地球外知的生命体(ETI)の探査を行っているSETI研究所が、7つの地球型惑星が見つかったとして話題となった、TRAPPIST-1(トラピスト1)の惑星系に向けて電波信号探査を実施したとの事で、このほどその探査結果が公表されたそうなのですが、結果は、残念ながら地球外文明に関わる信号は検出されなかったとの事。
これまで様々な天体に電波信号探査を実施して来たSETI。いくら7つの惑星系を持つTRAPPIST-1と言っても、必ずしもそこに地球外生命体が居るなんて事はないようなのです。
SETIがTRAPPIST-1に向けて電波信号探査を実施した理由
地球外知的生命体探査(SETI)が恒星TRAPPIST-1の惑星系に電波信号探査を実施した理由。それはTRAPPIST-1が地球から約40光年とかなり近い距離にあるため、もしそこの惑星系のいずれかに電波を送受信できるような地球外文明があるならば、それほど難しい事ではないのではないか?との考えと、何よりTRAPPIST-1には7つもの地球型惑星が見つかっており、そのうち3つの惑星は、液体の水が存在し得るハビタブルゾーン圏内にあるため、もしかしたら可能性があるのではないか?との考えからだったようです。「Image Credit:NASA/JPL-Caltech」
また、主星であるTRAPPIST-1の推定年齢が約80億年前後と見積もられており、私たちの太陽の推定年齢が46億年である事を考えると、進化した知的生命体がいる可能性も十分あり得ると予想しての事であるようです。
この探査では、電波干渉計「アレン・テレスコープ・アレイ(Allen Telescope Array: ATA)」を使用し観測を行い、周波数帯域は0.9~9.3GHzで合計28時間に渡って実施し、もし、7つあるTRAPPIST-1の惑星のいずれかで知的生命体による無線通信等が行われていた場合、そこから漏れ出した信号を地球の電波望遠鏡で検出できる可能性があるとして試みられたワケですが、残念ながら今回の電波信号探査では、地球外文明に由来する人工的な電波信号は検出されなかったそうです。
今回SETIが実施した電波信号探査は惑星間通信限定だった
このほどSETIが行った電波信号探査は以下のような条件での信号検出だったようです。「Image Credit:Zayna Sheikh」
この手法は、上図↑↑のようにTRAPPIST-1の惑星間の通信を検出する方法で、オレンジ色の惑星から緑色の惑星へ向けて電波が送信された場合、そこから漏れ出た信号を地球で検出できる可能性あるとの事で、すなわち、この手法はTRAPPIST-1の7つの惑星に、少なくとも2つ以上の惑星に電波を利用出来る高度な文明がいる必要があるのでは?とも言えるのです。
TRAPPIST-1の惑星系に生命がいる可能性は低い?!
TRAPPIST-1の惑星系に高度な文明を持つ生命がいた場合、私たち人類が将来火星移住を検討しているように、この惑星系ではもしかしたら惑星間での移住が行われおり、その中での惑星間通信だったとしたら、彼らの通信を受信できる可能性もあるかも知れませんが、その検出が出来なかったとすれば、TRAPPIST-1の惑星系には文明は存在しないと考えても良いかも知れませんし、そればかりか、いくらTRAPPIST-1に7つの地球が型惑星があったとしても、それはただ岩石惑星があるだけで、生命の存在は皆無である可能性が高いと考える事は良いかも知れません。何故なら・・・
恒星TRAPPIST-1は生命存在に向かない星の可能性
恒星TRAPPIST-1は、スペクトル分類がM8.0 ± 0.5型で質量が太陽の約9%、半径は木星より少し大きい太陽の約12%しかなく、表面温度は約2,240℃と恒星の中では極めて温度が低い超低温矮星と呼ばれる赤色矮星です。「Image Credit:Wikipedia」
TRAPPIST-1は非常に低質量の赤色矮星ではあるのですが、その活動は活発で定期的にかなり強い太陽フレアが発生している事も観測されています。
「Image Credit:S. Dagnello, NRAO/AUI/NSF」
このフレア現象は周囲を公転する惑星には悪影響で、その強さ次第では惑星の大気の存在を許さない場合もあり、大気への影響が大きければ、いくら液体の水が存在し得るハビタブルゾーン惑星であったとしても、水の存在すら許さない生命存在には適さない惑星になってしまう可能性が高いと考えられます。
つまり、TRAPPIST-1で危険なフレア現象が起こっているのであれば、地球外文明どころか生命さえもいない不毛な7つの惑星があるだけかも知れないのです。
電波信号探査はTRAPPIST-1よりもティーガーデン星の方が良い?
今回SETIはTRAPPIST-1の惑星系に向けて電波信号探査を実施しましたが、まだまだ探査は不十分で更なる探査が必要かと思いますが、ただ、地球外生命を目的とした探査を実施するとしたら、TRAPPIST-1よりもティーガーデン星の方が可能性はあるのではないか?と個人的には思っています。何故なら、ティーガーデン星は活発なフレア現象が観測されているTRAPPIST-1に比べ、現時点ではフレアも観測されない静かな恒星だとされているからです。
また、ティーガーデン星も低質量の赤色矮星ではありますが、推定年齢も80億年以上経過していると考えられており、地球からの距離もTRAPPIST-1より遥かに近い12.5光年です。
さらに、この惑星系にも2つの地球型のハビタブル惑星が確認されており、しかも2つとも濃い大気を維持し続けていると予想されており、少なくとも1つは液体の水を保持する可能性が高いと考えられています。
「Image Credit:ティーガーデン星系惑星の想像図(University of Göttingen, Institute for Astrophysicsより)」
主星(ティーガーデン星)が80億歳以上で穏やかな活動を維持しているとなれば、その惑星系に生命が存在しているのであれば、かなりの進化を遂げている可能性もあります。
ただ、ティーガーデン星も赤色矮星です。赤色矮星を周回するハビタブル惑星は主星にかなり近いため、主星の重力の影響を強く受け公転と自転が同期する潮汐ロックを起こしている可能性が高い事が考えられます。
「Image Credit:潮汐ロックにより沈まない太陽と明けない夜となった惑星のイメージ図(NASA/JPL-Caltech)」
すなわち、惑星が潮汐ロックしている場合、惑星は常に同じ面を主星側に向けており、その表面は永遠に沈まない太陽で灼熱状態になり、反対側は逆に永遠の夜の極寒環境になり、いくらハビタブル惑星だったとしても、そこはやはり生命等存在し得ない不毛な惑星になっている可能性も捨て切れないのではないでしょうか。