これまでの太陽系外惑星探査で、地球外生命体が存在する可能性がある太陽系外惑星は全部で55発見されており(2018年6月現在)、そんな生命生存の可能性がある惑星をオンラインデータベース化した「Habitable Exoplanets Catalog(居住可能な系外惑星のカタログ)」が話題になっています。
このカタログに載っている惑星とは、いったいどんな天体なのでしょうか?
生命の存在に欠かせない系外惑星の条件とは?
まず、居住可能な系外惑星のカタログの紹介の前に、研究者たちが掲げる生命が存在するのに欠かせない惑星の条件とは何なのでしょうか?「Image Credit:iStock」
その条件については、いくつかありますので挙げてみると。
- 近くに危険な天体が無い事
少なくとも数十光年以内に超新星爆発を起こす活発な恒星、中性子星やブラックホール等の生命生存に悪影響が及ぶような天体が存在しない事。 - 主星が長寿命で穏やかな活動をしている事
生命が誕生し進化するには、とてつもなく長い時間がかかるため主星である恒星が長寿命で活動し続ける事は必須条件になるでしょう。 - ハビタブルゾーンに位置する惑星である事
主星と惑星の距離が、水が液体で存在出来る温暖な領域ハビタブルゾーンの範囲内に位置する事。 - 惑星の大きさが小さ過ぎず大き過ぎない事
生命を宿す惑星の条件として大きさ・質量も重要だと言います。大き過ぎると大気量も増え過ぎ重力も強くなるため生命生存には難しく、小さ過ぎると大気を留めておくことが難しくなり、これも生命生存には不向きと考えられるからです。 - 惑星が真円に近い公転軌道である事
惑星が楕円軌道を取る公転だと自然環境に大きな差が出て来ることが考えられます。
つまり、地球のように真円に近い公転軌道なら主星(太陽)と惑星にほとんど温度差が発生しないため、大気や海の循環にも大きな変動がなく自然環境も一定に保たれるからです。 - 惑星の自転に潮汐ロックがかかっていない事
自転と公転が同期する潮汐ロック状態になった場合、惑星は常に同じ面を主星に向けている事になります。
このような状態だと主星に向いている面は極端に熱せられ、もう片面は極端な寒冷化となり生命が生存出来る環境では無くなってしまう可能性があります。
地球外生命がいる可能性がある天体はいくつある?
近年、宇宙の観測技術は飛躍的に進歩しており、そんな観測技術を駆使して導き出された、生命がいるかも知れないと期待される天体は太陽系内で3つ存在します。その3つの天体は惑星ではなくいずれも衛星で、木星のエウロパ、土星のエンケラドゥスとタイタンです。
「Image Credit:Wikipedia」
これらの天体には近い将来探査機が調査に向かい、生命の有無を確かめる事になりますが、人類は太陽系の外に、生命の存在が期待できる系外惑星を全部で55個(2018年7月現在)発見しています。
発見された系外惑星は、前述した生命が存在するのに欠かせない惑星の条件をいくつか満たしており、生命が存在できる潜在的可能性がある”とされています。
しかし、この55個の系外惑星は地球から遠く離れているため、直接探査機を送り調査することはできません。
そこでプエルトリコ大学アレシボ校の惑星宇宙生物学者アベル・メンデス博士らは、今後、系外惑星を地球から観測するために優先順位を付けたオンラインデータベース、「Habitable Exoplanets Catalog(居住可能な系外惑星のカタログ)」を作成。
この居住可能な系外惑星のカタログは、生命の存在を秘めた系外惑星を可能性が高い順にランキング化しており、今後も発見されるであろう惑星も順次カタログに追加して行くと言います。
居住可能な系外惑星のカタログの見方を解説
ご紹介する「居住可能な系外惑星のカタログ」は英語表記ですので、少しわかりにくか?と思いますので簡単に解説します。●サイト⇒【Habitable Exoplanets Catalog(居住可能な系外惑星のカタログ)】
「Image Credit:Planetary Habitability Laboratory」
まずこのサイトを閲覧して目に入って来るのが、Current Number of Potentially Habitable Exoplanets(潜在的に居住可能な系外惑星の現在の数)。
「Image Credit:Planetary Habitability Laboratory」
これは惑星のサイズ毎に別けた合計数を表しており、
- Subterran(Mars-size):大きさや質量が地球より小さい”火星サイズ”の惑星の数
