将来、人はエレベーターで宇宙に行ける時代がやって来る。
エレベーターで宇宙?と聞くと荒唐無稽な話にも聞こえますが、理論上は可能だという事で、実際に宇宙(軌道)エレベーターの計画は構想されています。
つまり、これって実現可能ということなのですが、それに対し一方では実現不可能という声も聞こえて来ます。
果たして、人類がエレベーターで行ける夢の宇宙時代はやって来るのでしょうか?
夢の宇宙エレベーター建設計画の概要
現在、人間や物資を宇宙に送る方法として使われているのが、大掛かりなロケットによる打ち上げ方法のみです。「Image Credit:NASAの新型ロケットSLS(Wikipediaより)」
この方法は、莫大な費用もかかりますが危険も伴い、人間や物資を打ち上げるには1回当たりにつき、かなりの重量制限もあります。
そんな中で構想として生まれたのが、人や物資をエレベーターで輸送するという突拍子もない?宇宙(軌道)エレベーター計画です。
この構想は理論上可能とされており、以前から多くの科学者や技術者が実現に向けて研究を行い、日本の大手建設会社・大林組も、高さ約10万kmにも及ぶ宇宙エレベーター建設構想を発表しています。
◆参考動画:大林組の宇宙エレベーター建設構想(The Space Elevator Construction Concept)
宇宙エレベーターの仕組み
宇宙エレベーターの仕組みとなる基本は、地球の衛星軌道上約36,000キロの高度にあります。そこは静止軌道とも呼ばれ軌道周期が地球の自転と同期している場所であり、常に日本の上空を捕えている気象衛星「ひまわり」等もこの静止軌道上に投入されています。
「Image Credit:静止軌道上で常に日本列島を観測し続ける気象衛星ひまわり(Wikipediaより)」
地球上空約36,000キロは、地上の一地点の天頂付近に長時間とどまって見える事から準天頂軌道とも呼ばれ、その軌道上から宇宙エレベーターのベースとなるケーブルを垂らし、そのまま引力で真っ直ぐにケーブルを地上に降ろす事が出来、地上と静止軌道をケーブルで中継することが出来るようになります。
そして、さらに静止軌道から引力によって垂らしたケーブルを引っ張り続けるには、今度は逆に地球の外側へケーブルを伸ばす必要が出て来ます。
これは、静止軌道が起点になり外側にケーブルを伸ばすことで遠心力が働き、それが重りとなり地上に垂らしたケーブルとのバランスを取ることが出来るようになるのです。
「Image Credit:JSEA財団法人 宇宙エレベーター協会」
宇宙エレベーターが実現した世界を描いたSF作品
宇宙(軌道)エレベーター構想の未来世界を描いたSFアニメ作品をご存じでしょうか?それは、80年代から根強い人気を誇る機動戦士ガンダム・シリーズから誕生した「機動戦士ガンダム00」。
この物語は人類の300年後の未来を描いており、人類が地球の資源(化石燃料)を枯渇させてしまった時代に、新しいエネルギー源として求めたのが半永久的に供給できる太陽エネルギー発電です。
物語では、太陽エネルギー発電システムを宇宙(軌道)エレベーターに組み込むことで、発電した太陽エネルギーをエレベーター設備を使って地上に供給することが出来、同時に自由に宇宙と地上の行き来が可能になるという仕組みをアニメの世界で構築させています。
現在も太陽光発電システムは需要が高まっていますが、地上での太陽光発電は天候など地球の大気に邪魔をされ、十分な発電が出来ているとは言えません。
「機動戦士ガンダム00」では、宇宙(軌道)エレベーターを利用し、宇宙空間に発電システムを設置する事で、大気の影響を受けることなく莫大な太陽エネルギーを絶え間なく供給できるようになります。
といった具合に、まさに夢のような世界を実現した時代を描いています。
宇宙エレベーターは実現不可能なのか?
「機動戦士ガンダム00」では、宇宙(軌道)エレベーターの素晴らしい利用方法が描かれていますが、現実問題として果たしてこの夢の設備は実現可能なのでしょうか?そんな中、この宇宙エレベーター建設計画に不可能では?と疑問を呈している人も少なからずいます。
例えば、
- 静止軌道上にどうやれば建設プラントを造れる?
宇宙エレベーターを建設するには、高度3万6,000キロという、超高高度にエレベーターの建設プラントを造らないといけません。
そのプラントはたぶん巨大な施設となり、同時に多くの作業員もそこまで運ばないと行けないでしょう。 - エレベーター建設用の資源確保は?
建設プラント、及びエレベーターの建設資材はどこで調達するのか?
それを地上から持って来るのは、莫大な費用がかかり非現実的か?
それなら、まずは月面を開拓し、月の資源を利用するか?もしくは小惑星などの小天体を捕まえて資源確保するか? - エレベーターケーブルの開発が難しい?
宇宙エレベーターに使用するケーブルは、軽量で強度の高い、これまでにない素材が必要だとされていて、
カーボンナノチューブなる素材を、開発できないとエレベーターの実現は不可能だとされています。
現時点で宇宙エレベーターに使用できるカーボンナノチューブは開発出来ておらず、この素材が完成しないことには、そもそも計画自体が進みません。
大林組は、宇宙エレベーター建設構想を発表し2050年までには建設すると発表はしていますが、建設にかかる費用はとても民間企業レベルで何とかなるものではないと思われます。
宇宙(軌道)エレベーター建設構想。
理論的には可能でも、技術面、金額面から言えば、現時点では宇宙にエレベーターで行けるなんて夢物語なのかも知れません。