宇宙に存在する光さえも脱出出来ない何でも吸い込むとされる”黒い穴”。
これは、18世紀後半から理論上存在し得る天体として考えられて来たブラックホールの事です。

この天体が実在すると初めて観測されたのは20世紀後半になってからでした。
そして近年ブラックホールの撮影に成功しその存在は確定的となって来ましたが、観測が進むに連れ大きさ質量も様々なブラックホールが発見されています。
果たしてブラックホールとは宇宙にどれくらい存在し、どこまで巨大なモノがあるのでしょうか?

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ブラックホールの正体は星ではなく空間のゆがみ?!

「ブラックホール」という単体の名前は誰もが知っているかと思いますが、これがどんな天体なのか?は漠然としている人が多く、おそらくは何でも吸い込んでしまう宇宙に開いた穴のようなイメージを持っているかも知れません。
確かにブラックホールは光さえも脱出する事が出来ないため、当然、太陽のように光を発する事のない天体で基本的には目で見る事は出来ません。

「Image Credit:人類史上初。撮影に成功した本物のブラックホールの姿(Wikipediaより)」
地球を含め全ての天体は重力を持っており、例えば、地球の重力を振り切って脱出するとなると秒速11キロの速度が必要になりますが、ブラックホールは想像を絶するほど巨大重力をのため、秒速30万キロで進む光さえそこからは脱出出来ずあらゆる物質がブラックホールの中に落ち込んでしまうと考えられています。

「Image Credit:ブラックホールの概念図(国立科学博物館より)」
言い返れば、ブラックホールの中では如何なる物質も存在出来ないという事になり、天体というよりも空間のゆがみがブラックホールであると考える事も出来ます。
ただ、未だブラックホールの正体は謎が多く、その中の密度や重力はどこまで強大なのか?人知を遥かに超えた天体である事は確かで、今後どこまでその正体に迫れるのか?未知過ぎてまだ誰にもわかりません。
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ブラックホールの基本は恒星質量ブラックホール

凄まじい重力と密度を持ち、空間のゆがみとも言える天体・ブラックホール。
それを具体的に例えるなら、地球を丸ごとギュッとパチンコ玉くらいまで圧縮すればブラックホールの重力と密度が生まれると考えられており、つまり、ブラックホールとは想像を絶する天体である事は間違いないワケで、こんな天体がどうやったら誕生するのか?と、具体的に文章で解説すると長くなりますので動画でわかりやすくまとめたモノがあります。


「Copyright ©:Kurzgesagt – In a Nutshell All rights reserved.」
現在の考えでは、ブラックホールは私たちの太陽より遥かに重い(太陽の30倍以上の質量)、大質量恒星が寿命を終えた時の重力崩壊により誕生するとされています。
これを恒星質量ブラックホールと呼び、質量が太陽の数倍~十数倍程度の天体になると考えられています。

ブラックホールは合体融合し巨大化する

宇宙には恒星質量ブラックホールよりも遥かに巨大なブラックホールが多く発見されており、これらの巨大ブラックホールはどのようにして誕生するのか?長年の間、謎とされて来ましたが、最近の観測研究により徐々に謎が解明されつつあります。
その巨大化の原因のひとつとして考えられているのが、ブラックホール同士の衝突・合体融合によるモノで、強重力のブラックホール同士が互いにに引き合い、周囲のガスや塵を取り込んで成長していくとされています。

「Image Credit:合体融合しようとするブラックホールのイメージ図(国立天文台(NAOJ)より)」
合体融合により成長したブラックホールは、中間質量ブラックホールそして超大質量ブラックホールと成長。
私たちの太陽系が属している銀河(天の川銀河)の中心にも、合体融合で誕生したと思われる太陽質量の400万倍以上と考えられる超巨大ブラックホール「いて座A*」が存在している事も確認されています。

「Image Credit:直接撮影に成功した「いて座A*」(Wikipediaより)」
なお、広大な宇宙においてブラックホールは決して珍しい存在ではなく、むしろ極一般的に存在し私たちの銀河系内だけでも億単位で存在するのでは?とも考えられているのです。

途方もなく巨大なブラックホールがある可能性!?

前記もしましたが、天の川銀河の中心付近にあるブラックホールは太陽質量400万倍以上ととてつなく大質量なのですが、2019年に直接撮影に成功した超大質量ブラックホールは太陽の65億倍の質量と桁違いで、さらには、数億光年以上離れた場所にあるクエーサーと呼ばれる超大質量ブラックホールに至っては太陽質量の100億倍に達するほどの天体まで存在している事が判っています。

「Image Credit:クエーサーのイメージ図(NASA,ESA,and J.Olmsted (STScI) via Gizmodo US)」
しかし、最新の研究報告では銀河サイズの途方も無く巨大なブラックホールが存在する可能性があることも示唆されており、これは通常の恒星質量ブラックホールが合体融合したモノではなく、初期宇宙の段階で物質の密度差で重力崩壊が起き誕生したと考えられています。
ちなみにそのブラックホールの質量は太陽の1000億倍を超えるとも推定されており、これをSLABs(stupendously large black holes)と呼ぶそうです。
ただこのSLABsの存在はあくまでも可能性の話であって、実際に確認されたワケではありません。

成長の後には衰退もやって来るブラックホール

周りの物質を取り込み、そして合体融合を繰り返して成長を続けるブラックホールは未来永劫成長を続けるワケではなく、いつかは寿命を迎えると考えられています。
それは、ブラックホールは物質を取り込むだけではなく、それ以上に熱放射をしエネルギーを放出し続けており(ホーキング輻射)、最終的には蒸発してしまう運命が待っているとされています。
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