- Terran(Earth-size):大きさや質量が地球に近い”地球サイズ”の惑星の数
- Superterran(Super-Earth/Mini-Neptunes):大きさや質量が地球以上の”スーパーアース級”の惑星の数
次に表記されているランキング形式の表。
Conservative Sample of Potentially Habitable Exoplanets(潜在的に居住可能な系外惑星)。
「Image Credit:Planetary Habitability Laboratory」
- Name:系外惑星名
- Type:主星(太陽)のタイプ(例:M-Warm Terran→スペクトル型がM型の赤色矮星)
- Mass(Me):惑星の質量
- Radius(Re):惑星の半径
- Flux(Fe):放射束
- Teq(K):惑星の表面温度
- Period(days):公転周期
- ESI:地球類似性指標(どれだけ地球に類似しているかの割合)
※ 系外惑星名の(N)表記は新たに追加された惑星を意味します。
この潜在的に居住可能な系外惑星のランキングで上位に記載されている系外惑星。
3位の「ケプラー1652b」は地球からはくちょう座方向に約822光年離れた場所にある惑星。
2位の「トラピスト1e」は地球からみずがめ座方向に約39光年離れた場所にある惑星で、地球より遥かに多い(約250倍)の水に覆われた惑星である可能性があるとの事。
そして現在1位となっているのが、地球に最も近い約4.2光年にある「プロキシマケンタウリb」です。
地球から近いだけあって今後の調査に期待がかかるのですが、現時点での予想では生命生存の期待は薄いのではないか?とも言われています。
さらに、Optimistic Sample of Potentially Habitable Exoplanets(楽観的に見た潜在的に居住可能な外惑星)。
ここに表記されている系外惑星たちは”楽観的”~つまり、生命存在の可能性は低いが、それでも可能性がゼロとは言い切れない。という意味でカタログ化されているようです。
どうやって遠く離れた系外惑星の生命探査を行うのか?
今後、更に系外惑星探査の精度は加速します。それは、地上からの観測はもとより、高性能の新型宇宙望遠鏡の投入。
例えば、2018年4月にNASAが打ち上げた宇宙望遠鏡「TESS」。
「Image Credit:NASA」
「TESS」は地球衛星軌道上に投入され、300光年以内の恒星に標準を合わせ、系外惑星を探査する衛星。
この「TESS」により、更に2万個にも及ぶ系外惑星が発見される予測だとか。
そしてもっとも期待値が高いのが、今後打ち上げが予定されている「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、大きさがテニスコート一面ほどもある巨大な赤外線観測用宇宙望遠鏡で、「TESS」のように地球衛星軌道上に投入されるのではなく地球を追尾する軌道(ラグランジュL2)の約150万キロの地点に投入されます。
これにより太陽光や地球からの電波や光に邪魔をされることなく、深宇宙を見渡すことが出来、より精度の高い宇宙観測が出来るとの事です。
これらの新型の宇宙望遠鏡などにより、カタログに載った系外惑星の詳細な分析も可能となり、もしかしたら、その星にどんな生物が住んでいるのかもわかるかも知れません。
地球外生命体は本当にいるのか?
地球に似た系外惑星の探査が進むに連れて、疑問に思って来るのが、「地球外生命体は本当にいるのか?」という事と、誰もが一度はそんな事を思った事があるのではないでしょうか?その疑問に対し、多くの科学者たちは地球外生命体の存在に確信を持っており、宇宙の中で生命がいるのは地球だけではないと考えています。
その根拠は、宇宙があまりにも広大過ぎるという事にあり、私たちの太陽系が属している天の川銀河だけでも2,000億個以上の星があるとされており、その約半数の1,000億個に何らかの生物が生息している可能性があると示唆しています。
しかし、人類は未だそれらの生物の存在の確認には至っていません。
その理由もまた宇宙の広大さ故の事。
地球に最も近い、潜在的に生命存在は高いとされる系外惑星のプロキシマケンタウリbにでさえ、一秒間で地球を7周半(秒速30万キロ)周ることが出来る光の速でも4年以上もかかるワケですから、もしプロキシマケンタウリbに生命が居たとしても、それとの接触はおろか確認さえ不可能に近いのではないでしょうか?!