地球の最高峰の山はエベレスト(標高8,848メートル)ですが、太陽系最高峰の山をご存じでしょうか?
それは火星にあるオリンポス山で、高さはエベレストの2倍以上もある21,229メートルと圧倒的な高さを誇り、他にも火星にはまだまだ高い山はありエベレスト級の山もたくさん存在しているそうです。
太陽系で一番高い山
日本で一番高い山は言わずと知れた富士山(標高3,776メートル)。そして世界(地球)で一番高い山も誰もが知るヒマラヤ山脈の最高峰のエベレスト(標高8,849メートル)です。では、太陽系で一番高い山は?この記事冒頭でも触れましたが、火星にあるオリンポス山(標高21,229メートル)でエベレストの約2.5倍もの高さを誇ります。
「Image Credit:オリンポス山(Wikipediaより)」
オリンポス山は高さが2万メートル以上もある山ですが、緩やかな形状をしており裾野の広さは約600キロにも渡り広がっている巨大な山です。
「Image Credit:オリンポス山とエベレストの比較図(MARK GARLICK/SCIENCE PHOTO LIBRARY/amanaimagesより)」
また、オリンポス山は太古の火星での火山活動によって誕生したと考えられており、その証拠に山頂部には巨大なカルデラ地形(長径80キロ、短径60キロ、深さ3.2キロが広がり、富士山がスッポリと収まってしまうほど巨大なカルデラが形成されています。
海がないのに(海抜0メートル)山の高さはどうやって決める?
地球で山の高さを決める時は海面の高さである水準点(標高または海抜)が基準となりますが、同じ星(地球上)でも、場所によって重力や海面下の密度の違いで若干海面の高さが異なるため、重力が均等になる平均重力面(高度0メートル)を求める必要があるのですが、地球の場合は海面の高さと平均重力面がほぼ一致するため、山の高さを表現する時には「標高」を一般的に使っています。よって、海の存在しない他の天体にも山(クレーターも含む)はあるため、基準となる高度0の面である平均重力面を選ぶ必要があり、火星の高度0地点は、温度273.16Kでの大気圧が610.5Pa(地球の約0.6パーセント)となる面が基準として定義されおり、すなわち、この地点からオリンポス山の山頂までの高さを測ると標高21,229メートルになるワケです。
火星には太陽系最高峰級の山が他にもあった
火星にはオリンポス山以外にも高い山がいくつも存在しており、例えば巨大な火山が縦に3つ並ぶ「タルシス三山」が有名です。タルシス三山には、火星で2番目に高いアスクレウス山(標高約18,100メートル)とパヴォニス山(標高約14,000メートル)、アルシア山(標高約16,000メートル)。いずれもエベレストより遥かに高い山が立ち並んでおり、火星でもかなり目立つ存在です。
「Image Credit:Wikipedia」
また、最近になってマリネリス渓谷の西端に位置する広大な峡谷の中に、太古の氷河によって浸食されて形成されたと見られる標高約9,000メートルの「ノクティス山(暫定名)」も発見されています。
「Image Credit:SETI Institute via Gizmodo US」
火星には何故巨大な山が多いのか?
火星は地球の半分ほどの大きさしかない小さな惑星です。火星が小さい惑星だからと言って、高い山が多い事に疑問を持つ事はおかしいかも知れませんが、それでも地球の山より遥かに高い山が火星に存在するのは何故なのでしょうか?その理由については、NASAが具体的に2つあるとして解説した動画を公開しています。
NASAの動画は英語解説ですのでわかりにくいか?と思いますので、わかりやくすく解説しますと。
1つ目の理由は、火星には地殻の変動によるプレートテクニクスがない事にあります。
「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
上図↑↑を参考にしていただくと、地球の場合はマントルの対流で少しずつプレート(地殻)が移動をしています。そのため上昇するマグマによって火山が形成されても、プレートが移動してしまえばその時点で火山の形成は止まり、移動した先で新たな火山が形成されて行きます。しかし火星では、地球のようなプレートテクニクスがないため、一箇所にマグマの上昇が集中し、結果として高い山が形成される事になってしまいます。
2つ目の理由は、火星の重力が弱い(地球の半分以下)事と大気圧の差によるモノがあるのではないか?と考えられています。
つまり、重力が弱い事で上昇するマグマが高いところまで押し上げられ、また、大気圧が低い事で大きな気象変動(雨や風)が起きにくく、形成された山が浸食されにくいという事も要因になっているのではないかと推測できるそうです。
太陽系にはもっと高い山がある?
今回、太陽系で一番高い山として紹介した火星のオリンポス山ですが、これは現時点で判明している”一番高い山”に過ぎず、人類の太陽系観測範囲はまだまだほんの一部にしか及んでいません。よって、今後さらに観測が進んで行けば、オリンポス山の高さを越す山が発見される可能性は大いにあるのではないでしょうか。
また、新たに発見されたノクティス山のように、氷河の浸食で形成された高い山も火星にはあるようですので、もしかしたら高い山の地表付近には氷として水が残っている可能性もあるそうです。
となると、人類が将来火星に進出した場合、高い山の麓に拠点を設ければ、そこで水の調達や空気の生成、さらには火星の水で食糧を生産できる事も出来るかも知れませんね。