太陽系の最遠部はどこまでなのか?
これは長年の謎で、今現在においても太陽系の広さは推測でしかわかっていませんが、人類の観測技術は日々進歩しています。
そんな中、現時点で太陽系最遠天体を発見というニュースが流れ話題になっています。
その太陽系最遠天体の名は「遙か遙か彼方」という意味のある「ファーファーアウト(Farfarout)」。
これはいったいどんな天体で、どれくらい遠い場所にあるのでしょうか?
これまでの観測史上最遠天体は「ファーアウト」
これまで太陽系最遠の天体だったのが「遥か彼方」という意味の「ファーアウト(2018 VG18)」で、この天体は太陽からの距離が120au(1auは約1億5,000万キロ)でキロメートルに直すと180億キロという彼方にある天体でした。ファーアウトの大きさは約500キロほどの準惑星クラスの天体で、氷で覆われたピンク色の色調をした天体であることまで判明しています。
「Image Credit:「ファーアウトのイメージ図(Roberto Molar Candanosa/カーネギー研究所)」
さらに遥か彼方に発見された「ファーファーアウト」
そして今回発見されたのが「遙か遙か彼方」という愛称の「ファーファーアウト(2018 AG37)」。距離にして太陽から約132au(約198億km)で、ファーアウトよりも18億キロも遠い位置にある事になります。
「Image Credit:黄色の線に囲まれた点がファーファーアウト(Scott S. Sheppardより)」
ファーファーアウトの公転軌道はかなりの楕円軌道で、近日点(太陽に最も近づいた距離)が海王星軌道の内側に入る約40億キロ。遠日点(太陽から最も離れた距離)が約260億キロと極端な軌道を持っています。
「Image Credit:ファーファーアウトの公転軌道図(Wikipediaより)」
また、公転周期は約800年ほどで大きさは直径400キロと、これも準惑星クラスの下限に相当する大きさではないか?と推測されています。
なお、ファーファーアウトの詳細はまだわかっていませんが、おそらくはファーアウトと同様に氷で覆われた天体ではないか?と考えられています。
何故、太陽系外縁天体は発見されにくいのか?
太陽系外縁部には無数の天体が存在すると考えられていますが、しかし、これまでそれほど多くの外縁天体は発見されていません。それは何故なのか?
その大きな理由は天体そのものがかなり小さい事にあり、太陽系の外縁部に存在する天体は小さく小惑星もしくは準惑星クラスの天体がほとんどだと考えられており、加えて太陽から遠いという事もあり動き(公転速度)が遅く発見しにくく、さらには恒星のように、自ら光を放たないため暗くて目立たないという事が大きな要因になっています。
ただ、人類の観測技術の向上は目覚ましく、今後は最新鋭の大望遠鏡によってさらに外縁部にある天体を効率よく発見できる事が期待されています。
そうなると、ファーファーアウトという天体は氷山の一角に過ぎないモノとなり、さらに遠方にある天体が次々と見つかるようになるかも知れません。
太陽系はどこまで広いのか?
太陽系の主な構造は、太陽に近い順に地球を含む8つの惑星系、その外側にエッジワース・カイパーベルトと呼ばれる円盤状に広がる無数の小天体群があり、さらにその外縁には円盤状に分布する氷主体の小天体群・散乱円盤天体。そして最遠部には散乱円盤に起源を持つとされているオールトの雲が球殻状に広がっているとされています。「Image Credit:国立天文台 天文情報センター」
ちなみに、太陽からオールトの雲の外側までの距離は10万au(約1.58光年)もあると考えられており、その事を考えると今回見つかった最外縁天体のファーファーアウトは、太陽系のほんの内側に位置する天体であるとも言えます。
実際、オールトの雲は確認はされてはいませんが、もしこの領域まで太陽の重力の影響が広がっているとなると、物理的にこれだけの広範囲に影響を及ぼす事は説明できないものがあると考える専門家もいますが、そうなると、太陽系を構成する太陽の重力以外何かの物質が存在するのかも知れません。