前回、あのイーロン・マスク氏が「火星に2050年代までに100万人を移住させる」目標を掲げているという関連の記事を投稿しましたが、今回は、そのマスク氏が掲げる目標がいかに困難なのか?!を、何故、火星が人類の移住先の最有力候補である理由を、この惑星が地球に似ているという点に着目していくつか挙げてみたいと思います。

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火星は「人類多惑星種化」の出発点になる?

21世紀になり宇宙進出を加速させている人類。NASAが主体となって計画が進む「アルテミス計画」を皮切りに、これから月の開拓が始まり、次に進出の眼を向けているのが地球のお隣りの惑星・火星であり、今後の目標は、火星を人類を”第二の地球”として位置付け、植民させる計画も視野に入っているとの事のようです。

「Image Credit:アルテミス計画ロゴ(NASAより)」
また、前回の記事でも紹介しましたが、イーロン・マスク氏率いる民間宇宙企業「スペースX」も火星進出を目指しており、人類を火星に移住させる計画まで打ち出し、彼の究極の目標は火星植民から他の惑星へと進出をし、人類が宇宙に耐え得る文明を創る「多惑星種」を目指すという事にあるようです。

何故、火星が”第二の地球”候補なのか?

人類が火星を目指す大きな理由の一つが、太陽系の惑星の中で環境が最も地球に似ており共通点も多い事にあります。
では、火星が地球に似ていているところはどこなのか?大まかに5つほど共通点を挙げてみました。
  • 地球に近い:地球と火星の距離は互いの公転軌道の関係で、その距離は変わって来ますが、最短で約5,500万キロまで近づきます。
  • 大気がある:地球との大気成分と大気圧は異なりますが、火星にも大気は存在しています。
  • 1日の長さが24時間:火星の自転速度も地球とほぼ同じの約24時間です。
  • 四季がある:火星の自転軸の傾きは約25度あり、地球(地球の自転軸の傾きは約23.4度)と同じように四季の変化が見られます。
  • 水がある:火星には、地球のように海はありませんが、極域や地下に大量の水が存在する事がわかっています。
このように、火星には地球と似た環境が存在するため、今後人類が火星に進出した場合に生活出来るかも知れないという期待もあるのです。
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火星の地球の共通点はあってもまったく異なる過酷環境!

5つほど地球と火星の共通点を挙げてみましたが、それは火星を単純に”第二の地球”へと結び付けられるモノではなく、実際はとても似ているとは言い難い環境であり、今後の人類の火星進出への大きな障壁となる事である事は間違いありません。
ですが、それはどういう事なのか?地球と火星の共通点がどれほど過酷なのか?を今一度挙げてみると・・・
  • 地球に近い・・・でも、人が行くには遠過ぎる:地球と火星が接近するのは2年2カ月に1回です。つまり、それは、2年2カ月に1回しか火星に行くチャンスは訪れないという事を意味し、有人探査の場合は、一旦火星に行ったら、次に地球と火星が接近するまで地球には帰れないという事になるのです。
    また、現在の技術では火星への航行は半年以上かかってしまい、長い間の宇宙航行に人間の精神が耐え切れなかったり、健康状態においても危険が伴う事も考えられるでしょう。
  • 大気がある・・・でも薄過ぎる:火星大気は地球の100分の1以下。しかも大気の主成分は二酸化炭素ですので、地球の大気とはとても比べられるモノではなく、当然ながら生身の身体で呼吸等出来るハズもなく、さらには、この大気の薄さでは宇宙船をパラシュートでゆっくりと降下させる事は不可能で、また逆噴射で降下・着陸させようとしてもかなりの燃料が必要になり、同時に危険も伴ってしまうでしょう。
  • 1日の長さが24時間・・・でも地球との時差がある:地球の自転周期は23時間56分。火星の自転周期は24時間37分と約40分程火星の1日が長いため、少しずつ時差が生じ、90日間火星で過ごすと地球と2.5日分の時差が出来てしまいます。
  • 四季がある・・・でも季節を感じる事が出来ない:自転軸の傾きにより火星にも四季の変化が見られますが、そこは無機質な大地が広がる火星。季節があると言われてもそれを肌で感じる事など出来ないでしょう。
  • 水がある・・・でも汚染されている?:火星には磁場がありません。そのため、宇宙から太陽風や宇宙線等、水質を汚染させる危険な放射線が容赦なく降り注いでいると考えられており、極域にある水(氷)はかなり水質が悪い事が予想されます。ただ、地下に眠る水はどうでしょうか?もしかしたら人が飲めるほど良質な水があるかも知れません。
と、現実は相当厳しく、これから「アルテミス計画」で目指す月面に人間を送り込む事とはケタ違いに難しく、現状で言えばほぼ不可能と言っても良いでしょう。
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それでも火星を目指す理由は何故?

実はすでに有人による火星着陸ミッションはスタートしていると言い、まずは、アルテミス計画で月軌道を周回する有人宇宙基地「月軌道プラットフォームゲートウェイ」の建設計画を進めており、このゲートウェイが完成すれば、ここを拠点に火星に向けた宇宙船を送り出し、計画どおり進めば、2030年代前半には宇宙飛行士が火星を周回することが実現するとされています。

「Image Credit:月軌道プラットフォームゲートウェイの想像図(NASAより)」
しかし、そこからが大きな課題で、どうやって大気の薄い火星に宇宙船を安全に着陸させ、宇宙飛行士が約2年間にも及ぶ火星でのミッションを無事にやり遂げられるのか?そして地球への帰還はどうするのか?
そこには、技術面を含めた解決しなけければならない課題が山積みになっています。
そしてこれからは、NASAや各国の国際的な協力だけでなく、マスク氏のスペースX社や他の民間宇宙企業の協力も重要となってくるハズです。

「Copyright c:SpaceX All rights reserved.」
口には出していませんが、マスク氏は差し詰め自分たちが開発している巨大宇宙船を「ノアの方舟」と位置付けているようにも感じます。
もちろん、現在開発中の大型宇宙船で火星になど行く事は出来ませんが、今後、月面着陸で実績を積み、改良を重ねて安全に地球と火星を行き来出来る宇宙船が造れたのなら、マスク氏が目指す「人類多惑星種化」の実現が見えて来るのかも知れません。
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