広大な宇宙には、光も含めたあらゆる物質を吸い込んでしまうというブラックホールが潜んでおり、しかもその数は膨大で大きさも大小様々なブラックホールがあると考えられています。
ではいったい宇宙には、どれくらいのブラックホールが存在し、大きさはどれほどなのか?NASAが公開しているブラックホールのサイズ比較動画と合わせてご紹介してみたいと思います。
宇宙にはどれくらいのブラックホールが潜んでいるのか?
光さえも脱出出来ないほど、想像を絶する重力を持つとされる超高密度天体ブラックホール。それ故に私たちの眼では確認出来ず、多くのブラックホールは宇宙のどこに潜んでいるのか?わからないのが現状です。
「Image Credit:ブラックホールのイメージ図(Wikipediaより)」
ただ、ブラックホール本体は見えなくても周囲を取り巻くガスや塵でその位置が特定出来たり、ブラックホールから発せられる重力波等で知る事は出来ます。
このようなブラックホールを特定する観測方法や、ブラックホールがどのようにして形成されるのか?がわかれば、宇宙にはどれくらいのブラックホールが潜んでるのか?が推測できるそうです。
そこで推測されて来た宇宙に存在しているであろうブラックホールの数は、私たちの太陽系が属している銀河(天の川銀河)には最低でも1億個はあると見られており、銀河の中心付近には太陽質量の約400万倍という超巨大ブラックホールが存在している事もわかっています。
「Image Credit:天の川銀河中心にある超大質量ブラックホール実際の画像(Wikipediaより)」
しかも、超巨大ブラックホールは天の川銀河だけでなく、宇宙に存在するほぼ全ての銀河の中心部にあると考えられており、その銀河は観測可能な範囲内だけでも2兆個以上はありますので、銀河の中に潜んでいるブラックホールと合わせると、宇宙には数えられないくらい無数のブラックホールが存在すると推測される事となります。
「Image Credit:天の川銀河を中心とした観測可能な銀河の分布図(Wikipediaより)」
宇宙最小と最大サイズのブラックホール
おそらくではありますが、宇宙には数え切れないくらい多くのブラックホールが潜んでいると考えられますが、では、ブラックホールってどれくらいの大きさがあるのか?これまでの観測研究で判明した最小クラスと最大クラスをご紹介してみます。宇宙最小サイズのブラックホール
理論上、ブラックホールは太陽質量の30倍以上ある大質量恒星が寿命を終えた時に重力崩壊で形成されると考えられており、このとき形成されるブラックホールの事を恒星質量ブラックホールと呼びます。すなわち、最小クラスのブラックホールは恒星質量ブラックホールであると考えられ、これまでで見つかった最小クラスは太陽質量の約3.3倍で、地球から「いっかくじゅう座」の方向約1,500光年先に位置する赤色巨星「V723」と連星を成している通称「ユニコーン」と呼ばれる恒星質量ブラックホールだそうです。
「Image Credit:赤色巨星「V723」(右)とブラックホール「ユニコーン」(左)の想像図(Lauren Fanfer)」
宇宙最大サイズのブラックホール
宇宙最大クラスのブラックホールは以前もご紹介しましたが、地球から約27億光年彼方の銀河団「Abell 1201:の中で最も明るい銀河「Abell 1201 BCG」の中心にある超大質量ブラックホールで、その大きさは何と!太陽質量の約327億倍という、理論上では上限界位となる超ド級のモンスター・ブラックホールです。「Image Credit:Abell 1201 BCG(Wikipediaより)」
上画像↑↑の丸い部分が「Abell 1201 BCG」銀河ですが、太陽質量の約327億倍というモンスター・ブラックホールこの銀河の中心付近にあるそうです。
理論上最も小さい原始ブラックホール
原始ブラックホールとは、実際に発見されているワケではなく理論上提唱されているブラックホールで、宇宙の誕生直後に生まれたとされる「子宇宙」が収縮した事で原始ブラックホールが形成されたと考えられており、理論的には10−8 kg (0.00000001kg)という小さな質量でも形成可能だと示されており、この原始ブラックホールこそが、宇宙の重力の80%以上を占めているとされる、見えない暗黒物質・ダークマターの正体である可能性も指摘されています。ブラックホールの大きさはどれくらいなのか?動画で検証
最小から最大までのブラックホールのサイズをご紹介しましたが、その大きさを太陽質量の何倍?と解説しても良くわからないかも知れません。そこでここでは最近NASAが公開した「ブラックホールの大きさとはどれくらいなのか?」という太陽系と比較した動画を見つけましたので、その動画をベースに解説してみたいと思います。その前にブラックホールの簡単な構造についてご紹介しますと.
「Image Credit:ESO,ESA/Hubble,M.Kormmesser/N.Bartmann」
まず、ブラックホールの本体である黒い球体の一番外側にある境界面を「事象の地平面」と呼び、この事象の地平面の内側に入ると光さえも脱出する事が出来ないため、黒い目には見えない領域になってしまいます。
次にブラックホール本体の大きさ(距離)を表すのが「シュワルツシルト半径」と呼び、そして事象の地平面からシュワルツシルト半径で結んだブラックホール中心部が物質が無限大の密度で集中している領域だとされる「特異点」です。なお、他の名称については別の記事をご参照いたければと思います。
動画では、太陽系と比較したブラックホール・シャドウ(ブラックホールが造り出す影)のサイズを表しており、以下、動画に登場して来る巨大ブラックホールを順番に紹介すると。
まず、矮小銀河「1601+3113」のブラックホール(太陽質量の約10万倍)はブラックホール・シャドウは太陽より少し小さいサイズで、コンパス座銀河(Circinus Galaxy)のブラックホール(太陽質量の約100万倍)、
アンドロメダ銀河の伴銀河「M32」のブラックホール(太陽質量の約200万倍)と続きます。そしてさらに続くのが、私たちの太陽系がある銀河(天の川銀河)中心にあるブラックホール「いて座A*」は太陽質量の約400万倍あり、ブラックホール・シャドウは水星軌道の約半分サイズまで巨大になります。
さらに、NGC 7727銀河の2つのブラックホールの太陽質量の約600万倍、太陽質量の1億5000万倍以上。次がアンドロメダ銀河の中心にあるブラックホール(太陽質量の約1億4,000万倍)、はくちょう座A(Cygnus A)は太陽質量の25億倍と太陽系の大きさを遥かに凌ぐサイズまでブラックホール・シャドウが巨大化して行き、太陽質量の約65億倍あるとされる「M87」のブラックホールは、史上初めてその姿が捉えられたブラックホールとしても有名です。
「Image Credit:直接撮影された「M87」銀河の超巨大ブラックホール(Wikipediaより)」
ちなみに「M87」のブラックホール・シャドウのサイズは、光の速さ(秒速30万キロ)でも2日半かかるほどの大きさだそうです。
そして最後に登場するのが、観測史上最大とされる「TON 618」のブラックホールで、質量は何と太陽の600万倍以上だと考えられており、ブラックホール・シャドウは光の速さで数週間もかかるサイズだそうです。
このように、宇宙にはとてつもない数のブラックホールと、私たちにはとても想像出来ないほど巨大なブラックホールも数え切れない程存在していると考えられています。