NASAとESAが共同開発して打ち上げられた探査機「カッシーニ」は、13年間に渡り土星を探査し続け、その成果は素晴らしく、土星の様々な謎の解明や新発見をし私たちに驚きを与えてくれる発信してくれました。
ここでは、そんなカッシーニの探査がもたらしてくれた、数多い土星の衛星の中からレアな情報についてまとめてみました。
太陽系の惑星の中で、木星に次いで2番目に大きい惑星・土星。その大きさは地球の約9倍で質量は約95倍もあります。
そんな土星と言えば、誰もが知っている地球よりも遥かに巨大なリング(環)ではないでしょうか。
「Image Credit:カッシーニが撮影した太陽を背にした土星の姿(Wikipediaより)」
この巨大なリングがあまりにも有名なためリングの方に注目が集まりがちですが、実は土星にはリングに匹敵し、またはそれ以上に注目すべき衛星が数多く存在し、確定しているだけでも83個(2021年現在)の衛星数を誇り、太陽系内で最も多くの衛星を持つ惑星となっています。
今回は、この中で土星探査機「カッシーニ」が捉えた注目の衛星をいくつかご紹介したいと思います。
地球に似た厚い大気を持つ第6衛星「タイタン」
まずご紹介するのは、土星の衛星で最大の「タイタン」です。「Image Credit:NASA」
衛星・タイタンについては、このサイトでも何度も紹介していますが、土星の衛星の中では最も注目すべき天体で、そのため探査機「カッシーニ」は土星に到着してから真っ先にタイタンの調査に向いました。
カッシーニのタイタンでの探査目的は、地球と似た厚い大気を詳しく調べる事で、2004年12月。タイタン上空に到達したカッシーニは、地表に向け小型探査機「ホイヘンス・プローブ」を投下。タイタンの地表着陸に成功させています。
「Image Credit:土星の衛星タイタンに着陸したのホイヘンス・プローブの想像図(ESAより)」
タイタンの探査で得た成果は、この衛星には地球によく似た自然現象があるという事でした。タイタンの地表では雨が降り、川が流れ、湖が存在するという事実が判明。しかしそこは、地表温度マイナス180度以下の超極寒の環境であるため、降る雨は水ではなく液体メタンやエタンの炭化水素で、それが川となり湖を形成しているという地球とはまったく異なる環境という現実でした。
「Image Credit:タイタンの地表に点在する炭化水素の湖(NASAより)」
氷の間欠泉を噴き出す第2衛星「エンケラドゥス」
地球のような大気を持つ衛星・タイタンでしたが、カッシーニの探査では残念ながらそこに生命がいる痕跡は見つかりませんでした。しかし、カッシーニはその後、別の衛星で生命存在を期待させる発見をしています。
それは、わずか500キロほどの大きさしかない氷に閉ざされた衛星・エンケラドゥスでの大発見でした。
「Image Credit:Wikipedia」
エンケラドゥスは、土星との距離が約24万キロというかなり近い軌道で公転しているため、土星から受ける潮汐力も大きくその影響で衛星内部が潮汐摩擦で熱せられていると考えらています。
カッシーニは、その潮汐摩擦の証拠を捉えることに成功し、エンケラドゥスの地表から氷か水蒸気と見られる間欠泉が見つかり、厚く閉ざされた氷の下には熱源があることが判明しています。
「Image Credit:エンケラドゥスから噴き出す間欠泉(Wikipediaより)」
氷の下に熱源があれば、そこには液体の水がある可能性が大きいことの証明にもなり、もしかしたらそこに生命がいるかも知れないという大きな期待に繋がっています。
スターウォーズのデス・スター?第1衛星「ミマス」
衛星・ミマスが発見されたのは古く1789年の事で、イギリスの天文学者ハーシェルによって発見されています。ミマスの大きさは約400キロほどで、公転軌道は土星からの距離約18.5万キロと近く、土星のリング内に位置しており公転周期も22時間半ほどで土星を周回しています。
「Image Credit:Wikipedia」
この衛星の最大の特徴は、ミマスのほぼ中央に存在する巨大なクレーター・ハーシェルクレーターですが、ミマスのこの姿を見た多くの人は、おそらく人気SF映画スターウォーズに登場する「デス・スター」に似てると思った人も多いのではないでしょうか。
「Image Credit:デス・スター(Wallpaperbetter)」
なお、クレーターの直径は130キロにもおよびミマス直径の3分の1を占めています。
