地球外生命探査は、太陽系内天体だけでなく太陽系外惑星にも探査の眼が向けられています。
そんな中、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が太陽系外惑星を探索したところ、地球外生命存在の証拠ではないかと思われるバイオマーカーを検出した可能性があるとして大きな注目を集めており、人類史上初の大発見になるとの期待度が高まっています。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が探査の眼を向けた系外惑星
地球から「しし座」方向約120光年離れた位置にある「K2-18」は、大きさが太陽の40%程、質量は太陽の約36%、表面温度は約3,200度で比較的活発に活動していると思われるスペクトル型M2.5Vに分類される赤色矮星です。(参考:太陽の直径は約140万キロ。スペクトル型はG2V、表面温度は約6,000度)
「Image Credit:Wikipedia」
その赤色矮星K2-18を公転する惑星のひとつ「K2-18b」が今回の主役。
惑星「K2-18b」は主星である「K2-18」を約33日で公転しており、水が液体の状態で存在出来るハビタブルゾーン内に位置すると考えられています。
なお、惑星「K2-18b」は地球に比べるとかなり大きく、大きさが地球の約2.7倍で質量は約8.6倍とスーパーアースの範疇に含まれる惑星ではないかと推測される天体です。
「Image Credit:惑星「K2-18b」の想像図(Wikipediaより)」
「K2-18b」は、ケプラー宇宙望遠鏡によるトランジット法観測で2015年に発見された惑星で、2019年に行ったハッブル宇宙望遠鏡の観測で、この惑星の大気中に水蒸気が含まれている事が判明。そして2023年、最新鋭のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でも観測が行われ、この観測で更なる大きな発見がもたらされる事になります。
太陽系外惑星にで生命活動の痕跡を示すバイオマーカーを発見
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が更なる観測の眼を向けた惑星「K2-18b」。この観測で、K2-18bの大気中に生命の兆候である可能性のある物質(バイオマーカー)が含まれている事を発見しています。その物質とは、地球上では主に植物プランクトンに由来する副生成物の「硫化ジメチル(DMS)」の事で、このバイオマーカーの存在が確認された事で、惑星「K2-18b」に生命存在の可能性が格段に高まったと大きな期待が寄せられる事になったのです。
また、ハッブル宇宙望遠鏡の観測によって、惑星「K2-18b」の大気中に水蒸気が含まれている事が判明した事から、惑星表面には巨大な液体の水(海)が存在する可能性も高まっており、また大気中に水蒸気が含まれている事から同時に豊富な水素や酸素も備えている環境を持つ事が推測され、生命が存在する可能性があるハイセアン惑星(hydrogen(水素)とocean(海)による造語)であるのではないか?との期待も大きくなっています。
地球とは大きく環境が異なるハイセアン惑星か?
大気中に水蒸気の存在が確認された事から、生命存在の期待が高まって来た惑星「K2-18b」ですが、他にもメタンや二酸化炭素などの炭素を含む分子の存在も明らかになっています。このような大気の環境が判明した事で、気になるのは惑星「K2-18b」の地表はどのようになっているのか?ですが、現時点では地表までの観測は出来ておらず、確認された大気中の成分で地表の状況を推測する事しか出来ないワケですが、研究者たちの推測によると、惑星表面には全球を覆う程の巨大な海が広がっている可能性があるとされ、その海に生命が存在しているのではないか?と考えているようです。
しかし、惑星「K2-18b」は大きさが地球の約2.7倍で質量は約8.6倍というスーパーアースです。そのため、この惑星が地球ような岩石惑星ではなくガス惑星なのかも知れませんし、仮に岩石惑星であったとしても、その質量の大きさから、地球の数倍の重力を持っている可能性もあります。
また、主星が太陽よりかなり小さい赤色矮星でもあり、公転周期が33日と極端に短い事から潮汐ロックの状態にある事も十分に考えられます。
つまり、惑星「K2-18b」の大気中に水蒸気が確認された事で、液体の水や生命の可能性が出て来たとは言っても、同時に地球とは全く異なるその環境から、地表は高温で高圧の状態になっており、とても生命など住めない環境である事も考えられます。
「Image Credit:University of Montreal」