私たち人類はこれまでいくつもの天体に向け探査機を送り探査観測して来ました。しかし、太陽は人類が近づいて探査する事を拒み続け、身近な存在であるハズなのに未だに謎がが多い天体でもあります。
そんな太陽に接近して探査を試みているNASAの探査機の名は「パーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)」。
最新技術搭載のパーカー・ソーラー・プローブは、100万度にも達するとされる太陽コロナの中に飛び込み探査観測を行っており、2024年、いよいよ太陽表面から600万キロまで接近します。

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開発費15億ドルの最新技術搭載の太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブ

2018年に打ち上げられた太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)については、これまで何度かご紹介して来ましたが、太陽探査のクライマックスである太陽最接近がもう間もなく実行されようとしています。
パーカー・ソーラー・プローブは、未だ謎に包まれている太陽風(太陽から高速で噴き出る粒子)や、太陽の大気に該当する超高温のガス(太陽コロナ)等の正体を解明するために、NASAが約15億ドルの開発費をかけて建造し2018年8月12日に打ち上げた超高性能で最新鋭の太陽探査機です。

「Image Credit:NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben」
打ち上げに成功したパーカー・ソーラー・プローブは、金星の重力を利用したフライバイを繰り返す事で速度を上げ太陽を周回する軌道に乗り、さらに太陽フライバイを重ね、少しずつ太陽に接近し約7年間の予定で太陽探査観測を行っています。

「Image Credit:NASA/SDO. GRAPHIC: Daisy Chung, NGM STAFF SOURCE: Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory」

パーカー・ソーラー・プローブの太陽観測がもたらした科学的成果

予定では2025年まで太陽に接近しながら観測を行うパーカー・ソーラー・プローブですが、これまでの観測で多くの謎解明に挑んでおり、その中からいくつかご紹介ご紹介します。
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太陽の爆発現象の一部始終を撮影に成功!

太陽表面では激しい活動が常に起こっており、パーカー・ソーラー・プローブは2022年9月に大規模なコロナ質量放出(CME)の中に飛び込んで、その一部始終を撮影する事に成功しています。
CMEとは、太陽の上層大気であるコロナに蓄えられたプラズマが、太陽の磁場と共に一気に放出される現象の事で、このCMEが地球に到達した場合、規模によっては地球のインフラに障害を発生させる程のエネルギーを持っており、大規模なCMEだったにも関わらず、パーカー・ソーラー・プローブは故障する事もなくその様子をしっかりと捉えています。
その時の様子を撮影したのが以下の動画↓↓で、激しい爆発は動画開始後14秒あたりから始まっています。

「Copyright ©:Johns Hopkins Applied Physics Laboratory All rights reserved.」

スイッチバックする太陽風を観測!

太陽からは電離した高温で高速の太陽風(プラズマ粒子)が噴き出していますが、太陽の強い磁場の影響を受け、太陽風の流れが歪む現象(スイッチバック)が起きている証拠の観測に成功しています。

「Image Credit:スイッチバックのイメージ動画(NASA’s Goddard Space Flight Center/Conceptual Image Lab/Adriana Manrique Gutierrez)」

螺旋状に噴き出す太陽風を観測!

太陽から高速で噴き出して来る太陽風ですが、太陽が自転している事により噴き出した当初の太陽風は、しばらくの間、太陽の周りを回転し螺旋状を描きながら宇宙空間へと放出されて行きます。
この現象をパーカー・ソーラー・プローブは検出に成功し、太陽風は太陽本体に近いほど回転速度が速い事も明らかにしています。

パーカー・ソーラー・プローブが達成した人類初の大記録

太陽に近づき観測を行っているパーカー・ソーラー・プローブ。実はこの探査機、太陽に接近するため2つの史上初の記録を打ち立てています。
その1つが、地球の30倍以上もの引力をもつ太陽に落下しないようにするため高速で飛行する必要があります。その速度を上げる方法は金星の重力を利用したフライバイを繰り返す事でした。

「Image Credit:NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben」
この金星フライバイにより、2023年に時速63万5,266キロというとんでもない速度を達成。これを秒速に直すと176.74キロで、東京~大阪間を2.8秒で移動できる速度だそうですが、これが最高速度ではなく、最終的には時速69万キロまで加速する予定との事です。
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2つ目はパーカー・ソーラー・プローブが太陽に接近する距離。
これはこれから達成される大記録になるのですが、パーカー・ソーラー・プローブが最終的に太陽に接近する距離は616万キロ。この距離を聞いて「けっこう遠い!?」と思われる方もいるかも知れません。
でも、これは対太陽では異常とも言える距離でまさに史上初の試み。場合によっては探査機が故障して観測を断念しなければならない事態になるかも知れません。

「Image Credit:Wikipedia」

太陽に異常接近しても何故探査機は溶けないのか?

太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブは、異常とも思えるほど太陽に接近し観測を行っており、100万度はあると考えられている太陽コロナの中にも突入します。

「Image Credit:Wikipedia」
となると疑問に思うのが「そんな超高温の中で探査機は溶けてしまわないのか?」ではないでしょうか?
確かに現実的に考えると100万度という超高温に耐えられる探査機などを造れるほど今の人類の技術では到底無理です。ですが、それでも最新技術を駆使すれば、少なくとも1,000度以上耐えられる人工物を造る事は可能です。
そんな最新技術を駆使し造られたパーカー・ソーラー・プローブの構造は以下のとおりです。

「Image Credit:NASA/SDO. GRAPHIC: Daisy Chung, NGM STAFF SOURCE: Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory」
パーカー・ソーラー・プローブの最大の特徴は探査機前部に取り付けられた板状の耐熱シールドで、カーボン発泡体で出来た幅2.4メートル、厚さ11センチ、さらにはホワイトセラミックでコーティングして熱反射対策を行い、この耐熱シールドを常に太陽側に向ける事で太陽熱に耐えられるよう設計されており、探査機本体は高性能冷却システムが備わっており、それでも耐熱限界は3,400度だそうで、とても100万度という温度に耐えられるほどではありません。

では何故、超高温の太陽に接近しても探査機は耐えられるのでしょうか?
その理由は、探査機が飛行している場所が何もない真空である事と、太陽コロナの中での大気密度の低さにあります。
私たちが感じる温度は運動エネルギーの伝達で生じるモノで、これは温度を持つ粒子の密度が大きく関係する事で温度を感じる事が出来ています。この事を具体的でわかりやすくご説明すると。
例えば、100℃の熱湯の中に指をツッコむと火傷しますよね?!しかし、同じ100℃でもサウナの中だったらどう感じるでしょうか?サウナの中なら100℃でも火傷どころか?むしろ気持ち良いと感じると思います。

「Image Credit:iStock & いらすとや」
この現象は、水分子がギッシリと詰まった熱湯だと、密度の高い水分子同士が衝突する事で熱が伝わりやすくなり、一方、100℃のサウナだと密度の低い空気の中では、分子同士の衝突が少なくなり熱が伝わりにくくなるからです。

これと同じような原理で、太陽コロナの中は密度がかなり小さいため熱も伝わりにくいという事になるのですが、それでもコロナの中は相当な高熱になるため、探査機が耐えられる設計温度を超えてしまう可能性はあるか?と思います。だっていくら密度が低いからといっても、これまで誰も(探査機)その中に入った事はないのですから。
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