あらゆる物質を吸い込み、光さえも脱出出来ないと考えられているブラックホール。
それはまさに究極の天体であり、とてつもなく危険で恐ろしい天体のようにも思えます。
しかしその反面、ブラックホールは宇宙では必要であり、何より生命の誕生にはなくてはならない存在である事が最近の研究でわかって来たと言います。

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究極の天体・ブラックホールのメカニズム

ブラックホールとは、極限を超えた重力と質量、密度の塊となった天体の事で、つまり、巨大な質量が一点に集中する事で、その重力と密度で空間自体が無限に落ち込んで行き光すら脱出出来ない想像を絶する強重力の天体になってしまったのがブラックホールです。

「Image Credit:重力が1点に集中し落ち込むイメージ図(YouTubeより)」
ちなみに、想像を絶する強重力とはどのようなモノなのでしょうか?
例えば、地球をブラックホール化するとした場合、地球丸ごととパチンコ玉ほどの大きさくらいまで圧縮すればブラックホールになるとされています。

「Image Credit:Wikipedia」
地球を丸ごと1センチまで圧縮するなんて物理的にはあり得ない話ですが、そのあり得ない事がブラックホールでは実際に起こっているワケです。

星から生まれるブラックホール

ブラックホールはどのようにして生まれるのでしょうか?
その起源は、星の終焉に伴い誕生すると考えられており、ここで言う星とは、地球のような惑星等ではなく太陽のような恒星の事ですが、太陽が終焉(寿命)を迎えてもブラックホールになるワケではありません。
ブラックホールになるには非常に巨大な質量が必要とされており、現在の推測では太陽質量の30倍以上の恒星がその生涯を終えるとブラックホールになってしまうと考えられており、そのメカニズムは、恒星自体が地球等のような惑星とは比べモノにならない巨大な質量を持っており、その質量による重力の収縮力で内部に熱核融合反応が起こり、外に膨らもうとする膨張の力が発生する事で恒星としての形状を保つ事が出来ています。

「Image Credit:YouTubeより」
しかし、核融合反応は永遠に続くワケではなく、いつかは核融合の燃料(水素やヘリウム等)が尽きてしまいます。
その燃料が尽きてしまった時が恒星の終焉であり、核融合による膨張する力が無くなってしまう事で、自重(質量)による重力で一気に星の中心に向かって落ちて行く急激な収縮が始まります。
そして起こるのが収縮の反動による衝撃波の発生。これが俗にいう超新星爆発という凄まじい爆発現象(ショックブレイクアウト)です。

「Image Credit:超新星爆発・ショックブレイクアウトのイメージ図(iStockより)」
巨大質量を持つ恒星が最期を迎えると、恒星をカタチ造っていたガスは超新星爆発で吹き飛ばされしまいますが、急激な収縮による重力源はその場に残り、ついには限りなく高密度で強重力の天体・ブラックホールが誕生するという事になるのです。
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何でも吸い込むハズのブラックホールから噴き出すジェット

その強大な重力により、あらゆる物質を吸い込んでしまうと言われているブラックホール。
しかもそこからは光さえも脱出出来ないため発見する事は非常に困難ですが、巨大な重力に引き込まれ、ブラックホールの周囲を高速で取り囲む降着円盤と呼ばれるガスや塵が発するX線等で、その存在を知る事は出来ます。
さらに全てのブラックホールではありませんが、物質を吸い込む反面、中心部付近から光速に近い速度で猛烈に噴出されているガスのジェットも確認されています。

「Image Credit:Wikipedia」
では何故、物質を吸い込むハズのブラックホールからガスが噴出されているのでしょうか?
これは、宇宙物理学における最大の謎とされて来ましたが、最近になってこのジェットのメカニズムが解明されて来ています。

巨大な磁場が臨界点を超える事によって起きるブラックホール・ジェット

ブラックホールの周りに纏わり着く大量のガスや塵の降着円盤は、ブラックホールの重力の影響で高速で周っており、この高速回転により起こる摩擦で数億度にも達する熱と凄まじい磁力線が発生しています。
ブラックホールから噴き出すジェットの原因はこの磁力線にあるとされ、強い重力とガス等の回転で磁力線にもエネルギーが溜め込まれて行きます。

その溜め込んだエネルギーが臨界点を超え、逃げ場を失った磁力線はブラックホールの中心方向(両極)から一気に噴出し、これと同時に周りのガスも巻き込まれ光速に近い速度のジェットとなって宇宙空間に放出されて行きます。

「Image Credit:YouTUBEより」
これがブラックホール・ジェットの正体であり、その凄まじい勢いで放出されたジェットは、数千光年先まで行き届く程、大量に噴き出しているそうです。

ブラックホールは星や生命の生成装置だった?!

あらゆる物質を吸い込み、周りの全てを”無に帰する”、モンスター的天体のイメージが強いブラックホールですが、しかし、最近の研究によりブラックホールは、私たち生命にとっては無くてはならない大切な天体ではないか?との憶測も広がりつつあります。
その理由は、この広大な宇宙の中で星や生命を創り出す基になる物質はバラバラになって散っており、このバラバラになった状態では、星や生命になるための物質が結びつきにくくなってしまいます。
それを一箇所に集め、程よく混ぜ込んで、そして宇宙にばら撒くという、一連の”作業”を行っているのがまさにブラックホールではないか?との推測があるのです。

つまり、ブラックホールが降着円盤で物質を集め高速で回転させてかき混ぜ、そしてエネルギーを溜め込んだ磁力線によって混ざった物質を遠くまで放出する事で、宇宙のあちこちで物質同士が結びつき星や生命が生まれるという考え方があり、私たち地球の生命もまた、このような経緯を経て誕生したのではないか?と考えられています。

「Image Credit:ブラックホールのジェット構造(YouTUBEより)」
その証拠となるのが、地球から遥か遠方にあるブラックホールにジェット多く見られる事で、地球から遠ければ遠い程過去に遡る事になりますので、宇宙が誕生したばかりの太古に、今より小さかった宇宙に大量に発生したブラックホールがまんべんなく物質をばら撒いた事で、星が生まれ銀河が誕生し太陽系も誕生。そして、私たちの地球にブラックホールによる恵みの物質がもたらされ生命が誕生したと考えられています。

新しい生命誕生の起源説が生まれた事により、今後、さらにブラックホール研究が進み謎が解かれていく事はとても楽しみな事ではないでしょうか。
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