『生命がいる星は地球だけ!?』という考えはもう古い。
と言わんばかりに、今、史上初の地球外生命発見の最有力候補と可能性が指摘されているのが土星の衛星・タイタン。
このタイタンに対し人類は本格的に調査する計画があり、その調査次第では、もしかしたら私たちは地球以外に生命がいるという確信を得る事が出来るかも知れません。
今回は、この生命が居るかも知れないとされる土星の衛星・タイタンとはどんな星なのか?
そして、人類が調査を行おうとしている計画とはどんなモノなのか?について調べてみたいと思います。
土星の衛星・タイタンとはどんな星?
その星には山があり、谷があり、雨も降り、そして流れる川があり川の流れつく先には湖がある。これは、地球の自然の事を言っているように思えますが、実はこの自然環境は土星の衛星・タイタンにもあるんです。
つまり、地球の自然と似た環境を備えているのがタイタンなのです。
「Image Credit:Wikipedia」
タイタンにこのような環境がある事を発見したのが、数々の偉大な観測成果を残した土星探査機「カッシーニ」。
カッシーニは2005年に小型探査機をタイタンの地表に着陸させ、自らも上空からタイタンの大気や地表を観測してこの大発見をしています。
衛星・タイタンの大きさは直径は5,149.86キロで地球の衛星・月や惑星である水星よりも大きく、太陽系の衛星の中では木星の衛星・ガニメデに次ぐ大きさです。
「Image Credit:Wikipedia」
そんな巨大衛星・タイタンには、地球に似た濃い大気がありその濃度は地球の約4倍もあり、そして気になるタイタンに存在する地球に似た自然環境。
雨が降り、川が流れ湖がある。と言うと、一見、非常に整った自然環境に思えますが、その実、同じような環境でも地球の自然とはかなり異なっているのです。
タイタンに降る雨や流れる川は水ではなかった!
厚い大気があって、雨が降り、川が流れる自然環境。地球に住む私たちの常識だと、水の雨が降り、水の川が流れている!と考えるのが普通かと思いますが、しかし、地球から10億キロ以上も離れ、太陽から受ける光も熱も地球より圧倒的に少ない場所の温度はマイナス180度以下の極寒環境のタイタンでは、水など一瞬で凍り付いてしまうため流れる川のような液体の状態でいられるハズもありません。「Image Credit:タイタンを流れる川と湖(NASA)」
そんなタイタンで流れる川と湖をつくり出している液体の正体は、この極寒でも凍らないメタンやエタンといった炭化水素であり、つまり、タイタンではメタンやエタンが地球の水循環の代わりとなっているワケです。
やっぱりタイタンに生命はいない?
土星探査機「カッシーニ」による調査では、衛星・タイタンに生命の痕跡は見つかっていませんが、しかし、科学者たちは「水のある環境下でしか生命は誕生しない。」という考えは誤っているとした上で、タイタンでは生命の源のひとつである有機分子が見つかっているため、生命が形成された頃の原始の地球に似た環境があり、水を必要としない生命が宿っている可能性も捨てきれないと考えており、だとすれば、タイタンには地球の生物とは全く異なる生態系があるかも知れません。タイタンにも水が存在する!?
地表ではメタンの雨が降り、メタンの川が流れているタイタンですが、NASAのジェット推進研究所などが発表した研究結果によると、タイタンの地下には海のように大量の水を湛えた層があるとの事。「Image Credit:NASA Jet Propulsion Laboratory」
上図はタイタンの地下断面の想像図で、濃い青の部分が液体の水を含む層でその上下が氷の層だと考えられるそうです。
ただ、タイタンに水があるといってもかなり地下深い場所だと考えられ、これが直接生命の有無に繋がるワケではありませんが、それでもかなり興味深い研究結果である事は間違いなく、タイタンに生命存在の可能性が高まったと言える事なのかも知れません。
タイタンでドローンを飛ばし生命の可能性を調査する計画進行中!
衛星・タイタン以外でも生命存在の可能性がある天体はいくつかあり、それは火星であり、木星の衛星・エウロパ、土星の衛星・エンケラドゥス等で、これらの天体に生命がいる可能性はいずれも地下ではないかと考えられいる事もあって、生命の痕跡を見つける事はかなり難しくなります。一方、タイタンの場合、大気中を詳しく調査すれば、少なくとも生命活動に関する物質の有無などを調査する事が出来るとして、調査方法として考案されたのが空を飛び回るドローンという方法だそうです。
NASAは、2026年に衛星・タイタンに向け、マルチコプター型ドローン「Dragonfly(ドラゴンフライ)」を搭載した探査機を打ち上げる予定で、2034年にはタイタンに到着し、「Dragonfly」が大気中を飛び回りタイタンの詳しい大気分析を行う計画だと言います。
「Image Credit:DragonflyÑの想像図(NASAより)」
「Dragonfly」というドローン探査機が考案された理由は、地球よりも濃いタイタンの大気にあり、大気密度が地球の4倍もあれば、タイタンの低い重力下ではドローンを飛ばす事は十分可能で、さらには地表を動き回る探査ローバーより遥かに広範囲で探査ができるのがメリットだと言います。
ちなみに、「Dragonfly」は約2年半タイタンで活動し、総飛行(移動)距離は175キロという広範囲になるそうです。
このDragonfly(ドラゴンフライ)計画。成功すれば、これまでの常識を覆す発見がある可能性は高く、もしかしたらメタンの川を泳ぐ異質な生物に出会えるかも知れません。