民間宇宙企業「スペースX社」の最高経営責任者(CEO)で有名なイーロン・マスク氏が、「2050年までに100万人の火星移住を目指す。」と語っています。
確かにスペースX社は、民間宇宙企業の中ではあのNASAをも凌ぐほど人類の宇宙開発において破竹の勢いをみせており、このマスク氏の発言に現実味があると思っている人も少なからずいるかも知れません。

しかし一方では、「いくら何でも2050年までに火星に100万人を移住させるなんて無理だろう。」と考えている人が多く私もその一人です。
ですが、これにはマスク氏の持つ人類への危機感と宇宙開発に向けた思惑もあるといい、これが彼に無謀?とも言える発言をさせていると言います。

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スペースXの失敗を恐れない宇宙開発に取り組む姿勢

イーロン・マスク氏のスペースX社は、民間の宇宙企業の中では最も有名で最先端の技術を持っている事を知っている人は多いかと思います。
そんな宇宙開発の最先端をいくスペースXの特徴は、何と言ってもその開発におけるスピード感ではないでしょうか?

「Image Credit:Wikipedia」
莫大な費用がかかる宇宙開発。にも関わらず失敗をしてもなお立ち止まらずにドンドン挑戦を続ける姿勢を見て、「資金は大丈夫なの?」と余計な心配をしまうほどです。
◆参考動画:スペースXのドキュメンタリー映画『リターン・トゥ・スペース』


「Copyright ©:Netflix All rights reserved.」
通常、もしロケットの打ち上げに失敗をした場合、安全面や資金面から二度と失敗は出来ないという考えがあり、計画を見直しするのに数年かかってしまう場合がほとんどなのに対し、スペースXの場合、成功するまでやり続けるという姿勢を持っており、失敗しても改善をしたらスグに実行し、どんどん前に進んで行っており、この姿勢が功を奏し、今や「スペースXがなければ宇宙開発は停滞する。」とまで言われるほどの成長をみせています。
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スペースXはどれだけの技術力を持っているのか?

イーロン・マスク氏がスペースX社を創業たのは2002年の事。それからわずか8年(2010年)で、民間企業として初の国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送を実現しており、同時に宇宙事業の商用化にも成功し、その原動力となっているのが、従来の20分の1と言われる圧倒的な宇宙事業のコスト削減にあると言います。

同社は優秀な技術者を多く抱えており、彼らの主導でロケットや宇宙船の開発組立、ソフトウェア開発までのほとんどを自社で行っており、また作業工程も3Dプリンターなど、最新IT技術を駆使している点もコスト削減に大きく寄与しています。

そして有名なのは、ファルコン9に代表されるような打ち上げをした後も逆噴射で地上に戻って来るという、まるでSF映画のような技術が確立された事で、ロケットの再利用化のコスト削減にも成功しています。


「Copyright ©:SpaceX All rights reserved.」
さらには、スターリンクといった衛星コンステレーションも、同社の技術力の高さが良くわかる事業の一つです。

「Image Credit:衛星インターネット通信網「スターリンク」(SpaceXより)」

2050年までに100万人を火星移住させる構想は非現実的!?

宇宙事業の商用化を実現し、様々なビジネスやプロジェクトを成功に導いたスペースX社を率いるイーロン・マスク氏ですが、彼はこれからの宇宙進出において「人類の多惑星種化」を見据えているといい、そんな多惑星種化の大きな目標として「2050年までに100万人を火星に移住させる」といった考えを持っていると言います。

「Image Credit:Wikipedia」
果たして、たった30年で100万人もの人々を火星に移住させるなんて可能なのでしょうか?
それは、普通に考えれば無謀な事ですし何より不可能です。

でも、ここまで宇宙事業の発展に貢献して来たイーロン・マスク氏の火星移住構想が不可能な事なのか?それには、現実的に考えて無理な点がいくつもあるからです。

2050年までに100万人の火星移住が不可能な理由①「火星はまだ未開の地」

2020年代前半の時点で、人類はまだ火星有人飛行を実施出来ていませんし、何よりも火星がどんな惑星なのか?完全にわかっていない事にあります。
現在、複数の探査機が火星の調査を行っていますが、それでもわかっているのは火星のほんの一部だけで、これが30年後であったとしても、人類を安心して移住させるだけのデータが集まるとまでは思えないからです。

「Image Credit:火星探査を行うローバー・パーサヴィアランス(NASA/JPL-Caltechより)」

2050年までに100万人の火星移住が不可能な理由②「まだ有人探査すら出来ていない」

前項の内容とかぶりますが、今後人類が有人で火星探査を行うのは2030年代に入ってからだと言われています。
つまり、2050年は有人火星探査から10数年しか経過していない事になります。なのに、そんな短期間で100万人もの人を火星に移住させるなど、無謀過ぎると言いうより現実的ではない。と言わざるを得ません。
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2050年までに100万人の火星移住が不可能な理由③「火星の環境が厳し過ぎる」

火星は地球に似た星。と言われていますが、それは「太陽系天体の中では火星が地球環境に近い。」と言うだけで、必ずしも火星が人が住める環境だと言う事ではありません。
その理由は単純で、火星には地球のような豊富な大気も存在せず、気圧は地球の100分の1以下と超希薄。
さらには、火星には磁場がほとんどなく、それにより太陽からの有害な宇宙線が地表に容赦無く降り注いでおり、何よりも火星に住む人類にとって問題なのは重力。火星の重力は地球の半分以下であり、長期間この低重力下で滞在し続けると人体に大きな弊害が生まれてしまう事が懸念されます。

「Image Credit:Depositphotos」

2050年までに100万人の火星移住が不可能な理由④「そもそも100万人は火星に行けない」

では、仮に人類を火星に移住される事が現実的になったとしたら、どのタイミングで火星行きの宇宙船を運行させるでしょうか?
それは地球と火星が接近するタイミングでないと、火星行きの宇宙船を運行させる事は出来ません。何故なら、火星に行くには相当な燃料を必要としますし、火星に行くにはもっとも燃料消費が少ない地球との接近時しかありません。


「Copyright ©:国立天文台 All rights reserved.」
上動画でわかるように、地球と火星が接近するタイミングは2年2カ月に一回のみ。すなわち、2年に一度やって来る火星行きのチャンスに、わずか10数年で100万人を送り込む事は非現実的で、もし本当に2050年までに100万人を火星移住させるとなれば、一回の運行で10万人以上が宇宙船に乗り込まないといけないという事になるのです。

イーロン・マスク氏が人類の多惑星種化を目指す理由

普通に考えれば、イーロン・マスク氏が言う「2050年までに100万人を火星に移住させる」は不可能ですが、天才と言われる彼が何故、このような突拍子のない事を言うのか?その理由は、今の地球の現状を患い、将来の地球環境に危惧を抱いているからだとされています。

確かに今の地球環境は、地球温暖化から地球沸騰化へと変貌して来ていると言われ、また人類の総人口も80億人を超えてしまい、マスク氏が言う2050年には世界人口は100億人を超えてしまうと危惧されています。

「Image Credit:国連経済社会局人口部」
こういった地球環境の背景から、マスク氏は今後の地球は滅亡する可能性があると本気で危機感を持っていると言います。
これからの地球がマスク氏の危惧するような事にならない事を願うばかりですが、もしかしたら彼は、旧約聖書に出て来る「ノアの方舟」の救世主ノアになろうと、本気で考えているのかも知れませんね。
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