かつては、人類の宇宙開発の象徴というべき存在だったアメリカのスペースシャトル計画
1981年の打ち上げ成功以来、実に30年間有人宇宙飛行及び宇宙輸送に運用されてきましたが、2011年に惜しまれつつも退役してしまいました。
30年間も運用されて来たため、老朽化やシステムの古さ等で退役なった事もありますが、他にも色々な理由があるようです。
ここでは、そんなスペースシャトル計画の概要や運用終了の理由。そしてスペースシャトルに代わる後継機の情報についていくつか調べてみました。

Sponsored Link

スペースシャトル計画発足の経緯

1960年代から70年代前半にかけて成功を収めたアメリカのアポロ計画はご存じかと思います。
これにより、人類の宇宙開発を大きくリードしたアメリカは、さらにリードを広げるためにスペースシャトル計画を立ち上げます。

「Image Credit:Wikipedia」
スペースシャトル計画は、これまで1回きりの使い捨てだった宇宙ロケットを、何度も再利用出来る低コスト化を目指し、より宇宙が身近になる事で商用目的でも利用する事が可能になり、同時に軍事目的でも利用することを目指した計画でした。
その結果、誰もが知っている翼の付いた有人宇宙船・オービターと切り離し式の燃料ブースター、そして外部燃料タンクと3つの構成で宇宙へ飛び立てるロケットが完成したのでした。

「Image Credit:JAXA宇宙航空研究開発機構
スペースシャトルは1981年、旧ソ連のユーリ・ガガーリン人類初の宇宙飛行に成功20周年にあたる4月12日に、初号機・コロンビア号に搭乗員を2名乗せ初飛行に成功。
以降本格的に運用が始まり、運用終了の2011年までの30年間で、1機の試作機と5機のスペースシャトルが建造されミッションが行われました。
Sponsored Link

【スペースシャトルで建造された6機の有人宇宙船・オービター】
  • エンタープライズ:初飛行(1977年2月)・滑空実験用試作機
  • コロンビア:初飛行(1981年4月)・ミッション回数(28回)
  • チャレンジャー:初飛行(1982年7月)・ミッション回数(10回)
  • ディスカバリー:初飛行(1983年11月)・ミッション回数(39回)
  • アトランティス:初飛行(1985年4月)・ミッション回数(33回)
  • エンデバー:初飛行(1992年5月)・ミッション回数(25回)
【スペースシャトル打ち上げ映像】

「Copyright ©:NASA All rights reserved.」
【スペースシャトル着陸映像】

「Copyright ©:NASA All rights reserved.」

スペースシャトルの功績

スペースシャトルの功績は、何といっても人類の宇宙開発に幅広く利用されたことにあります。
無重力下での様々な実験・研究はもとより、人工衛星の輸送・修理・回収等、そして何より、国際宇宙ステーション(ISS)の建設に大きく貢献したことではないでしょうか。

「Image Credit:建設中のISSとスペースシャトル・エンデバー(Wikipedia)」
また、スペースシャトルは一回の飛行で乗員を7名まで乗せることが出来、合計で355人もの宇宙飛行士を宇宙まで運送しており、この人数はこれまで宇宙に行った人類(2015年時点)の約7割に相当します。
そんな多様な能力を持っていたスペースシャトルだけに、その運用終了は人類の宇宙開発にとって大きな痛手になった事は事実で、早急にスペースシャトルに代わる後継機の投入が必要となって来る事になります。

スペースシャトルが退役になった理由

スペースシャトル計画は30年以上の長きに渡るミッションでした。
それだけに、これだけ長く続く計画になるとコンセプトそのものが古くなる事は否めなく、これ以上の経費はかけられないということで計画終了は仕方なかった事のようです。
しかし、スペースシャトル計画にはいくつかの問題もあったのも事実です。
その証拠にスペースシャトルは100回は飛べるよう設計されていたのに、実際はその半分も消化しないまま退役しています。
つまり、まだまだ宇宙に飛行出来る能力があるのに、道半ばで終了してしまったことになるのです。

「Image Credit:フライトを終えたスペースシャトル・ディスカバリー(Wikipedia)」
そのような事からスペースシャトル計画が終了してしまった理由のひとつが、チャレンジャー号とコロンビア号の2回の事故の影響で浮き彫りになった安全性の問題点だとされています。
これにより、スペースシャトルは決して安全な宇宙ロケットでない。と世間にイメージがついてしまったという事も大きな要因になっているようです。
また、それ以上に退役する大きな原因となったのが莫大にかかる費用の問題ではないでしょうか。
低コスト化を目指して運用されたハズだったのに、実際はかなりコストがかかってしまったという誤算。
つまり、財政が厳しいアメリカにとって、これ以上お金のかかるスペースシャトル計画を続行することは困難だったということのようです。
もし、スペースシャトルが当初の計画どおり低コストで運用出来ていれば、安全性の問題については技術改良をすれば解決出来たと考えられ、このままシャトルは人類の宇宙計画の中枢を担い続けていけたかも知れないと思うと非常に残念でなりません。
Sponsored Link

スペースシャトルのその後

退役になったものの、まだまだ現役で飛べるスペースシャトル。
残念ながらチャレンジャー号とコロンビア号は失われてしまいましたが、実験機を含め4機のシャトルは今も健在です。
ではその後のスペースシャトル(オービター)たちは現在どうしているのでしょうか?(2016年現在)
  • エンタープライズ:ニューヨークのイントレピッド海上航空宇宙博物館に展示
  • ディスカバリー:ワシントンD.C.の国立航空宇宙博物館別館に展示
  • アトランティス:フロリダのケネディ宇宙センターに展示
  • エンデバー:ロサンゼルスのカリフォルニア科学センターに展示

「Image Credit:国立航空宇宙博物館別館に展示中のディスカバリー(Google Arts & Culture/YouTubeより)」
このように全てのオービターは、アメリカの宇宙開発の歴史として展示されています。

スペースシャトルの後継機開発計画

惜しまれつつも引退となったスペースシャトルに代わり、アメリカは2つの方法で新たな宇宙開発を目指しています。
1つ目は次世代ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)

「Image Credit:Wikipedia」
このSLSは、スペースシャトル計画から派生した大型打ち上げロケットシステムで、地球低軌道への打ち上げから、月面、さらには火星までを見据えた、用途に応じて変更できる画期的なシステムとなっています。
2つめはNASAが中心となって開発を進めている次世代型宇宙ロケット・オリオン

「Image Credit:Wikipedia」
オリオンは、SLSによって打ち上げられた有人の宇宙船で、ISSへの人員輸送や次期有人月着陸計画への使用、さらには今後計画されている小惑星の有人探査にも使用される計画になっているそうです。
さらに、ロケットや宇宙船の開発を行っているのはNASAだけでなく、SPACEX社ブルーオリジン、ボーイング社等、次々に宇宙ビジネスに参入して来ている事は、周知されつつあるのではないでしょうか。
Sponsored Link