アメリカ航空宇宙局(NASA)が事前に予告していた重大発表の内容は、木星の衛星・エウロパに関する事でした。
少しでも天文に詳しい人なら「エウロパ」と聞いてピンと来るかも知れません。エウロパには以前から生命がいる可能性がある事を知っている事でしょう。

そして今回の発表で、ついにNASAは地球外生命体を発見したのか?と期待で心が躍ったのですが、ちょっと期待外れな内容の重大発表でした。
それでも、今回NASAが行った発表は地球外生命体の存在を可能性を、さらに高めるものだったことは間違いありません。

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余談ですが、NASAの重大発表を伝えたニュースキャスターがこんな事を言っていたことに少し驚きました。
「地表から水蒸気が噴出しているのは、木星じゃなかったのですね?」
正しい情報を伝える立場にあるニュースキャスターが、公共の電波を使って平気でこんな発言をするのですから、やはり多くの人は木星に陸地(地表)があると思っているのでしょうか?
もちろんこれは大きな間違いで、木星は巨大なガス惑星ですので陸地など存在するワケがないのですが・・・
と余談はこの辺にして、今回の主役はガス惑星・木星の80個ある衛星の中の1つエウロパについてのお話です。
2016年9月末に、NASAから発表された重大ニュースは世界中に配信され、日本でも大きな話題となりました。
その重大ニュースとは、木星のガリレオ衛星の1つ・エウロパの地表から、水蒸気と思われる物質が噴出されている可能性がある事がわかった事についてでした。
これはつまり、エウロパに水が存在するなら、そこに生命がいるかも知れないという期待の裏付けが取れたことになるからです。

「Copyright ©:NASA Goddard All rights reserved.」

エウロパとはどんな天体なのか?

エウロパは、かの有名なガリレオ・ガリレイによって発見された木星のガリレオ衛星の1つで、地球の衛星・月より一回り小さな天体です。

「Image Credit:NASA/JPL」
エウロパの地表のほとんどは厚い氷で覆われているのですが、科学者たちから注目されているのは地表ではなく厚い氷の下に存在するモノです。
エウロパの氷の厚さは最低でも1,000m以上だと考えられており、地表には木星の強力な潮汐力により氷の亀裂が多数存在し、この潮汐力の影響で厚い氷の下には未知の海が広がっていると考えられて来ました。

「Image Credit:エウロパ表面に見られる亀裂(NASA/JPL)」
そして、今回のNASAの発表は「氷の下に海がある」という仮説を裏付けるモノとなったのです。
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エウロパの地下に海があるという裏付けとは?

NASAが行ったエウロパに関する重大発表。それは、エウロパの地下から噴き出す間欠泉(水蒸気)らしきモノが観測され、その高さは上空200キロにも及ぶ大きな現象だそうです。
つまり、間欠泉が吹き出すということは、地下に氷の溶けた水が存在する証拠ではないかと考えられるのですが、現時点ではそれが確実に水蒸気の間欠泉なのか?は確信はないものの、かなりの確率で水蒸気が噴き出しているのでは?!と考えているそうです。

「Image Credit:NASA/ESA/W. Sparks (STScI)/USGS Astrogeology Science Center」

本当に水蒸気の間欠泉なのか?

今回、エウロパで間欠泉らしき現象が観測されたのは、地球の衛星軌道上に設置されたハッブル宇宙望遠鏡によるモノです。
そのため、エウロパで確認されたのが本当に水蒸気による間欠泉なのか?確定するにはやはりエウロパまで探査機を飛ばす必要があります。

これまで、エウロパの地下に海が存在するのか?調べる方法は、1,000m以上はあるであろう厚い氷を掘削して探査をするしかない。と考えられてきていましたが、今回の発見により、少なくとも氷を掘削する必要はなく、間欠泉らしきモノが噴出している上空を探査機に通過させることで、噴出された物質を採取し分析出来ればエウロパの内部構造を調べることが出来ます。

なお、NASAはこのエウロパ探査計画を始めており、2020年代に「エウロパ・クリッパー」ミッションを実施する予定になっています。

「Image Credit:エウロパ・クリッパーの想像図(NASA/JPL-Caltech)」

エウロパの地下に海があったとしたら?

NASAが期待しているのは、エウロパの地下に海にが実在した場合、そこに生命が存在するかも知れないという事です。
エウロパに生命体がいる?と考えると、もしかしたら、私たち人類のような知的生命体を想像する人がいるかも知れません。
残念ながらNASAはそこまでは期待はしていないでしょうし、もし、エウロパに生命がいたとしたら、おそらく原始的な生命体ではないか?と考えられます。

それは、バクテリアのような微生物かも知れないですし、もっと期待するなら地球の深海に住むような生物かも知れません。

「Image Credit:NATIONAL GEOGRAPHIC
いずれにせよ、エウロパに知的生命体がいるとは考えるのは些か無理があるでしょう。

生命存在が期待されるのはエウロパだけではない

木星の衛星エウロパ以外にも、地表から噴き出す間欠泉が確認された星があります。
それが土星の衛星・エンケラドゥスです。

「Image Credit:土星探査機カッシーニが撮影したエンケラドゥスから噴き出る間欠泉(NASA/JPL/Space Science Institute)」
エンケラドゥスはエウロパよりも遥かにに小さく、直径はわずか500キロほどしかありませんが、エンケラドゥスもまた、エウロパと同じく地表を氷に覆われた天体です。
このエンケラドゥスでも、土星探査機・カッシーニが間欠泉を観測しています。
さらにカッシーニは、エンケラドゥスの間欠泉を何度も通過しており、その観測によりエンケラドゥスの地下全体が海に覆われているのではないか?との推測が出ているのです。

ただ、エンケラドゥスに海があると判明したとしても、そこに生命がいるか?どうかまでは調べることが出来ません。
そんなときに、期待を込めて発表されたエウロパの間欠泉観測であり、目標天体に探査機が送られサンプルを採取し詳細な分析が出来れば、生命の痕跡を発見出来るかも知れません。

このNASAがもたらしたエウロパに関する一連の発表は、本当に近い将来地球外生命体の発見につながるものかも知れません。
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