空には雲が湧き雨が降り、地表には川が流れ、その先には広大な液体を湛えた湖がある。これって地球の自然環境の事を指しているかと思いますが、実はこの環境は地球だけの事ではありません。太陽系にはこんな光景が見られる天体がもう一つあります。それが土星の衛星・タイタンです。

こんな地球みたいな自然の光景が見られるのだったら、そこに生命が居てもおかしくないんじゃ?て期待してしまうのは当然の事かも知れません。
そんな期待にNASAが最新研究で「タイタンには生命が居る可能性がある」と見解を示しているらしいのです。

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自然環境が地球と似ていても地球とは全く違うタイタン

冒頭で、土星の衛星・タイタンには雨が降り川が流れ、その先には広大な液体を湛える湖がある。と表現しましたが、同じような自然環境を持つ地球と太陽の距離は約1億5,000万キロなのに対し、土星と太陽の距離は約14億キロも離れており、土星が太陽から受ける光と熱のエネルギー量はわずかしかありません。そんな土星の衛星・タイタンの地表の温度はマイナス180度。こんな環境下で零度で凍ってしまう水が流れているハズもなく、流れているのはマイナス180度でも凍らないメタンやエタンといった炭化水素です。

「Image Credit:土星の衛星タイタン(NASAより)」
タイタンは、太陽系で2番目に大きな衛星で、惑星である水星よりも大きな天体で濃い大気も存在していますが、その大部分は窒素が占めており、地球のように酸素はほとんどなく、大気中は窒素や炭化水素が循環し、雲はメタンやエタンで出来ている事で、降る雨もメタンやエタン、流れる川もメタンやエタンが主成分であると考えられています。

「Copyright c:NASA All rights reserved.」
つまり、タイタンがいくら地球と似たような大気循環環境があったとしても、マイナス180度の超極寒世界では、地球のような水の循環など起こるハズもなく、言わば、完全なる異世界環境であると言えるのではないでしょうか。
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NASAの最新研究で驚くべき可能性が示唆される

地表温度は、あらゆる生き物は凍ってしまうようなマイナス180度の超極寒世界の衛星・タイタンのため、地球に住む私たちの常識で考えると、タイタンにいくた地球と似た自然環境があったとしても、とても生命など存在するなんて考えられないでしょう。
しかし、科学者たちはタイタンの自然環境からある仮説を立てて研究を続けました。

「Image Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E」
それは、地球で生命に不可欠な水をタイタンでは豊富にあるメタンに置き換える事で、メタンが地球の生物とは異質な生命体を生み出す可能性があるのではないか?と考え、タイタンでの大気の循環から水のような極性液体を引き寄せる性質と、脂質のような非極性物質と有機物とが結びつき、安定した二重層を持つ有機構造体が形成され、それらが「ベシクル(小胞)」と呼ばれる”生命体の素”へとなり、そこから化学反応が起これば生命誕生へと結びつくかもしれないと考えています。
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実際にタイタンへ行って生命の存在を確かめる計画

NASAの研究者たちは、現在わかる範囲内でのタイタンの環境から「生命の素」が存在する可能性を示唆しているのですが、やはりその確証を得るには実際にタイタンに行って詳しい調査をするほかなく、NASAは詳しいタイタンの探査を行うべく2028年に探査機の打ち上げを予定しています。
それは、タイタンの地表に降下着陸し原始生命化学と地球外居住可能性を調べる「ドラゴンフライ」計画。

「Image Credit:NASA」
上↑↑の想像図のように、「シャングリラ」と呼ばれるタイタンの赤道付近にある低アルベド地域に着陸した探査機から、8つのプロペラを持つ大型ドローンで飛行しタイタンの地表を調べる計画になっています。

「Copyright c:NASA Video All rights reserved.」
ちなみに、ドラゴンフライのドローン探査機は核動力で動く自立型ドローンで、自動車ほどの大きさがあるそうです。果たしてこれほど大きなドローンがタイタンの空を飛べるのか?との不安もありますが、タイタンの大気圧は地球の約1.5倍もあり、空気抵抗が大きいため問題なく飛行は出来るハズです。
なお、順調に行けばドラゴンフライが土星系に到着するのは2030年代半ば。そこから約3年間に渡りタイタン上空を飛び回り、約175キロの範囲内を探査する事になっています。

これから本格化する地球外生命探査。タイタン以外にも木星の衛星・エウロパ等の探査もミッションが実行されていますが、もしかしたら、私たちが最初に出会う地球外生命体は土星の衛星・タイタンなのかも知れません。
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