木星の衛星「エウロパ」と土星の衛星「エンケラドゥス」、どちらも非常に注目されている天体です。
その理由は、2つの衛星ともに太陽から遠い極寒の位置にありながら、生命が存在の確率が高いということが示唆されており、今後の調査が期待されているからです。
しかし、何故、大気もほとんどなく表面気温がマイナス150度以下という、生命生存には絶望的とも思える過酷な世界に生命が居るかも?と言えるのでしょうか。
その謎と、エンケラドスとエウロパのどちらが生命の可能性が高いのかについて調べてみました。
木星の衛星「エウロパ」の基礎知識
エウロパは古くからその存在が確認されている衛星のひとつです。発見者は「それでも地球は周っている。」の名言で有名な、中世イタリアの学者ガリレオ・ガリレイ。
エウロパが発見されたのは1610年。ガリレオが自作した天体望遠鏡で発見され、木星にある4つの衛星(イオ・エウロパ・ガニメデ・カリスト)で通称ガリレオ衛星と呼ばれています。
「Image Credit:Wikipedia」
地球から6億キロ以上も離れたエウロパは、ガリレオの自作望遠鏡でも確認できるくらいですので衛星としては比較的大きな部類に入り直径は約3,138キロで、地球の衛星の月よりはひと回り小さい天体です。
また、エウロパの表面はほとんどが厚い氷で覆われた言わば極寒の世界であり、その表面温度はマイナス200度前後と地球上ではあり得ない冷たさです。
しかし、そんなエウロパに注目が集まる理由。
それは厚い氷の下約1,000メートル以上の地下に液体の水の海が広がっていると推定され、水の海があるならそこに何らかの生物がいるのではないか?という仮説が立てられているのです。
土星の衛星「エンケラドゥス」の基礎知識
エウロパよりさらに7億キロも遠い地にある土星の衛星「エンケラドゥス」。ここもまた最近になり一気に注目の的になっている天体です。
「Image Credit:Wikipedia」
エンケラドゥスは、エウロパより遥かに小さい衛星で直径が500キロほどしかありません。
そのため、これまであまり重要視されて来なかった衛星だったのですが、土星無人探査機カッシーニがエンケラドゥスを調査したところ、この星で起こる驚異的な自然現象を発見しました。
それは、エンケラドゥスもエウロパと同じく厚い氷に覆われた極寒の星なのですが、その厚い氷を突き破って間欠泉と思われる氷の噴出が確認された事が大きな注目を集める事になりました。
これにより、エンケラドゥスの氷の下には間欠泉を起こせるほどの熱水が存在するのでは?と推測され、もし熱水があれば、そこには温かい海が広がり生物がいるかも知れないと、一気に期待が高まったのです。
エウロパとエンケラドゥス。どちらに生命存在の期待が?
現時点(2021年)で俄然注目を集めているのは土星の衛星エンケラドゥスです。その理由は、激しい氷の噴出が確認されたことにあり、これにより地下には生命が育まれるのに適した温度の水があるのではないか?という事。
もちろんこれは仮説ですが、カッシーニの観測で噴出した氷の中に生命の源である有機物が確認された事により、さらに生命の期待度が高まっています。
しかし、実際にエンケラドゥスに生物がいるか?を確認することは不可能に近い至難の業で、40~50キロもある厚い氷の下まで行かないとそれは確認できないと思われます。
「Image Credit:Wikipedia」
一方エウロパの場合は、エンケラドゥスより近い木星の衛星軌道上にありますので、土星の衛星よりは探査がしやすく、氷の厚さも1,000メートルほどだと推測されています。
そのため近い将来、エウロパの生命探査が行われる計画もあり、まずはエウロパに生命の存在を確認することが出来るでしょう。
ただ、この探査も至難の業でかなりの高度な技術が必要になるとの事。
探査機をエウロパに送り、氷の薄い部分に軟着陸させ、そこから探査ロボットを放出して、海の存在する地下1,000メートルまで氷を溶かしながら潜らせるという計画があります。
また、現実的なのはエウロパ上空を周回しながらセンサーで地表を調査する方法も考えられているとか。
いずれにせよ、エウロパの方が先に本格的な生命探査が始まるようですが、科学者の見解だとエウロパよりもエンケラドゥスの方が生命存在の確率が高いとか?今後の調査が楽しみなところです。