21世紀になり人類の宇宙開発は飛躍的に進歩し、月面開発の開始や火星有人探査も視野に入りつつあり、そして私たち庶民も宇宙旅行に行ける時代が、もうすぐやって来る気配も感じる人も少なからずいるのではないでしょうか?
となると、まだまだ先の話にはなりますが、SF映画やアニメの世界のように、人類は超高速で宇宙を行き来出来る宇宙船を造って、太陽系の外の星々の間を自由に旅する事が出来る、恒星間航行の時代がやって来る知れないという夢も抱いてしまいます。
しかし、現実はそんなに甘くはない。そこには、この先どんなに人類の科学力が進歩しても恒星間航行など不可能と言える、超える事が出来ない巨大な壁があるようなのです。

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恒星間航行を実現するには限りなく光の速度に近づかなくてはならない

私たち人類の科学技術を持ってすれば、現在でも惑星間航行は可能だとされ、火星なら最短で半年、木星は3年、土星なら6年といった年数で到達出来、ただ、それはあくまでも現行のロケット推進のみを使った無機質な年数であり、燃料や物資、安全対策、乗船する人が消費する食糧や精神・健康ケア等は考慮していない年数になります。

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では、惑星間航行は可能でも、太陽系の外に出るといった恒星間航行はどうなのでしょうか?
結論を先に言うと、残念ながら現行の技術では到底不可能で、恒星間航行を実現するには光速、もしくは限りなく光速に近い速度で航行しないと不可能であり、例えば、太陽系に一番近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリまでは約4.3光年の距離があります。つまり、秒速30万キロで進む光でさえ4年以上もかかってしまう距離を、人類が造った宇宙船等では簡単に行けるハズもなく、もしプロキシマ・ケンタウリまで宇宙船で行くとしたら数万年も掛かってしまいます。
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恒星間航行を可能にする超光速宇宙船は造れるのか?

今は恒星間航行は無理でも、いつかは光と同等の速度で航行できる宇宙船が造れるのでは?

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確かに技術が進めば新たな推進装置が開発され、それに伴い宇宙船の速度も上がって来る事でしょう。しかし、これが光速と同等、もしくは光速に近い速度に到達出来るかは違う話で、そこにはアインシュタイン博士の特殊相対性理論が大きな障壁として立ちはだかって来ます。

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特殊相対性理論では、質量を持つ物質が動くときに運動エネルギーが発生し、速度が上がれば上がるほどエネルギー量は増大して行き、つまり宇宙船といった動く物質を光の速さに近づけていけば行くほどエネルギー量は無限大に増え続け、その限界である光の速さに到達出来る物質は理論上存在しない事になってしまうのです。
しかもこれは、後の科学者たちが粒子加速器を用いた実験を行い、実証されている確実な現象であり、仮にたった1グラムの質量を持つ物質を光速の99%まで加速しようとするときに必要となるエネルギー量は、広島型原爆3個分にも相当するとされ、さらにこの質量増加は有名な質量とエネルギーの等価性で表される数式「E=mc2」は、質量とエネルギーが本質的に同じモノである事を示しており、光速に近づこうとして加速した質量(宇宙船)は、そのままエネルギーの増加になり還って来る事になります。つまりこの物理的制約によって、人類の科学技術がどんなに発展したとしても、光速に近い速度を出せる宇宙船など到底不可能と言えるのですが、ただ、光速には及ばないとしても、現実的には光速の10%程度までなら宇宙船を建造する事は可能だと考えられています。
ちなみに、将来人類が光速の10%を出せる宇宙船を建造し、プロキシマ・ケンタウリに向かったとしたら片道43年かかるそうです。
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恒星間航行における特殊相対性理論が阻む不都合な真実

将来、人類が光速の10%で航行できる宇宙船を造り、近隣の恒星系に向け恒星間航行を行ったとした場合、ここにも特殊相対性理論と関連する大きな障壁が待ち構えています。

超高速での移動は時間の遅れも生じる!

特殊相対性理論によれば、高速で移動する物質と時間の流れは反比例するとされており、速度が速くなればなるほど時間の進みが遅くなり、それが光速の10%程度の速度であっても顕著に現れ、この速度で地球とプロキシマ・ケンタウリの往復にかかる年数が86年だった場合、宇宙船に乗っていた人にとっては86年でも、地球では約90年が経過している事になり、プロキシマ・ケンタウリよりも遠い恒星系での往復では、更にもっと大きな時間のズレが生じてしまう事にもなります。

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超高速に必要なエネルギーは膨大になる!

光速の10%を出せる宇宙船を建造するには、どうしても特殊相対性理論における壁に対峙しなければなりません。
それは宇宙船の質量(重量)を極限まで抑えるということで、それは消費するエネルギー量を抑える事にも直結します。ただ、それに必要なエネルギーは膨大になり、例えば1トン程の宇宙船であっても、光速の10%まで加速するのに必要なエネルギーは、現在の世界が消費する年間エネルギーに匹敵すると考えられており、とても現行のロケット推進等では追い付きません。つまり、人が乗れる巨大な星間航行用の宇宙船を建造するとしたら、極限まで軽く、且つ強度もあり、そして膨大なエネルギーを発生するエンジンを開発する必要があるという事です。

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超高速での物質同士の衝突は凄まじい被害となる!?

光速の10%の速度とは言え、その宇宙船はとてつもない速度で進みます。しかも広い宇宙空間でも進路方向に障害物が無いとは言えず、もし、そんな高速で進む宇宙船が砂粒程の塵に当たっただけでも、その衝撃は凄まじく破壊力は核爆発に匹敵するエネルギーが発生すると言います。
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恒星間航行は可能なのか?

将来人類が太陽系の外に出て星間航行を目指す時が来た場合、果たしてそれは現実的に可能になるのでしょうか?
ここまで挙げたように、それを実現するには特殊相対性理論をはじめとした数々の障壁を乗り越える必要があるでしょうが、技術的課題も現在の人類のエネルギー利用能力を遥かに超えた、超技術の革命的ブレイクスルーが必要となるのは必須条件になる気がします。
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