2012年から火星地表の移動を続け、探査を続けている火星探査ローバー・キュリオシティ。
そんなキュリオシティも運用限界を迎え2018年秋にはその任務を終える予定になっていましたが、現在(2022年)も継続して探査は行われています。
しかし10年以上も火星の地表に留まり探査を続けるには限界もあり、何より本機の老朽化も懸念されるため、新たなる探査機の導入も検討されていました。
そこでキュリオシティに代わる次世代型火星探査ローバーとして開発が進められているのが「マーズ2020」。
ここでは、その新型火星探査車についての全貌とこれまでの火星地表探査の歴史を振り返ってみたいと思います。
火星探査の歴史(概要)
人類の火星探査の歴史は、遡る事1960年代から始まっています。探査が始まった当初は失敗続きで、なかなか火星まで到達出来なかった時代が続いたのですが、1971年にNASAが打ち上げたマリナ-9号が史上初めて火星周回軌道に到達し、周回軌道から火星の様々な地表の様子を撮影・調査に成功しています。
「Image Credit:マリナー9号が撮影した火星のマリネリス峡谷(Wikipediaより)」
以降、アメリカ・ロシア(旧ソビエト連邦)を中心に火星探査が進み、1976年にNASAのバイキング計画でバイキング1号、2号が火星地表に軟着陸成功。
地表から見た火星の様子が全世界に公開され大きな話題になりました。
「Image Credit:バイキング2号が撮影した火星の地表(NASA/JPL)」
そしてその後は軌道上から火星を探査しつつ、火星の地表を自由に動き回れる探査ローバーも開発され活躍を続けています。
火星探査ローバーの歴史
はじめて火星の地上を動き回った探査ローバーは「マーズ・パスファインダー」(1997年7月~1998年3月)。このとき探査に使われたローバーは「ソジャーナ」と言い、重量が10.6キロで、全長:65cm、全幅:48cm、高さ:30cmとラジコン自動車並みの大きさで、また行動範囲も狭く石などの障害物は高さ15センチ程しか乗り越えられず、走行距離も約11メートルと数百万ドルと継ぎ込まれた探査車にしては不本意な性能と成果しか挙げられませんでした。
「Image Credit:火星探査車ソジャーナ・ローバー(Wikipediaより)」
2世代目は2004年に着陸に成功したマーズ・エクスプロレーション・ローバー。
このとき2台の探査ローバーが導入され、1台目のスピリット(MER-A)が火星のグセフクレーターに着陸し、もう1台のオポチュニティ(MER-B)がメリディアニ平原に着陸しています。
この2台の探査ローバーはそれぞれが火星の違う場所で活動し、同じミッション(火星の水の痕跡の探索)を行っています。
「Image Credit:同型機のスピリットとオポチュニティ(Wikipediaより)」
ちなみにオポチュニティ は10年以上運用され、走行距離も25マイル(約40キロ)を超える記録を出しています。
「Image Credit:オポチュニティの移動経路(Wikipediaより)」
そして3世代目がマーズ・サイエンス・ラボラトリーという火星探査ミッションで火星に着陸した「キュリオシティ」は、2012年6月に火星ゲールクレーター内にあるアイオリス山の麓に着陸。
キュリオシティの特徴は、これまでの探査ローバーより遥かに高性能な事で、大きさも格段に大きく17台のカメラと1台のレーザー探査器、さらには削岩機までも搭載され、これで岩石に穴を空けサンプルを採取も出来るというハイスペックな機体でした。
「Image Credit:NASA/JPL-CALTECH」
歴代の火星探査ローバーが揃い踏みの上↑の写真(左下:ソジャーナ、左上:スピリットとオポチュニティ、右:キュリオシティ)を見ても進化の度合いが良くわかり、ソジャーナ(初代)がキュリオシティ(3代目)に比べるとオモチャのようにしか見えません!?
キュリオシティよりさらに巨大化・進化した4代目「マーズ2020」
火星地表探査で大活躍し、運用限界を迎えつつあるキュリオシティ。これに代わるのが4代目となる次世代型の火星探査ローバー「マーズ2020」。
「Image Credit:マーズ2020のイメージ図(NASA/JPL/Caltech)」
今回の「マーズ2020」は、成功を収めたキュリオシティの改良型とされ、大きさはキュリオシティとほぼ同等で、いわゆるキュリオシティの再利用版で、そのため大きなコスト削減と失敗のリスクを抑えた設計となっているようです。
「マーズ2020」は6つの車輪がそれぞれ独立した動力を持ちパワフルで、旋回性能も高く360度ターンも可能だと言います。
また、搭載されるカメラも増量23台。
もちろんカメラの性能も向上、高解像度ズーム機能やより立体的に撮影できる3D機能にも対応し、より多くの撮影が出来るように容量も格段にアップ。
さらには、観測装置もスゴい!
今度はローバーの上空を飛び、どこを探査するか?選定する、太陽電池で動く約0.9キロのドローン(マーズ・ヘリコプター・スカウト(HMS))も装備されるとの事。
「Image Credit:火星上空を飛ぶHMS(NASA/JPL/Caltech)」
その他、火星の地表の物質を検査するための蛍光X線分析装置、レーダー撮像装置、集積マイク、紫外分光計も搭載。
そんな高性能に生まれ変わった火星探査ローバー「マーズ2020」の任務は、35億年以上前に、火星にも地球と同じように川や湖があったと考えられているため、その証拠を掴むためと、もしその時代に生物が存在したのであれば痕跡を突き止めることを目的としています。
なお、「マーズ2020」の打ち上げ予定は2020年。
火星に到着し、どこに着陸させるかはまだ未定ですが、それでも3つの候補地が選定されており、1つが、太古の昔火山活動で温暖だったと予想されるシルチス北東部。
2つ目が、かつては湖だったと考えられているジェゼロ・クレーター。
3つ目が、最初の火星探査機スピリットが調査したこともあるコロンビア・ヒルズ。
いずれも火星の生命の痕跡を突き止めるには、絶好の探査候補地と言えます。
また、今後計画されている有人火星探査の着陸候補地にもこれらの場所が影響する可能性も高く、「マーズ2020」の活躍次第では、近い将来人類がそこに訪れるかも知れません。