超新星爆発間近と言われて久しいオリオン座のα星「ベテルギウス」。晩年にあるこの恒星は、時として予想外の変光を見せる等、かなり不安定な状態にあり、天文ニュースに限らず一般のニュースにも取り上げるなどする事もあり、天文に詳しくない人でもベテルギウスの名前を知っている人も多いのではないでしょうか?!
そんなベテルギウスにまた異変のニュースが!しかも一部ではいよいよ超新星爆発の前兆か?と話題になっているようなのです。
ベテルギウスはどんな星なのか?
ベテルギウスの異変についてお知らせする前に、この天体はいったいどんな星なのか?今一度ご説明しますと。「Image Credit:Yahoo!JAPAN きっず図鑑」
ベテルギウスは、誰もが知っていると言っても過言ではないほど有名な冬の星座のオリオン座の一等星で、オリオン座の中でも最も明るく輝くα星でもあります。
赤く輝くこの星は地球から推定で約550光年離れている、恒星としてはまもなく寿命が尽きようとしている晩年の星「赤色超巨星」です。
元々(今の太陽と同じ主系列星の時代)は太陽の20倍程の質量(表面温度約3万5,000度)を持ち、大きさは6~7倍程だったベテルギウスですが、晩年となり膨張を続けた結果、今では太陽の1,000倍に匹敵する大きさまで巨大化しており、その大きさを具体的に表すと、ベテルギウスを太陽系での太陽に位置に持って来た場合、地球軌道を遥かに超え木星軌道に達するほどになっていると言います。
「Image Credit:mail Onlineより(※ 左下0.015″は太陽と地球の距離である1天文単位を表します。」
想像を絶するほどまでに巨大化しているベテルギウスですが、この星が有名な最大の理由は、もう間もなく大爆発を起こす「超新星爆発」が待っている事にあり、それは人類史上最も近い距離で超新星爆発を観測出来るチャンスだからなのです。
ベテルギウスに起こっている異変-その1~『急速減光中!』
寿命が尽きる寸前と言われる赤色超巨星のベテルギスは半規則型の脈動変光星の特徴を持っており、膨張と収縮を繰り返しその都度、明るさも変化しています。本来は1等級の明るさを持つベテルギウスも、この変光を繰り返す事で、一時期(2020年)はかなり減光し2等級ほどまでに明るさを落としましたが、また元の明るさを取り戻したものの、2024年になってさらに光度を落とし、一カ月間で0.15等級も暗くなってしまったそうです。
専門家によると「最近のベテルギウスの光度変化は異常なほど顕著に見られる」との事で、今後も増光を元の光度に戻る可能性は高いですが、この顕著ぶりからすると予測はしにくいとの事です。
「Image Credit:2020年起こったベテルギウスの大減光現象(ESO/M. Montargès et al.より)」
ベテルギウスに起こっている異変-その2~『超高速で自転?!』
天文学者たちは、いつどうなるかわからないベテルギウスの動きを常に事細かに観測しており、自転速度にも異常が生じているように見えるとの調査報告が挙がり、それ秒速5キロ以上もの高速で自転している可能性fがあるとの事。ベテルギウスに起こっている異変-その2~『ボコボコ沸騰した状態?!』
ベテルギウスが超高速で自転している可能性があるとの報告が挙がる一方で、激しい熱対流が原因で高速回転して見えているのではないか?との見方もあるようです。ベテルギウスが近い距離にあると言っても、それは宇宙ベースで考えた場合の距離であり、実際は550光年もの遠い距離にあります。そのため、ベテルギウスの現在の状態を詳しく調べる事は非常に困難が伴い、いくつもの観測結果からシミュレーションモデルを作り、より正確に近い予測を立てる必要があります。
「Image Credit:回転しない赤色超巨星のコンピューターシミュレーションとベテルギウスのアルマ望遠鏡観測との直接比較。(Ma et al.ApJL,2024より)」
激しい熱対流が起きている事によりベテルギウスの表面はボコボコと沸騰しているように見え、高速回転もあり得る可能性もありながらも現時点では断定は困難だそうです。
いずれにせよベテルギウスが激しく変動し、今後どうなるのかはわからず謎の解明は難しいのが現状のようで、「ベテルギウスの超新星爆発は数万年先」という推測は正しくなく、もしかしたら近い未来(数年~数十年先)にオリオン座の一角が消えてなくなる瞬間を目撃出来る可能性もあるかも知れません。