衛星の40%を占める巨大クレーター第3衛星「テティス」
衛星・テティスもまた発見が古く1684年、フランスの天文学者・カッシーニによって発見されています。「Image Credit:Wikipedia」
直径は約1,000キロほどで、氷や岩石で構成された星だと考えられています。
この天体にはミマスほどは目立ちませんが、天体の4割を占める巨大クレーターや、幅100キロ、長さ2,000キロにも及ぶ巨大な渓谷があるのが特徴です。
2つの衛星と軌道を共有する第4衛星「ディオネ」
衛星・ディオネは、テティスと同じ年にカッシーニよって発見されました。「Image Credit:Wikipedia」
ディオネの直径は1,120キロ、土星の衛星の中で4番目の大きさで表面を氷に覆われた天体です。
ディオネの公転軌道上のラグランジュ・ポイントには、トロヤ群衛星と呼ばれる2つの衛星(ヘレネとポリデウケス)が存在し、それぞれがディオネと軌道を共有している状態にあります。
なお、探査機「カッシーニ」の調査では、この星には極めて微量ですが酸素を主成分とする大気が発見されています。
密度の低い大半が氷で出来ている第5衛星「レア」
衛星・レアは、土星の衛星の中でタイタンに次ぐ2番目の大きさを持つ星。その直径は約1,530キロでこの衛星もカッシーニによって1672年に発見されました。「Image Credit:Wikipedia」
この衛星は天体を構成する3分の2以上が氷で出来ており、そのため非常に密度が低いのが特徴で、さらにこの衛星にも極めて微量の酸素主成分の大気が確認されています。
スポンジ形態のカオス的な自転をする第7衛星「ハイペリオン」
ハイペリオンは1848年に発見された、直径約190キロ~364キロの非球形天体です。「Image Credit:Wikipedia」
ハイペリオンは画像でもわかるように非常に奇妙な形状をしており、無数のクレーターが突起物のように隆起している「まるでスポンジのよう!?」と例えられています。
この奇妙な形状は、クレーターの底に堆積している物質によって暗く見えることが原因ではないか?と考えられています。
水で出来た氷の星・第8衛星「イアペトゥス」
イアペトゥスもまた天文学者・カッシーニによって1671年に発見され、直径約1,430キロ。土星の衛星で3番目に大きな星です。「Image Credit:Wikipedia」
この衛星は、画像でもわかるとおり、白く明るい部分と黒っぽく暗い部分とに分かれています。
これは、白い部分の多くは水と思われる氷の部分で、黒っぽい部分はイアペトゥスの地殻活動により、内部から噴き出した噴出物が堆積したものではないか?と考えられています。
土星の羊飼い衛星・衛星「プロメテウス」
プロメテウスは、1980年探査機ボイジャー1号によって発見された衛星です。「Image Credit:Wikipedia」
大きさが約70キロ~約150キロという非球形天体のプロメテウスは、多孔質の氷で構成されており、土星のリングの中の比較的近い軌道上に存在しており、そのため土星の外側にあるF環の細い構造を維持する役割を担う「羊飼い衛星」とも呼ばれています。
「Image Credit:土星のF環(最も外側の環)(NASA/JPL-Caltech/SSI)」
異常なほど衛星プロメテウスと接近する衛星「パンドラ」
パンドラもまた、1980年探査機ボイジャー1号によって発見された衛星です。「Image Credit:Wikipedia」
このパンドラもも土星に近い距離(約14万キロ)を公転する衛星で、約60キロ~約105キロの大きさの小さな天体です。
パンドラの近点は約6.2年毎にプロメテウスの遠点と一直線に並び、そのときのプロメテウスとの距離は約1,400キロ程に接近すると言います。
UFO型天体?衛星「パン」
最後にご紹介するのが、2017年3月に探査機カッシーニが捉えた最も奇妙な形状の衛星「パン」。「Image Credit:Wikipedia」
直径が35キロほどの小さな衛星ですが、その形状がまるで「UFO?」「どら焼き?」と例えられるほど特徴的なカタチをしています。
このパンも土星に非常に近い軌道を持ち、土星のAリング「エンケの間隙」の内部に存在する羊飼い衛星だと考えらています。
何故、パンがこのような不思議な形状をしているのかはハッキリわかっていませんが、おそらく、土星のリングの粒子を衛星の真ん中部分の赤道付近に引き寄せることでこのようになっているのではないか?と考えられています。