売日」とありますが、これはボイジャー号が打ち上げられた日にちと時間を指しています。

他、このサイトではボイジャー号の詳細な情報を閲覧する事が出来、さらには各ボイジャー号の位置や、ボイジャー号より先に外惑星探査を行ったパイオニア10号、11号、2015年に冥王星の探査ミッションを終えたニューホライズンズの現在地(推定)を、3D画像でリアルタイムでインタラクティブ体験も出来るようになっています。

「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
今も頑張って地球に星間空間の観測データを送り続けてくれている2機のボイジャー号ですが、電力は1年間に4ワットずつ消耗しているため、おそらくはあと数年で完全に発電が出来なくなってしまい、その後はただ宇宙空間を浮遊する人工物として存在し続ける事になるでしょう。
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