宇宙…いや、少なくとも銀河(天の川銀河)にはどれほどの太陽に似た恒星があり、そこには地球に似た星がどれほど存在するのでしょうか?
そんな疑問と謎を解明するべく、欧州宇宙機関(ESA)が新たな宇宙望遠鏡を打ち上げようとしています。
その宇宙望遠鏡の名前は「PLATO(プラトー)」。PLATOは、これまで行われて来た太陽系外惑星探査とは少し異なるミッションに挑戦する事になっており、PLATOミッションが成果を挙げれば、もしかしたら私たち人類が居住可能な”第二の地球”が見つかるかも知れないと期待を寄せられているのです。
太陽系外惑星探査の現状
初めて太陽系外惑星が発見された1992年から30年以上を経過した現在。今やその発見数は軽く5,000個を超え、勢いは止まらずまだまだ増え続けています。「Image Credit:地球型の系外惑星ケプラー186fの想像図(Wikipediaより)」
◆ 参考動画:NASAが公開した1992年から2022年3月までに確認された5005個全ての太陽系外惑星(天球上における位置関係を時系列順に表示)
これまで発見された系外惑星の大半は木星のような大型の惑星ですが、少なからず小型の地球型惑星も見つかっており、うちいくつかはハビタブルゾーン(惑星の表面に液体の水が存在し得る範囲)を公転していると見られる惑星も検出されています。
しかし、発見された系外惑星のほとんどは、地球の主星である太陽(G型主系列星)とは異なるスペクトル型を持つ赤色矮星(M型主系列星)を公転する惑星であり、地球型惑星とは言えその環境の属性は地球似とは言えない天体ばかりです。
そのため、仮に将来私たち人類が”第二の地球”候補として、赤色矮星を周る惑星を移住先として考えるのは難しく、また私たちの太陽系に似た恒星系が宇宙(銀河系)にどれほど存在するのか?を理解するには、赤色矮星の惑星探査だけではなく、太陽に近いスペクトル型を持つ恒星系を詳しく調べる必要が出て来ます。
天の川銀河の知見拡大に期待のPLATOミッション
私たちの太陽系が属する銀河(天の川銀河)には少なくとも2,000億個以上の恒星が存在すると考えられており、その中の数十億個は太陽に似たスペクトル型を持つ恒星ではないか?と推測されています。つまり銀河の中でも太陽のようなG型の恒星はごく一般的であり、またG型に近いスペクトル型を持つK型主系列星も合わせるとその数は百億を超えると考えられています。
そんなG型、K型恒星をメインに観測するため、欧州宇宙機関(ESA)によって計画が進められているのが、2026年打ち上げのPLATO(PLAnetary Transits and Oscillations of stars)です。
「Image Credit:Getty Images」
PLATOは、地球から見て太陽の反対側の太陽、地球、月の天体同士の重力が均衡しているポイント・ラグランジュ点L2(地球から150万キロの距離)を巡る軌道上で観測を行う計画で、このL2ポイントには2022年から運用を始めている次世代型超高性能宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」も投入され観測を行っています。
「Image Credit:Wikipedia」
PLATOミッションでは、装備されている34台の小さな望遠鏡で全天の半分ほどの範囲(約100万個の星)をカバーする事が出来、今回の計画では比較的近傍にある恒星を対象に観測を行い、順調に行けば2020年代中に数十万個にも及ぶ太陽に似た恒星を観測する計画になっているそうです。
「Image Credit:Esa/Atg Medialab」
太陽に似た恒星では地球型惑星は見つけにくい
太陽に似た恒星で惑星を見つけるため開発・投入されるPLATO宇宙望遠鏡ですが、この系外惑星検出にはトランジット法と呼ばれる観測方法が使われます。◆ 参考動画:トランジット法の解説動画
トランジット法については、上↑↑の参考動画をご覧いただくと良くわかるかと思いますが、この方法は、主にこれまで赤色矮星を公転する惑星を検出する事に使われて来ました。
その理由は、小型で温度の低い赤色矮星(主星)を公転する惑星は、かなり主星に近い距離で公転するため、惑星が主星の前を通過する時の減光現象が大きく、また公転周期も数日~数週間と短いため検出がしやすかった事にあります。
もっと具体的に説明すると、例えば地球から約40光年先にある赤色矮星トラピスト1に見つかった地球型惑星トラピスト1eと主星のトラピスト1の距離は約420万キロで公転周期は約6日。それに対し、太陽と地球の距離は約1億5,000万キロで公転周期は約365日です。
「Image Credit:赤色矮星TRAPPIST-1と太陽系のハビタブルゾーン比較図(Wikipediaより)」
つまり、主星と惑星の距離が近く、頻繁に主星の前を横切る赤色矮星の方が圧倒的に観測がしやすく、太陽系のように主星と惑星の距離が離れ、公転周期も長い場合は観測が難しいという事になってしまうワケです。
そのような観測の難しさもカバーできるよう開発された「宇宙望遠鏡PLATO」の活躍は大いに期待出来、またそれだけではなく、惑星を持つ恒星の星の震動を詳しく測定し、より詳細なデータ(惑星の質量やサイズ、年齢等)も分析出来るとの事ですので、もしかしたらPLATOの観測によって、本当に”第二の地球”候補が見つかるかも知れませんね。