いよいよ始動したアルテミス計画。計画が順調に行けば、その先に控えているのは火星有人探査だと言います。
すなわち、人類は近い将来火星に宇宙飛行士を送り、有人探査を目指していると明確に宣言しているらしいのですが、初期のアルテミス計画では月面有人着陸がミッションに組み込まれており、そもそも人が月に行くだけでも至難の業なのに、そこからケタ違いに遠い火星へ行くというのは、個人的にはかなり無謀なのではないか?と思っていますが、もし本当に火星に人が行くとしたら、どれほどの困難が待ち受けているのか?そして火星に行った場合、安全に地球に帰還出来るのでしょうか?

Sponsored Link

アルテミス計画の先に見据える火星有人探査計画

アメリカ航空宇宙局(NASA)が中心となってミッションが始動している有人月探査計画「アルテミス計画」ですが、多くの人は人類が再び月を目指しているとして、今後のミッション遂行を見守っていると思いますが、この計画が究極の目標として掲げているのは有人火星探査です。

「Image Credit:アルテミス計画ロゴ(NASAより)」
上画像↑↑はアルテミス計画の公式ロゴですが、ご覧のように月の背景に火星が描かれています。これが最終的に火星有人探査に結びつく事が示唆されている証拠だと思います。
ではいつ、火星有人探査は実行されるのでしょうか?
それはアルテミス計画で予定されている有人月面着陸、月面基地建設、そして月周回軌道上に建設される月軌道プラットフォームゲートウェイが全て上手くいってからとなりますが、早くて2030年代前半、遅くても2040年代までには火星有人探査が実行に移されるとされています。
Sponsored Link

火星に行った宇宙飛行士が降りかかる過酷な運命とは?

おそらくは、10~20年以内には実行される可能性が高い火星有人探査。
とは言っても、現時点(2024年)は具体的な計画の内容等は公表されていませんが、実際に人が火星に赴く事となった場合、それは月に人が行くのとはケタ違いに難しく危険も多い事が予想されます。
では、火星有人探査はどれほど難しく危険なのでしょうか?

地球と火星の往復は長旅になる

地球と火星は2年2カ月毎に接近します。つまり宇宙船の燃料消費や到着するまでの時間等を考慮すると、地球と火星が接近するタイミングで宇宙船を火星に向けて飛ばすしかありません。

「Image Credit:Getty Images」
地球と火星が接近したといってもその距離は6,000万キロ以上はあり、火星までは最低でも片道半年、地球帰還の往復となればさらに半年はかかってしまいます。
しかしそれだけではありません。半年かけて火星に到着しても、その頃は既に火星と地球の距離は離れつつあり、宇宙飛行士たちは、次に火星と地球が接近するタイミングまでの約1年間を火星に滞在し待たなくてはなりません。
すなわち、地球と火星の往復に1年、火星での滞在期間が1年。合計で約2年間、宇宙飛行士たちは地球には帰れないという事になってしまうのです。

長期間の宇宙滞在で宇宙飛行士たちにかかる大きな負担

火星有人探査のために2年間は地球に帰れない宇宙飛行士たち。そのため、彼らに求められるのは強靭な肉体と精神力です。

「Image Credit:Getty Images」
火星までの往復と滞在の2年間、彼らは宇宙船の中や宇宙服を着ているとは言え、太陽風等、強烈で有害な放射線に晒される事になってしまいます。もちろんその対策をした上で火星に行くとは思いますが、それでも被爆の危険は伴いますし、2年もの間、常に無重力や火星の低重力(地球の約3分の1)で過ごすため、筋力はもとより骨や内臓等に深刻なダメージを負ってしまう可能性も捨て切れないでしょう。
Sponsored Link

地球と隔離される期間がある

地球と火星は同じ太陽を公転する惑星です。つまり、互いの公転の関係で接近する時もあれば遠く離れる時もあり、地球と火星が最も離れる時は約4億キロにもなり、距離が離れれば離れるほど地球との交信には時間がかかってしまいます。

「Image Credit:Getty Images」
また、火星滞在中に地球が太陽の後側に隠れてしまった場合は、一時的に地球との交信が出来なくなり、宇宙飛行士たちは完全に隔離されてしまうという状態になり、その間、彼らには危険を伴うかも知れない自立した行動が求められる事が要求され、精神的にも大きな負担がかかる事が予想されます。

宇宙船の火星着陸は技術的にかなり難しい

火星には大気がありますが大気圧は地球の100分の1程しかありません。そのため、宇宙飛行士を乗せた宇宙船(着陸船)の火星地表への着陸は非常に困難を要します。

「Image Credit:Getty Images」
これまで無人の火星探査機が地表に着陸する際、パラシュートと逆噴射の併用で着陸に成功して来ました。しかし、無人機より段違いに大きく重い有人の着陸船では、このような着陸方法は採用出来ないのではないかと思われます。
Sponsored Link

何故なら、大気圧の低い火星の大気中では、重量のある着陸船のパラシュートではそれほど効果的な減速は出来ないでしょうし、何より逆噴射による減速方法だと大量の燃料が必要になってしまい、地球の約3分の1の火星の重力を考慮してもかなり困難な事が予想されます。

「Image Credit:月面から離陸するアポロ月着陸船(NASA/AFPより)」
また、地球に帰還する際の火星離脱方法もかなり困難であり、大気がほとんど無く重力も地球の6分の1しかない月面とでは技術的にも段違いに難しく、どのようにして火星の重力を振り切って離脱するか、については大きな壁が立ちはだかっているのではないでしょうか。

本当に火星有人探査は実現出来るのか?

NASAは「2040年までに火星に宇宙飛行士を降り立たせるのは大胆な目標」と発言しています。
この発言から推測すると前述もしましたが、火星有人探査が2030年代前半には実現という事はかなり困難である事を示していると思われ、同時に現実的に考えると2030年代までに火星に着陸するのではなく、火星を周回する有人ミッションは可能であるという発言もしています。
確かに技術的に考えると有人による火星周回ミッション遂行は可能かも知れません。でもそれは、閉鎖空間での長期宇宙ミッションに耐えられる宇宙飛行士がいるという前提での事であり、現時点では累計で宇宙に長期滞在した宇宙飛行士はいますが、1回のミッションで2年間以上、宇宙で過ごした人間は誰もいません。
Sponsored Link