ブラックホールと聞いて一般的なイメージで言うと、あらゆる物質をも吸い込み光すら脱出出来ない宇宙空間に開いた”巨大な黒い穴”ではないでしょうか?!
ですが実際のブラックホールは”黒い穴”等ではなく、れっきとした天体であり決して宇宙に開いた穴などではありません。
しかし、光を発する事がないブラックホールは目には見えずリアルな姿は誰にもわかりません。
ましてやその内部構造など知る由もないのですが、それでも科学者たちはブラックホールがどうなっているのか謎の解明に日々挑んでいます。

目には見えないブラックホールの姿を捉えた歴史的快挙!

2019年、人類は歴史的な快挙を成し遂げました。
その快挙とは、本来は見えるハズもないブラックホールの姿を捉える事に成功したのです。

そして公開された真のブラックホールの姿。あまりにも有名はこの一枚の画像は多くの人が目にし驚いた事と思います。

「Image Credit:人類史上初。撮影に成功した本物のブラックホール画像(Wikipediaより)」
捉えられたブラックホールのリアル画像は、地球から約5,500万光年彼方にある「M87銀河」の中心にある超大質量ブラックホールで、その質量は太陽の約65億倍もあるとてつもない天体です。

上画像でももおわかりのように、その画像はぼんやりとしてはいますが、オレンジ色や黄色に囲まれた中に黒い穴のようなモノが写し出されており、この黒い穴こそがブラックホールの本体なのですが、厳密にいうとこの画像は”影”で本来のブラックホールではないのです。
つまり、ブラックホールの重力があまりにも強大なため、その重力で光(電磁波)が進む向きを曲がってしまったげられてしまった影(蜃気楼的な?)を映し出したものだそうです。

「Image Credit:EHT Collaboration」
それでもこの姿を捉えた事は快挙である事は間違いなく、科学者たちの努力の結晶とも言えるモノなのです。

ブラックホールの構造はどうなっているの?

撮影には成功したものの、ブラックホールの構造についてはまだ謎が多いのも事実です。
その構造については理論的に導き出された部分も多く、これから更なる観測をして行かなくては謎の解明には繋がらないでしょうが、それでも現時点で判明しているブラックホールのおおまかな構造または周辺環境名称はこのようになっています。

「Image Credit:ESO, ESA/Hubble, M. Kornmesser/N. Bartmann」
  • 事象の地平面
    これ以上中に入ってしまうと光でさえも抜け出す事が出来なくなる境界面の事。
  • 特異点
    いわゆるブラックホールの中心部の事で、物質が無限大の密度で押し込められている領域だと考えられています。
  • シュワルツシルト半径
    特異点から境界線の事象の地平面までの距離。
  • 光表面
    事象の地平面と光が放たれる限界面。
    この領域では強力な重力の影響で光の進行方向が曲げられてしまい、ブラックホールの周りに光の環があるように見えます。
  • 高速ジェット
    ブラックホールを取り巻く強い磁場が強力な重力で行き場を失い、チリやガス等を光速に近い速度で一気にプラズマ放出する現象。
  • 降着円盤
    ブラックホールの強い重力で引き付けられたチリやガス等が高速で回転する領域。
    降着円盤の温度は、あまりにも強い摩擦力で数億度にも達すると考えられています。
  • 最終安定軌道
    必ずしもブラックホールに近ずくと吸い込まれるワケではなく、そこには安定して周回出来る軌道も存在します。この安定した軌道が保てる最も近い領域を最終安定軌道と呼びます。
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本物のブラックホールはどのように見えるの?

画像で影を捉える事は出来ましたが、これもほぼブラックホールの真の姿には違いありません。
しかし、ブラックホールの近くまで行きリアルな姿を見る事が出来たらどのように見えるのでしょうか?

そんな疑問に対しNASAはCG画像のシュミレーションを制作しており、実際に見る事が出来たらこのように見えるそうなのです。

「Image Credit:NASA」
ブラックホールの周りには高速で回転する降着円盤(オレンジ色の部分)が取り巻いています。
このシュミレーション動画ではブラックホールをやや斜め上から見た時の様子を再現しており、この視点により裏側にあるハズの降着円盤の渦の光が強い重力で捻じ曲げられる事で、ブラックホールを飛び越えるようにして見えています。

人類が近くで直接ブラックホールを見る日はやって来るのか?

現在見つかっているブラックホールの中で、地球に最も近いのが約1,000光年の距離だとされています。
つまり、秒速30万キロで進む光でさえ1,000年もかかる距離ですから、人類が探査機等を飛ばして直接観測に行く等とは、普通に考えれば不可能な話ですし、今後もおそらくは1,000光年という途方もない距離を移動する事は困難でしょう。

しかし、遠くから高精度の観測をする事は可能で、現在も超高性能な観測機器が開発され次々と宇宙観測に投入されています。
そのような事からも、近い将来、もっとリアルなブラックホールの姿を見る事が出来る可能性は高いですし、もっと近くでブラックホールが発見されるかも知れません。

追記:1,000光年先のブラックホールは間違いだった!?

前記でお伝えした地球から約1,000光年の距離にあるブラックホールの存在は、その後になって否定される事になります。
つまり再調査の結果、ここにはブラックホールは存在せずかなり特殊な連星がブラックホールのように見えていたという事になったのです。
なお、詳細についてはコチラをご参照下さい。
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