インターネット回線が普及している現在。とは言っても高速データ通信網が普及しているのは都市部が中心で、田舎の町や集落、山間部、離島地域までの普及はまだまだなのが現状です。

そんな通信インフラ問題を一挙に解消してくれる通信サービスが始まろうとしています。
そのサービスは衛星インターネット「Starlink(スターリンク)」
つまり、衛星通信で地球上の広範囲のエリアをカバーしようとするサービスなのですが、それっていったいどういうサービスなのでしょうか?
そして、肝心なのは私たちにとってどれくらいの需要が見込まれるのか?気になりませんか?

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衛星インターネットサービス「Starlink」の概要

今の時代、私たちにとってインターネット通信は欠かせないモノになっており、生活の中に深く浸透しています。
しかし、インターネットの普及と共に利用するデータ量も膨大化し、通常のデータ通信ではなかなか対応が難しくなり、大容量でなおかつ高速データ通信が必要不可欠な時代にもなって来ており、普及はしつつありますが、それは都市部が中心で人口が少ない地域や離島部等までは行き届かず広範囲をカバー出来てはいません。

「Image Credit:iStock」
そんな広範囲をカーバーするために実用化されているのが人工衛星による通信網で、約3万6000キロメートル上空の静止衛星を使い、広範囲エリアをカバーする通信サービスとして提供されています。
ですが、これはかなりの高高度に人工衛星が設置されているため、衛星とのデータ通信に片方向だけで200ミリ秒の遅延が発生するというデメリットがあり、なかなか一般には普及が行き届かないという現実がありました。

そこで、今、宇宙ビジネスで飛ぶ鳥を落とす勢いをみせているアメリカのベンチャー企業「SpaceX社」が、新ビジネスとして衛星を使った高速データ通信網を構築させつつあります。
それが「Starlink」と呼ばれる衛星インターネットサービスです。

「Image Credit:SpaceX」
「Starlink」は高高度による衛星通信で遅延が発生する事を解決するため、地球低軌道に通信衛星を配置する事で、地上からの距離を65分の1まで短縮し大幅な低遅延と高速伝送を実現出来るようになり、地球全体をカバーできる程の広範囲の高速データ通信を可能にしています。

つまり、この「Starlink」通信網が確立すれば、世界中どこに行ってもストレスフリーで大容量で高速のインターネットサービスが楽しめる事になるのです。

「Starlink」のサービス開始と使い方

「Starlink」は2020年からアメリカ等の一部でサービス提供が始まっており、屋外等を中心にどこでもインターネット通信が利用でき、通常は電波が届かない山間部や離島、海上等でもインターネットに接続できるようになりました。

これにより、紛争等で通信インフラが破壊された地域や自然災害が起こった場所でも通信が出来るようになり、非常時の通信にも一役買って便利に使えるようになっています。
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日本でのサービス提供は?

メディアでも話題になりましたが、2022年10月からKDDI(au)でサービスが開始されau通信網を使えば、これまで通信が難しいとされていた山間部等で100Mbpsの通信速度で使えるようになり、一部を除き日本本土から遠く離れた離島でも高速データ通信が利用できるようになりました。
ちなみに「Starlink」の提供状況はコチラから確認出来ます。

「Starlink」の使い方

日本での「Starlink」サービス概要に100Mbpsの通信速度とありますが、一般的に私たちが使うネットサーフィンや動画閲覧、SNS利用では実測速度30~50Mbpsほどあれば十分に使えますので、この100Mbpsは全く問題ない通信速度になります。

しかし「Starlink」のサービスを利用するには、ただスマホやタブレットを持っていれば良いというワケではなく、申し込みをして必要なキットを購入しないといけません。(申し込み方法とキットについてはコチラ
また利用するにあたり専用のアプリをダウンロードする必要もあるようです。

「Image Credit:starlink.com

気になる料金プランは?

「Starlink」を必要とする利用者は限定的かも知れませんが、やはり知りたいのは料金プランではないでしょうか?
そこで料金プランについて調べたところ、現時点で4つのプランがあるようです。
  • 「レジデンシャル(一般家庭向け)」
  • 「ビジネス」「RV(旅行用)」
  • 「マリタイム(海上用)」
  • 「航空(飛行機用、2023年提供開始)」
このプランの中で最も一般的な「レジデンシャル」の料金プランを取り上げてみると、ネット検索でも表示されますが以下となります。
  • 初期費用:73,000円 (専用アンテナ等込み)
  • 月額料金:12,300円 ※「ポータビリティ」オプションは+2,800円
  • ダウンロード速度(想定):50~200Mbps
  • アップロード速度(想定):10~20Mbps
この料金プランを見る限り、正直言ってお得とは言い難いですが、もし今後において「Starlink」の需要が増えて来れば、おのずと料金も下がって来る事が予想されます。

「Starlink」の問題点

ここまで「Starlink」のサービス内容や料金プランを紹介していながら矛盾しているのですが、私がこの記事を書いていて懸念している事があります。
それが「Starlink」衛星による光害や宇宙デブリの問題です。

「Starlink」では従来の高高度に設置する静止衛星とは違い、低軌道で地球を周回する衛星を正常に機能させるため多数の衛星を打ち上げる必要が出て来ます。


「Copyright ©:SpaceX All rights reserved.」
「Starlink」のサービス提供には、高度550キロメートルに約1,600基、高度1,150キロメートルに約2,800基、さらに高度340kmには約7,500基、合計で約11,900基もの「Starlink」衛星を設置する必要があり、今後においても最大で42,000基設置する計画となっているとの事。

この事により、2つの大きな弊害が出て来る事が懸念されています。

その1つ目が「光害」。
天文学者たちは、常に地上から宇宙を観測していますが、これだけ多くの「Starlink」衛星が地球軌道上にあれば観測の邪魔になり、天体からやって来る光を遮る可能性が示唆されています。

そして2つ目が「宇宙ゴミ」。
人類が宇宙開発を始めて以降、多くの宇宙ゴミが地球軌道上に廃棄され、その数は50万個を超えていると言います。

「Image Credit:ファン!ファン!JAXAより」
このようにただでさえ宇宙ゴミが多い中で、長期的とは言え何万もの「Starlink」衛星を打ち上げるとなるとその数はもっともっと増えて来るでしょう。
もちろん、「Starlink」衛星が大気圏に突入しても燃え尽きる設計がされているでしょうが、それでも他の人工衛星と衝突してしまったり、有人の宇宙船との衝突も無いとは限らないでしょう。

インターネット通信が便利になる一方で、このような問題点も出て来る。これについてはどう対応して行くのか?今のところ明確な回答が無いのが心配なところです。
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