近年になり民間が宇宙開発に参入し出してから、ほんのチョットだけですが宇宙が身近に感じはじめているかも知れません。
そんな宇宙開発に参入している民間宇宙ベンチャーの中で、最も勢いがあるのがアメリカのスペースX社ではないでしょうか。
そのスペースX社は2024年に火星有人飛行を実現させると発表。
まだ誰も行ったことがない火星に、それもNASAよりも早く実現させると言っているスペースX社ですが、果たしてそれは本当に可能なのでしょうか?
そしてスペースX社が計画する火星までの道のりとはいったいどういうモノなのでしょうか?
スペースX社火星有人飛行計画とは?
2026年までに火星有人飛行を実現させる計画を発表した米スペースX社。この発表をしたのが2017年10月。つまり、人類が初めて火星に向けて飛び立つまで、わずか7年しかないという事になります。
計画では、2018年半ばまでに火星行き宇宙船の建造に着手し、2020年代はじめには、人が火星で活動するための物資を乗せた無人貨物用宇宙船を少なくとも2機は打ち上げ22年には火星地表に着陸。
これが成功したら、次はいよいよ人を乗せた宇宙船が火星へ向けて飛び立ちます。
この有人火星飛行においても複数(4機)の宇宙船を利用するそうで2機が無人の貨物船。もう2機が搭乗員を乗せた宇宙船だという事です。
※ 追記:ここまで解説したスペースXの計画は2022年時点において実現しておらず、同社のCEO.イーロン・マスク氏は実現予定を2029年に修正しています。
2024年の有人火星飛行の目的
宇宙開発には膨大な費用がかかりそこに民間企業が参入するとなれば、とてつもなく大きな財政リスクを背負うことになります。そんなリスクを背負ってまで何故スペースxは宇宙開発事業に参入し、さらには桁違いの経費と技術が必要になる火星有人飛行を計画するのでしょうか?
「Image Credit:Alones/Shutterstock.com」
まず、スペースX社が実施しようとしている火星有人飛行の目的は火星の地表で水を探す事ですが、このような調査については普通に考えれば、無人探査機を何度か送って探すことが出来るのでは?とも思うのですが、無人探査機では調査にかなりの時間と膨大な費用もかかるため、危険というリスクはあるかも知れませんが、自由に動き回れてより詳細な調査が出来る人間を実際に現地に送る方が、時間短縮にもなり費用も安上がりとなると考えがあり、一見、無謀とも思えるこの計画は、財政的リスクを考える意味でも民間が実施するには効率的なのかも知れません。
スペースx社が行う宇宙開発の最終目標とは?
スペースX社の創設者イーロン・マスク氏は、2060年代までに100万人規模の人間を火星に移住させるという壮大な計画を発表しています。そのため2024年(改め2029年)の火星有人飛行は、火星移住のための第一段階に過ぎないと言います。
火星に人間を住まわせるには、まず命の源となる水源を確保しなければならないため、多くの人間が生活するために必要な水が火星に存在するのか?それが見つかなければ火星移住計画も頓挫してしまう可能性があります。
そして火星移住計画を成功させ、そこで得た技術、ノウハウをさらに発展させ、太陽系全体を視野に入れた宇宙事業を展開するという、未来へ向けての大きな野望があると言います。
それは、木星や土星の宇宙観光であったり、さらには火星も含め、人類が消費し切れないほどの膨大な資源が眠る宇宙の開発を進めることで、スペースX社は太陽系一の絶対的な企業として君臨することが出来るとの壮大な野望がそこには隠れているかも知れません。
「Image Credit:スペースX社が描く火星植民のイメージ(SPACEX)」
2024年の火星有人飛行は無謀?
スペースX社は、現時点で宇宙ベンチャーとしては最も有力な企業と言えます。しかし、2017年時点において宇宙への有人飛行も確立していない状況にあります。
※ 追記:2022年現在、スペースX社をはじめ複数の民間ベンチャーが有人宇宙飛行を実現しています。
果たして、そんな状況で2029年までに火星有人飛行が出来るのでしょうか?
この無謀とも思える計画の発表に、多くの専門家は疑問を呈しており「不可能だ!」という声も挙がっています。
実際に火星飛行を実現させるには、財政的な問題だけでなく技術的にも非常に難しいのが現状で、あのNASAですら2030年代の火星有人探査を目指しているのにも関わらず、民間がそれよりもずっと早く実現させるのは現実的に考えれば無理なのでは?そういった声が挙がるのは当然のことかも知れません。
また、2029年の有人飛行の目的が火星の水源探しとありますが、最近の調査で火星の土壌は汚染されていてかなり毒性が強いと報告されています。
そんな土壌に存在するであろう水が、人が飲めるような水なのか?どうかも非常に疑問なところです。
「Image Credit:火星探査ローバー「スピリット」が撮影した火星地表のパノラマ画像(Wikipediaより)」
また、この壮大なプロジェクトには膨大な費用もかかることは必至なのは明らかで、資金をスペースX社を自社で賄うことは難しく、そうなると出資者を募る必要も出て来ます。
果たして、この無謀とも言える計画に賛同し膨大なお金を出す出資者が見つかるのでしょうか?
個人的な考えでもありますが、かなり疑問が残るところです。
ただ、この計画の発表に際しスペースX社CEOイーロン・マスク氏は、このように付け加えています。
火星有人飛行計画は「強い願望に近いもの」ではあると・・・